とある鴉の救済(男視点)
痛い! 痛い!! なにこれ痛すぎる!!! 俺は飛び起きた。見ると目の前には丸いふくよかな頬を持った人間の姿。俺は絶句した。そしてその人間が手に持つ物体を目にして驚愕した。
「ち、ちょっと待て!
俺になにぶっかけた、この餓鬼?!」
透明な何故の液体。しかもそれを怪我を負った腕に遠慮なくぶっかける人間。俺は戦慄した。声をあげるも人間はどこ吹く風だ。そしてそれをぶっかけ、終るやいなや、白い細長い巻物を俺の腕へと回す。そして巻き終えればどこか達成感満ちた顔で「よし!」と言い、人間は消えていった。俺は唖然とした。
(え、え? てか俺、生きてるの?)出てきた疑問を答える者はその場には誰もいなかった。とりあえず俺は人間が手当てした場所を繁々と物珍しく見た。そして俺はふと先ほどの人間を思い浮かべた。
年は若いがそこそこ可愛らしい見た目であった。まあ、平凡だが成長すれば化けるかもしれない。それに黒眼黒髪だ。あの女は黒眼だが髪を染めやがったので論外だ。なにが流行の茶髪だふざけるな。女は黒髪の黒眼だ馬鹿野郎。
そして俺は思った。
「なるほど、コレは良い」
俺は人間が去った方向を見つめ静かに笑みを浮かべた。俺はとりあえず傷を治すべく手短な木へと向かうとその場に蹲った。コレくらいならば今から寝れば明日には治るだろう。そう思い俺は直ぐに寝に入る。
決めた。あの人間だ。人間を使えばいい。俺は見た目が綺麗だ。人形だとも言われている。だからきっと気に入る。好かれるし、利用できる。
ああ、なんたる好機だろうか。さあ、人間よ。俺の為に踊ってくれないか?
「くっくく」
堪え切れない笑みが込み上げてくる。俺はそれを必死に押し殺して眠りについた。