我が家の猫
この城にはまんじゅうとだんごが居る。まんじゃうは先ほど紹介した猫のことだ。するとだんごは一体なんだと思うだろうが安心して欲しい、だんごも猫である。
さて、二匹の猫はやはり猫としての特性か気まぐれではっきり言えば可愛げがないのである。猫とは飼い主に愛想を振りまいてなんぼのものだ。そんな猫たちはやはりというかなんというか鳴いては餌を要求してくる。次から次へと与えれば与えるほど食うので、家族はいつかこの二匹が巨体で家を練り歩くのではと思い恐怖した。以来、猫の食事は制限が設けられた上にカロリーが極めて抑えられた監修の元、与えられることとなった。そのため猫の食費は地味に高い。さらに栄養価は人間の倍以上である。解せぬ。果てしなく解せぬ。
それにしても、先ほどの男はいったいなんだったのであろうか。不思議であるし甚だ不気味だ。そして危ない空気を持つ、何と言い現せればいいのだろうか? そうだ。言うなれば歩く犯罪者のような臭いがあった。決して嗅いだ訳ではない、雰囲気がそうなのである。
そもそもの話だ。全身黒ずくめなうえに確かに西洋人形みたいな小奇麗な顔つき。惚れ惚れするが、別に好みでは無い。第一だが選ぶ基準はわたしにあって、あの男には無い。男一人の勝手な思い込みで動かれるなど愚の骨頂であろう。むしろ謝れ。謝罪を要求する。いきなり御宅訪問されプロポーズされるなど意味が分からない。やはり不審者であろう。そして頭のネジが一つどころか複数飛んでいってしまった可哀想な奴だ。しかし例えそうだろうと二度と会う事はあるまい。なにせ我が家にはまんじゅうとだんごがいる。
こいつら二匹は高貴な猫だ。なんといっただろうか……そうそう、イギリスの……なんだっただろうか? ああそうだ、スコティッシュフォールドとか言うなんとも舌を噛みそうな名前だ。
世間一般的にイギリスは飯がまずいだのなんだの言われているが高貴で気高い猫であろう。きっとそうである。それになにより先ほどの行動あっぱれである。どうやら男は猫が嫌いと見た。それに自分を「鴉」だと言い張り、あまつさえふざけたことに「恩返し」などと言ってくる始末。
なぜ育てている猫からの恩返しが無くて、突然きた男からの恩返しを受けなければならない。まったく遺憾であり、訳が分からない。
男が例え本当にあの大鴉であろうとなかろうと、次にわたしの前に現れたら今度は猫を放ってやろうと思う。楽しみであり愉快であろう。
さて、あの男は去り際に言い残したが本当に来るであろうか? 本当にきたらけしかけてやらねばならない。それはそれは楽しみだ。
それまでわたしは、読みかけのソファに投げ出した本を引っ掴み読むとしよう。
本へと目を向ける際、猫がしきりと鳴いて餌を所望してくるがわたしは華麗に無視を決め込んだ。思考を本へ移し文を読む。そこから先は本の世界だ。