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赤髪ちゃんと魔族

 ……?

 これまでのあらすじ的なものを書く場所?

 よくわからんのでスルーです。

 


 ◆3、赤髪ちゃんと魔族◆


 駅前のロータリー。休日だというのに行き交う人はまばらで、みんな暑そうに歩いていた。

 待ち合わせの1時までもう少し。おれは木陰のベンチに座り、デートの相手がどんな格好で来るのか、不安でいっぱいだ。

 望まれない快晴の下。頭上で騒ぐセミばかりが異常に元気でやるせない。

 電話があったのは今日の午前のことだった。赤髪ちゃんに家族の絆を破壊されたのが三日前だったので、あのまま二日間放置されていたことになる。

 内容はこの間と同じような映画の誘いだ。

 おれは怒りを表に出さないように苦心しながら――なおかつ怪しまれない程度には冷たく――すぐにその誘いに乗ったのだった。


 遠くから、大きめの帽子を被った少女が歩いてきた。遠目にも肩口に流れる髪が真っ赤なのがわかる。

 また変な羽を生やして来たらどうしようか、マジで心配していたのだが、これは……。

「おまたせ!」

 両足を揃えて赤髪ちゃんがおれの前に立った。ふちの広いハットの下では、当たり前のように得意げな笑顔。先日ツインテールにしていた長髪は、今は解いて自由に背中におろしている。白いワンピースの上に薄地のドレスシャツを腕まくりして羽織っていた。足元はベージュの可愛らしいミューズで、小脇には小さなバッグを抱えていた。

 予想よりもまともな格好だが……まともすぎて不安だ。

 なんなのこいつの適応力。

 おれはといえば、適当に短パンTシャツサンダルだった。

 一生懸命準備するのも馬鹿らしいと思ったし、一生懸命準備したと思われて調子に乗られたらむかつくし。

 だって、別におれはデートしたいわけじゃない。

 ただ、なんとか家族の誤解を解かせようと、それだけしか考えていなかった。

 本当をいえば、すぐにでも怒鳴りつけてやりたいところなのだが、また「ひぐっ」とか泣いて逃げられたらこちらから連絡の取りようもないので、出来る限り紳士的に話を進める必要があると考えている。

「行くか」

 おれはそっけなくベンチから立って駅のエスカレーターへと向かう。

 赤髪ちゃんは鼻歌を歌いながらついてきた。

「ねえ、映画ってどこで見るの?」

「二つとなりの駅まで電車。そっからちょっと歩くぞ」

「楽しみー」

 なんというか……。

 感情がどこまでも咬み合わない。怒りを隠していればこんなものなのだろうが、コイツはコイツでどこまでが素なのかわからない。眩しい笑顔の裏側が怖い。

 改札の横。切符の自販機の前に来たところで、赤髪ちゃんの鼻歌が止まった。

 もしかして切符の買い方がわからないんだろうか。

 こっちの世界の事情には精通してるように思えるが、やはり別世界の人間――。

「お金貸して!」

 真顔で率直に切り出してくる。

「……フツーにいやなんだが。もしかして、財布持ってきてないのか?」

「えへへ」

 この女、ろくでもねえっ……!

「ね、お願い。こっちのお金ないの。あっちの世界に行ったらうんとおごってあげるから!」

「誰がそっちの世界に行くって言ったんだ。ちゃんと日本の通貨で返せよ」

 おれは踏み倒されるのを覚悟してお金を貸した。おごると言わなかったのはただの意地だ。

 どうやって今日の服装を揃えたのかが少し気になったが、正直なところ嫌な予想は簡単についていた。説教するのがめんどうだから言わんが。

 こいつ、おまわりさんに追われてたもんなあ。

 

 ◆


 次の駅でどかどか乗り込んできた人達が、目的地の駅についた途端みんな降りていった。

 ロータリーの周囲は背の低いビルに囲まれていて、この辺りは半端に栄えている。まあ、多少移動したところでセミのやかましさやらじっとりとしたむし暑さは変わらないのだが。徒歩で15分というのも、炎天下ではちょっとした苦行である。

 赤髪ちゃんは、時折物珍しそうに辺りを見回して、楽しそうに話しかけてくる。

 こいつは電車の中からずっと元気だった。

 ただ、喋り倒してはいるのだがその内容は異世界のことにも自分の生活にも、当然こちらの家族のことにも触れず、車窓からの景色だったり、天気のことだったり、まるで中身のないものだったのでおれは適当に相槌を打って流していた。

