とある鴉の願い(男視点)
水底にあるもう一つの水の都ヴェネチア。そこは別名、クエーレ王国と呼ばれている。クエーレ王国に住むのは両親を除き、七人の兄弟がいた。その中でも特別変っていたのが、一番下の息子であった。息子は他の兄弟と違い、水の外を何よりも恋しがる子で、兄弟も口ぐちにして「変っている」など「変な奴だ」などと言っていた。そんな一番末の弟の人魚は、ある日とうとう魔女の元へ行き、人間の足が生える薬を手に入れました。魔女との取引はただ一つ「海に帰らぬ事」でした。魔女は続けます。
「海水に一度でも触れると、お前さんの身体はあっという間に消えて無くなってしまう」
魔女は再度「それでも良いのかい?」と問いかけるも、海を捨ててでも地上を夢見る人魚には夢のようにも聞こえた取引条件でした。人魚は躊躇う事なく頷き、受け取った薬を飲み干しました。すると、薬は驚くほどあっという間に聞いてしまい、人魚はそのまま意識を失ってしまいました。
目が覚めれば、そこは月に反射し銀色に光る砂地でした。人魚はすぐさま自分の足を見れば、そこには今まであった鱗は一つも無く、人間と同じように立派な二本の足がそこにあったのです。人魚はそこでやっと嬉しさに舞い上がりました。
そして、その人魚は魔女から「餞別」と言われ渡された衣服(魔女の魔法により海水には浸かっていない)をすぐに身に纏った。人魚は夜の海を見ながら、口を零した。
「さぁーて、とっとと”人間”を探すか」
人魚は後ろ髪引かれることなく、海に背を向けて歩きだした。海はさざ波を打ちながら人魚を見送った。




