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大鴉の恩返しは傍迷惑  作者: noll
紅茶編
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クロッケー

(やはりクロッケーだったか)わたしは密かに予想と合っていた事に安堵していた。しかし、ゲームが分かったからと言って勝てる勝てる見込みは無いに等しい。その理由が、このゲーム。一度もやった事が無いからである。

 さて、ここでクロッケーの説明に移ろうと思う。そもそもクロッケーとはイギリスが発祥で、日本ではゲートボールの原型となった競技とも言われている。ゲートボールと同じようなルールだと思っても、ゲートボールを知らない人もいるであろう。ならば一から説明をしようと思う。

 クロッケーは木製、またはプラスチック製の球を木槌マレットを使い競技する。しかしここで出されるのはフラミンゴ(木槌)でハリネズミ(球)である。そして、木槌で球を打ち、六つのフープと呼ばれる通過点を通り、最後にはゴルフのように中央に立つペグに当てる。これまでが一連の流れである。そしてクロッケーはこの流れを相手よりも早く出来れば勝ちである。

 けれど、この競技にとって一番重要なのが、この競技に使われる肝心の木槌と球が生きている動物なのである。こんなことを現実世界でやったらそれこそ警察沙汰であろう。捕まるのは目に見えている。しかもフラミンゴもあのハリネズミの針山を頭か足で喰らうのである。ハリネズミもハリネズミで打たれた衝撃は尋常な物ではないであろう。そもそも、わたしのスイングで痛みが倍になると思うと、打つフラミンゴを心配すればいいのか、打たれるハリネズミを心配すればいいのか分からなくなってくる。というか、なんで生き物でクロッケーをしなくてはいけないのか。この競技道具事態に問題がある。

 しかし、この道具はこの世界では何ら不思議ではないのだ。ここは『不思議の国のアリス』でその不思議な国で起きたクロッケーなのである。けれど、このクロッケー、本来ならばアリスとハートの女王。そして招かれた客人たちでやるのが流れであった。またしても原作に無い展開である。それになにより、下手をすると自分は首切りを受けなくてはいけない展開が待っているのである。しかし、姿を消す魔法を持っているチャシャ猫なので怖くは無いが、知っていたとしても寝ぼけ爺さんの口から、「首切り」と実際に耳にはしたくない。


「分かっていると思うが、早く杭に当てた方が勝ちとする」


「ちょっと、待って下さいな!」


 寝ぼけ爺さんが進めて行こうとする中、女が手を上げて待ったをかけた。すると寝ぼけ爺さんが頸を傾げて女を不思議そうな目で見つめた。


「どうしたんじゃ、ウサギのお嬢さん」


「どうしたもこうもありませんわ!

このクロッケーに何の意味がありますの?!」


 女の言葉にわたしもハッとした。そうだ。確かにそうである。この寝ぼけ爺さん「ゲームをしよう」とかなんとか言っていたがこのゲームに何の意味があるのか全く聞いていなかった。あまりにも流れるようにして次から次へと展開が変っていくので思わず流されてしまった。わたしとしたことが情けない。しかし、思い出せばわたしも女に寡占する形で声を上げた。


「そうです。

このゲームの利点はなんですか?」


「それは勿論、勝者を決める為じゃ」


「勝者?」


「そうじゃ」


 オウム返しで呟いたわたしの言葉に、うんと力強く頷く寝ぼけ爺さん。わたしと女が同時に首を傾げていると、目を開きわたしと女の間を指差した。流れに沿う形で指さす方を向けば、そこに居たのはなぜか檻に入れられた帽子屋こと男の姿。わたしは嫌な予感がした。


「このクロッケーに勝った者が、あの”帽子屋の所有権”を持つ事が出来る!」


 寝ぼけ爺さんの高らかな声は庭全体へと響き渡る。わたしはこの勝負に早々に降りたいと思い始めた。


「あれ、俺への了承は?」


「さあ、始めよう!!」


 遠くの方で男がなにか呟いていたような気がするがタイミングよく寝ぼけ爺さんの声と被り聞こえなかった。どうせどうでもいい内容であろう。わたしは早々に男から思考を切り替え、これから始まるゲームに不安を募らせた。


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