 早く本題に入る必要があると思った。電車の中で話ができなかったのは、単に赤髪ちゃんがずっと話を続けていて会話を切り出すタイミングが掴めなかっただけじゃない。

 恐ろしく不本意なことだが……おれは今の状況がほんのちょっとだけ好まし――いやいや、違う。今の最悪な状況に、好ましい部分がごくわずかに紛れ込んでいる。

 だってデートだ。しかも、赤髪ちゃんとくればド派手な髪色をしているくせに確かに可愛らしい顔立ちをしていて、よい意味で目立つのだ。

 まあ、おれのことだからこういう日は当たり前にやって来るのだろうとは常々思っていたし、もちろん初デートだからといって、それが特別なことだとは全く思わないわけだけども。もちろん、ただ歩いているだけで赤髪ちゃんに対して好意を持つなんてことはまったくないし、コイツがおれにしたイタズラを思えば、隣で脳天気な笑顔を振りまくたびにイラつく気持ちはもちろんあるのだが。

 女の子と二人で街を歩いている現状に対して、若干気持ちが浮ついているのは認めざるをえないところだ。


 映画館に向けて街路樹の並んだ歩道を歩いていると赤髪ちゃんのトークの歯切れが悪くなり、だんだんと言葉少なになっていった。

 やがて歩調が小さくなり、赤髪ちゃんが顔を俯けて止まった。

 さっきまでの元気が全くない。

「どうした?」

 返事がない。思えば空元気だったのかもしれない。赤髪ちゃんが本気で楽しみにしていたのは間違いなさそうだし、対するおれは紳士的に振る舞うつもりだったが、実際には適当に相槌を打っていただけだった。

「おい、本当にどうしたんだよ? 具合悪いのか」

「……ん、ちょっとだけね。おぶってくれる?」

「バカ、歩け」

 おれが歩くと、赤髪ちゃんはへらへらと苦笑いをしながらついてきた。

 だが、ただ歩いているだけなのに、肩で息をしている。まだ映画館までの半分も来ていないというのにだ。

 しょうがねーな。

「あ、そういや昼飯まだなんだよ。ちっと寄ってくぞ」

 おれは赤髪ちゃんをつれて脇にあったファミレスに入った。

 席につくと、赤髪ちゃんは冷たいテーブルにぺったりと頬をつけながら体力を回復していた。

 演技……じゃねえみたいだな。

 どうするべきかな。コイツの体調なんぞ心配してやる義理もねえんだが……。

 このまま倒れたらめんどうだしな。だが、このままデートを中止にするにしても話すことはある。

 どうにか家族への誤解だけでも解いてもらわにゃならん。あくまで今回のデートの目的はそこだ。

 あ。ってか、今話せばいいのか。今なら逃げる気力もないだろうし。

 おれは、もう取り繕う必要もないとばかりにため息を大きくついて、告げた。

「なあ、赤髪ちゃん。最近、かあさんとねーちゃんがすっげぇー冷たいんだけどな」

「……ふーん」

 ちょっといじけたような目をして上目遣いにおれを見る。反射的に謝罪が返ってくるだろうし、そうするべきだと思っていただけにむかつく。

「あんのなあ……てめえのふざけたイタズラのせいでおれがどれだけ困ってると――」

「じゃあ、聞くけど……そっちはわかってる? この間までのきみの冷たい態度で、私がどれだけ悲しんでるか」

「ちっ……そういうのを自分から言うかねぇ、ふつう」

 文句を言われる筋合いなどない――ないはずだが。

 赤髪ちゃんの上目遣いがちょっとだけ険を帯びた

「人が使いたくない魔法を使ってまで警察から逃れようとしたのに、さっさと引き渡したよね? 人がドキドキしながら電話で映画に誘ったのに、全然関係ない説教した後、すぐ切っちゃったよね? 人が泣きながら助けを求めているのに、逆に追手を増やそうとしたよね?」

「う、うるせえな。おまえはさ、おれに『命がけで異世界に来い』なんてことを強要して、それが断られたからって今度はこっちの日常を壊しやがったんだぞ。どんだけ勝手なんだよ!」

