脚本《ブレイン王城中庭Ⅱ》
――魔女の魔法のお陰で衣服を身に纏うことのできたシンデレラ。嬉しさのあまり泣き出してしまう。
《魔女》『……ふぅ。さてシンデレラ、御感想は?』
《子供》『マミィーさん、貴方は女神だ! なんとお礼を言ったらいいか!!』
《魔女》『ふふ、喜んでいただけて何よりです。それではシンデレラ、この魔法で王子を虜にしてきなさい』
《子供》『はい! メロメロにさせてきます!!』
《魔女》『ああでも、さっさと切り上げてきてね。本番は舞踏会なんだから』
《子供》『舞踏会もやるのかい?』
《魔女》『シンデレラと言ったら舞踏会でしょう? 舞踏会の無い御伽噺なんて愚の骨頂よ!!』
《子供》『女性の観点は良く分からない』
《魔女》『ならば今から知りなさい。今の貴方は”女”なのですから』
《子供》『待ってくれ、俺は男だ!』
《魔女》『この世界ではシンデレラを含むラスカー家は女です。誰が何と言おうと』
《子供》『ああ何と言う事だ』
《魔女》『まあ頑張りなさい。それでは私も忙しいから行くわ。あとは適当にやりなさい』
《子供》『唐突に出てきて颯爽と消えていくだなんて嵐みたいだな』
《魔女》『嵐ですって? ならば王子の前に出てきて暴風を起こせばいいのかしら?』
《子供》『それだと子供が夢見る御伽噺が崩壊するんじゃないかい?』
《魔女》『既に崩壊し始めた様な物語に夢も糞も無いわよ』
《子供》『こらこら、仮にも女性でしかも母親であるマミィーさんが糞だなんて言わないでくれ。今はいないが娘に聞かれたら真似をしてしまう』
《魔女》『あら、これは失礼。つい口が滑って』
《子供》『全く。上手い言葉をよくもまあ次々と』
《魔女》『口が達者なのですよシンデレラ』
《子供》『ただの屁理屈だろうマミィーさん』
《魔女》『そうとも言いますね。――て、大変だわ! これから夕食のお買い物に行かないと!! 安売りバーゲンが始まってしまうわ!!』
《子供》『それは大変だ! 早く行きなさい!!』
《魔女》『言われなくたって行きます! それではまた!!』
《子供》『ああ、マミィーさん!!』
――魔女退場するかと思いきや、思い出したかのように慌ててシンデレラの元へ引き返してくる。
《子供》『どうしたんだい?』
《魔女》『ダンスとキスまでは物語上仕方が無いので許します。それでは――』
――魔女退場。遅れてやって来たのは王子と話していた家来。
《家来》『これはこれは綺麗な姫君! 少しお訪ねしたいことがございますが、宜しいでしょうか?』
《子供》『な、なんでしょう?』
《家来》『先ほど此方の方で下着姿の女が現れたのですが御心当たりはございませぬか?』
――直ぐに自分の事だと気がついたシンデレラは慌てて言葉巧みに言い訳をズラズラと並べはじめた。
《子供》『ああ、それは申し訳ない! それは俺の事です!!』
《家来》『なんと! それは誠か!? しかし服を着ているではないか!!』
《子供》『実は下着姿になったのには深い訳がございます』
《家来》『ほう、訳? ならば申して見よ』
《子供》『はい、それは勿論。実は川で洗濯していた俺の服が風に飛ばされ、この王城に運ばれてしまったのです』
《家来》『それは難儀な事!』
《子供》『俺も大慌てで服を見つけ、下着姿から今の姿へ舞い戻った次第です』
《家来》『ううむ。しかし……』
《子供》『何か問題でも?』
《家来》『王子が姫君を待っているのだ。悪いが来てくれないだろうか?』
《子供》『王子が?! そんな何故!!』
《家来》『姫君の所業に興味があったようだ』
《子供》『ああなんということ! このままでは殺されてしまう!!』
《家来》『泣かないで下さい姫君。大丈夫、王子は殺生はしない。ただ姫君に会って話したいだけだ』
《子供》『ええ、それならば行きましょう。連れていってください』




