騒動の終幕
「実はあのお守りには、一つの細工が施されてあったのじゃよ」
「細工?」
居間へと通されお茶を出され、わたしは静かにそれを飲む。そして寝ぼけ爺さんも渇いていたのかお茶に口をつけると、湯の身を置き話し始めた。
「そうじゃ、あのお守りは私と婆さまの神力が込められた一点ものじゃ」
「そんなものを頂いたんですね……、わたし」
実はとんでもないものを頂いていた事など露もしらなったあの時の自分を殴ってやりたいと思いながら、わたしは続く寝ぼけ爺さんの言葉に耳を傾けた。
「安全祈願を目的とした物だったのじゃが、まさか”アレ”でここまでお守りが壊れるとは……。
いやはや、大鴉とは末恐ろしい」
やれやれと首を振りながら言う言葉に、わたしは目を見張った。
「覚えておるかのぅ?」
「はい、一応ですが」
「あの時、大鴉の女が”ナニカ”をした。
それにより、安全祈願のこのお守りはお前さんを守る形でこうなったのじゃ」
「…………すみません」
「なぜ謝るのじゃ。
物とはいつか壊れ風化する物、それになにより、お前さんのことを守れたのじゃから、このお守りも本望。
それに、まだこのお守りはお前さんを守ってやれる」
そう言い、寝ぼけ爺さんはホッホホと笑いわたしにお守りを手渡した。
「失われた神力を少し戻しておいた。
失くさぬように、いつも持っていなさい」
寝ぼけ爺さんはそう言いきり再び湯のみを口に近づけお茶を飲んだ。わたしは先ほどより綺麗になったお守りを見て驚くも、直ぐに顔を綻ばして頭を垂れた。
「ありがとうございます。
肌身離さず持っています」
わたしは時計を見ると夕飯に近づいている事に気がつき、寝ぼけ爺さんに一言二言告げてその場を退いた。そんなわたしを見つめながら寝ぼけ爺さんが何かを言っていたが慌てていたわたしには到底聞こえるわけなど無かった。
「じゃが、大鴉も烏天狗には叶わぬのぅ」
そう嬉しそうに言う寝ぼけ爺さんはまたホケホケと笑いお茶を含んだ。
――こうして、不思議な体験は幕を閉じたのである。




