現実世界
目覚めたわたしはまるで狐に化かされたかのような感覚であった。あの鴉男を監禁するために用いた猫用のゲージも綺麗に猫部屋へと片付けられており、ますますあの鴉の出来事は夢であったのだろうかと思わされるほどだった。しかし、夢だと思えなかった決め手は、そのゲージに隠されていた黒い羽を見たからである。夢ではない。現実に起きた事なのだと理解するのに少し時間がかかった。しかし、理解した後に出た言葉はなんとも呆気ないものだった。
「……本当に”物語の世界”だったな」
含みのある呟きに思わず笑みを零しながら、わたしは目の端に移った物に驚愕した。そこにあったのは寝ぼけ爺さんから貰ったお守りであった。それだけならばなんら驚きもしなかったのだが、理由があった。
「どうして……?」
掠れた呟きとともにお守りを手に取れば、あの綺麗な刺繍が施されていたお守りは酷く解れ、まるで数年の年月がたった年代物のお守りへと変っていた。
――家を飛び出し(しかし防犯のために鍵はしっかりとかけた)、わたしは寝ぼけ爺さんの住む神社へと足を走らせた。長い長い神社や寺ならではの長い石段を登りきれば、寝ぼけ爺さんが着物を着て境内を掃除している姿が目に入った。
「寝ぼけ爺さん!!」
わたしの声に気付いた寝ぼけ爺さんはどこか嬉しそうな表情を見せながら、わたしの名を読んだ。
「おいで、そろそろ来ると思っとったよ」
そう言い寝ぼけ爺さんはわたしの手を取り、住まいの方へ歩き始めた。




