閑話Ⅳ
コポコポとなにかが注がれ、なにかに溜まる音が聞こえてくる。見れば薄暗い室内に奇妙な道化師がお茶を入れて立っていた。そして並々と注がれたお茶をグイッと口へと運び、そのままゴクゴクと上品さの欠片も無く飲み始める。飲み終わり、道化師はフゥと息を吐くと思い出したかのように顔を上げた。すると、見た事のある嘘くさい笑みを浮かべ、にこやかに喋り出した。
「おやおや、お客様!
お帰りなさいませ、如何でしたか?」
そう言い、ティーカップとポットを手に持つと再び並々とお茶を注ぎ始める道化師。
「……そうでしたか。
それはそれは、確かに面白い結末ですね。
私も是非、見て見たかった」
並々と注がれた事を確認すれば、道化師はポットを何気も無くルーレット台に置き、ティーカップを覗き込む。すると、そこには落ちて死んでいく”王女の姿”が見え隠れした。道化師はその光景を、不敵な笑みを浮かべたまま見つめ、やがて見飽きたのか再び紅茶をグピグピと飲み始めた。
「さてさて、お客様。
如何でしたか、この世にも珍しい太古の術は?」
飲み終えたティ―カップもルーレット台に置き、相手の様子を見れば、道化師はどこか嬉しそうな顔でうんうんと何度も頷いた。
「そうでしたか、喜んでいただけて何よりです。
……え、御代?
いえ、お気になさらないで下さい。
我々はただ、お客様を”喜ばせ”、”楽しませる”のがモットーの”道化”なのですから」
そう言いきり、道化師はなにかに気付いたのか深々とお辞儀をし、頭を垂れる。
「名残惜しいですが、残念ながら時間がやって参りました。
また、いらしてください。
”我々は”いつまでも待っておりますから」
道化師はそう残すと、まるで空気に溶け込むかのように消えてしまった。そして完全に道化師の姿が消えると、ガタンッと大きな音を立てルーレットが回りだす。
ガラガラと鳴り響くルーレットが止まった先は一つの箱。
描かれるは『退室』さすがの”コレ”には残された者もすぐに理解出来た。
――こうして、劇場は完全なる闇へと消える。




