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大鴉の恩返しは傍迷惑  作者: noll
紅茶編
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御茶会


 ビクビクと怯え絶えず警戒する帽子を被る男に、わたしは静かに息を吐いた。すると、垂れていた耳がピクリと動き、ノソノソと重い足取りをしながら二匹の猫がわたしの足元へと寄ってきた。我が愛猫のまんじゅうとだんごである。二匹はわたしの足元にすり寄ると物欲しそうな眼で老婆のような声を上げた。可愛らしくない鳴き声だと思いながらも、猫の食べられそうな物を見つけては二匹に分け与えた。

 わたしは黙々と食べ始めた猫にヒッソリ安堵しながら前を向き直った。

 目の前に広がり、最初に目に飛び込んでくるのは、盛り上がるようにして山積みされたティ―カップ。それも使い終わった。そして、食べカスだらけの食器と汚れたテーブルクロス。初めは真っ白だったのであろうが、その面影は綺麗さっぱりと無くなっている。さらには、オンボロの時計。けれど、その秒針は動く事なくずっと同じ場所を差していた。

 この光景にわたしは一つの作品が思い浮かぶ。彼の有名な作品。一人の少女の為に作った童話。そう、ルイス・キャロル作『不思議の国のアリス』だ。そしてこの現状はその一場面に登場してくる『おかしな御茶会』である。

 帽子を被る男は必然的に帽子屋となり、対するわたしは猫を引き連れている為に、分かりにくいがチェシャ猫として割り振られた様子。

 ……けれど、ここでひとつ問題が出てくるのである。

 本来であればこの茶会にわたしは存在しない。原作では、主人公となる少女アリスと喋り、ハートの女王の前に出てきては言葉巧みに発言をしたのち、首切りされそうになると云う大変理不尽な役目があるからだ。と言っても、チェシャ猫の特技である姿を消す”不思議な力”のお陰で作中でも首切りは免れる。そしてそれから先は一切登場してこない謎多き存在。それを何故わたしがやるのか、その答えを知る物など誰もいない。しかし、目が覚めて手に握りしめられた手紙には自分はチェシャ猫だと書いてあった。役があっただけでも儲けものなのかそうでないのか。その答えを知る物など茶会にいる全員にさえ分からない。


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