「……嫌われて当然……か。じゃ、どうしよっか? こんな私とのデートにつき合わせるのも悪いし……」

 赤髪ちゃんはそういうと、だるそうに席を立ち上がった。

「ま、待てっ!」

「待て?」

 薄く笑う。

 ったくこれだから――。

「待って……くれ。いや、確かに、おれにも悪いところはあったと思う……た、確かに一方的にそっちを責めるべきじゃないよな」

 赤髪ちゃんは席に着き、やるせなさそうにため息をこぼした。

「……言っとくけどさ。私だって、壊したくて壊したわけじゃないもん」

「なに?」

「よし、ご飯食べよう、ご飯! こっちの世界はご飯美味しくて大好き」

 取り繕うような笑顔で、メニューを開く。

 具体的に家族の絆が復活するような話には全然持って行けてないわけだが、このまま逃げられちまうのは最悪だった。

「食いすぎんなよ」

「おやおや、まるで彼氏のような……」

「食いすぎると動けなくなりそうだからだ。ってか、おまえがさっきちょっと歩いただけでバテてたのってさあ」

 下世話な表情の赤髪ちゃんに「老化現象?」と聞いたら赤髪ちゃんは首を傾げた。

「ああ、違うよ。私達は人間じゃないから、そういう年の取り方はしないもん。まあ、老化はあるけど、影響を受けるのはあくまでも精神面に限定されてるし。外見や体力は変わらないんだ」

「は!? そうなのか? おれはてっきり実体はすでにババアかと……」

 赤髪ちゃんはちょっとムッとしたような表情をした。

「あのね、私達は精霊だよ。私だけじゃなくて、私達の世界はみんなそう。人間は一人もいなくて、精霊と魔族が争ってるの。どっちも見かけは人間っぽい部分があるけど、やっぱり違うんだよ」

「それは、当然寿命もか?」

 人間の寿命と一緒だとしたらコイツはもうギネスレベルだからな。

「私の種族はだいたい500年ぐらいは生きるよ。あ、でも私達の仕事だと、みんな30年ぐらいで死んじゃうんだ」

「なんだそりゃ、よくわからねえんだが」

「心当たりあるでしょ」

 赤髪ちゃんは話題を断ち切るかのようにボタンを押してウェイトレスを呼んだ。

 こっちの注文がまだまったく決まっていないってのに。

 おれは慌ててメニューを開いて、たまたま目についたハヤシライスを注文した。赤髪ちゃんはデザートで一番高いパフェを頼んだ。

 おれがおごるってわかってんのかね、コイツは。


 ◆


 ハヤシライスを食べながら、さっきの話について考える。

 精神面のみの老化ね。赤髪ちゃんはたしか『あっちの世界の私が老ける』と言っていたが精神面の影響はこっちの世界の赤髪ちゃんも十分受けてるんじゃねーのか?

 言動、髪型、服装。どれも出会った日より大人っぽくなっているような気がするし。出会った時に感じたヤバさも、外見に精神年齢が追いついてなかったから生じたもんかもしれんし。寿命が500年ある精霊の16歳ってのが、人間の幼児クラスだったりしてもおかしくない。まあ、そこまで低くはないだろうが。

 それから、寿命が500年あるが、赤髪ちゃんの仕事をしていると実際には30年ぐらいで死んでしまうって話。真っ先に思いつくのは、魔法の制約だ。

 赤髪ちゃん達はこっちの世界で魔法を使うとペナルティで30歳、歳を取るはずだ。使えば使うだけ、早く死ぬ。先日、おれは彼女が命がけで勧誘しているのでは、と思ったが、寿命が長くともそれはそのとおりなんじゃなかろうか。

 それと、もう一つ。『私の仕事』じゃなくて『私達の仕事』っていった。

 なら、以前の会話でおれが思い違いをしたのは老化現象だけじゃないかもしんねえ。

「何人目だ?」

「なにが?」

「異世界に連れて行こうとしてるのは、おれが何人目だって」

「前にも言ったじゃん、100人目だよ」

「すまん。まだ主語が抜けてたな。『赤髪ちゃん』が異世界に連れて行こうとしてるのは何人目なんだ?」

「…………に」

「に? 2人目だってことか?」

「……この前はベテランってことにした方が信頼されると思って黙ってたけど……。私が勧誘するのは……きみで2人目」

「それにしちゃ、ずいぶんこっちの世界に慣れてんだな」

「実際に慣れてるっていうのはちょっと違うと思うけど……。精霊は生まれた時から役割が決まってるの。私達はこっちの世界に勧誘にくる為に生まれてきたようなものなの。先輩たちが残してくれた教えを一生懸命勉強して、それを後輩に受け継ぐの。その内容はこの世界の日常生活や仕組みや文化、勧誘方法なんかもね」

「なるほどな……つか、赤髪ちゃんの他に何人も勧誘してるなら別におれにこだわらなくていいじゃんか。赤髪ちゃんが勧誘に失敗しても誰かが人間を連れてきてくれるんだろ?」

