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大鴉の恩返しは傍迷惑  作者: noll
紅茶編
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自己紹介


 この茶会にいるのはわたし(猫は入れない)と男を含め、合わせて四人。まず、目の前にいる帽子屋である男。そこから時計回りでいるのが見知らぬ小奇麗な女の人(笑っているが顔色が悪い)と間にわたしが挟まれ、見知らぬ老人(しかし寝ている)。老人の方は寝ぼけ爺さんと同い年かそれより少し若く見える。しかし、あまり深く追求しない方が良いであろう。それになにより興味が無い。結果としてわたしが何を言いたいのか。なに、簡単な事である。


「とりあえず、自己紹介から始めましょう」


 全く知らない者同士なので勝手が分からないだけだ。そうしてわたしの一声により始まったのは、簡単な自己紹介だった。

 まず初めに男だ。男は知ってる通り、わたしに恩返しというキーワードでこの意味不明な世界へと連れ込んだ張本人だ。男はとりあえず役名だけ告げるとそれっきりパッタリと口を閉ざしてしまった。いったいなにがあったのだろうか。

 男の次は、あの小奇麗な女の人である。女は男とわたしを挟んだ向かい側の老人を見て少し驚いた素振りを見せた。どうやら知り合いの様子。となれば必然的にこの女と老人は男の仲間な上に、鴉であることが決定された。なんということだ、わたしの味方が一人もいない! 一人頭を抱えている中、女はゆっくりと笑みを浮かべ喋りはじめた。それにより考えが一時中断される。


「私は”三月ウサギ”ですわ。

”帽子屋”の彼とここずっと”御茶会”をしていますの」


 笑顔で役と現状を述べる女。それは見れば分かると誰もが言いたかったが口をつぐんだ。なにより女の目が笑っていなかったからである。なにやら訳ありなのであろう。わたしには一切関係ないが。そしてここでわたしの番が回ってくる。わたしは静かに足元に居る猫二匹を抱き上げた。すると、男と女が分かりやすく肩を震わせた。これにより女が鴉であり、猫が天敵であることが分かった。よし、ならば最悪は猫を囮に逃げればいい。密かに逃げる算段を模索する中、わたしは愛想笑いを浮かべて役に沿った自分を作った。


「どうも、どうも。

わたしは”チェシャ猫”だよ。

ああ、わたし以外にも猫が居るが、これはわたしの”子分”であり”家族”だよ」


 紹介するや否や、しゃがれた声で苦しいと抗議をする二匹。わたしは渋々と下ろし放してやれば嬉しそうにその場に寝っ転がった。芝生の上でゴロゴロとしている猫が羨ましくなった。そうしていると、今度は寝ている老人の番がやってきた。しかし老人の場合は、言わずとも分かる。なので紹介の必要は無いだろう。しかし、やはり役なのであろう。寝ているのにまるで先ほどの会話を聞いていたかのように寝言で自分を紹介し始めたのだ。


「俺は”眠りネズミ”。

眠くて敵わん、話は俺を抜きにしろ」


 それだけ言うとグウグウと深い眠りへいってしまう老人。わたしたち三人はそれを静かに見守ると、周囲を見回し、息を吐いた。


「……それで、一体全体。

どうしてこうなったの?」


 やはり言葉を発したのはわたし。男は顔を渋くさせ、女は首を傾げる始末。訳が分からないおかしな茶会がさらにおかしくなる始まりだった。


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