「うん? 違うよ。『残した』って言ったじゃん。先輩たちっていうのは、同時に勧誘してるわけじゃないよ。あくまで私達の仕事は現役で働くのは一人だけ。先輩達はみんなもういないし、後輩は私が消えるちょっと前に生まれてくる。そういうふうにできてるの。それに、あっちの世界に人間は一人しか存在できないの。それは王女様が占術で決めてくれた人だけを勧誘する決まりになってる」

「つまり?」

「きみじゃなくちゃダメなの。私達を助けてくれるのは」

 赤髪ちゃんは、パフェの底のフレークをザクザクやりながらさらりと言った。

「……絶対にいやなんだが」

「まあ、またあとで話そうよ。今日はもっと楽しんでほしいんだ。私に好意を持ってほしいからさ」

「……そこまであけすけに言われるとどうにもな……。言っとくが、家族への誤解を解かない限り、おれがおまえに好意を持つことはないぞ?」

「はっきり言われると凹むんだけど……。じゃ、交換条件はどう? 私はあなたの家族に全部話して謝るよ、きみの望むように」

「その代わりに異世界に来いってか? やなこった」

「だよねー」

 赤髪ちゃんは困ったように笑うとまた食事を再開した。


 ◆


 ファミレスを出てから歩く。

 完全に回復したように見えたが、5分も歩かないうちに赤髪ちゃんはまたバテた。

「暑いんか?」

「……いや……暑いには暑いけど……」

「じゃ、消えるのか?」

「はは、消えてほしい……?」

 膝に手をつきながら、顔も上げずにいう。

「さあな……。でも、老化が関係ねえとすると、その貧弱っぷりはなんなんだ。こっちの世界に存在する為のエネルギーみたいなのが枯れてるとか、そういう話じゃねえの?」

「……ハズレ。ちょっとそこの公園で休んでいこう」

 小さな公園だ。猛暑の中、小学生がサッカーをしていた。

「ガキは暑い中でも元気だねえ」

「ふふ、ねえ。……もしもあの子達みんなあっちに連れていけたらどれだけの戦力になるかな」

「冗談だろ。あいつら十人ぐらいしかいないしまだ子供じゃねえか」

「冗談じゃないよ。魔法さえ使われなければ、きっと無傷で魔族をたくさん倒せるよ。そもそも、どうして私は人間に助けを求めていると思う?」

 ちょっと考えてみる。

 人間にしか使えない武器や能力があるとか、そういうところだろうか。もしくは、人間にしか立ち入れない場所があるとか……。

「わからん」

 あれこれと想像するはできたが、どれもいまいちピンとこなかった。そもそも、ヒントが少なすぎるのだ。

「重力だよ」

「は? どういう意味だよ」

「この世界の重力は私達の世界のそれよりもずっと強い。それがどういうことかわかる?」

「まあ……その分身軽になったりするってことか。月なんかをイメージするとふわふわしてて動きにくそうだが」

「そこはまあ、精霊の力でね。ともかく、人間の世界では一般人でもあっちに行くだけで超人になれる。魔族の強靭な力にもスピードにも対抗できるし、重い武器だって軽々と振り回せる。一騎当千の働きができる」

「ふーん、なるほどねえ……だが、そんな超人が今まで99人も負けてるのはどういうわけだ?」

「……魔法でやられちゃうんだよ、みんな。先輩たちが残した記録でも、殴り合いや斬り合いでやられた記録はなかった」

「じゃ、結局強くても意味ねえじゃんか。それにしても今日はずいぶん正直にしゃべるんだな。それを聞いておれが異世界に行きたくなるとは思えんのだが?」

「……最近はそっちがまともに聞いてくれなかったんじゃん。それに、初めて会った時は私もちょっと浮かれてたんだよ」

「浮かれてた?」

「また一緒に戦ってくれる人ができるってさ」

「そりゃまた、ぬか喜びだったな。都合の悪いことまで話してくれるのはありがたいが、おまえを信用するか異世界に行くかは別問題だぞ」

「うん。そうだね。でも信用は大事だよ」

「は、どの口が言うか」

 おれたちは、また映画館に向けてぷらぷらと歩き始めた。


 ◆


「どれが観たいんだ?」

「ええと、ちょっと待ってね」

 映画館のエントランス。赤髪ちゃんはポスターの貼られたイーゼルの前をふらふらと行ったり来たりする。

「決めてなかったのかよ。あんだけ映画映画言ってたから、気になる映画があるんだと思ってたぞ」

「あ、これ! これにする」

「あー……はい。なるほどね」

 赤髪ちゃんが指さしたポスターはハリウッドのファンタジー大作だ。おれはどうして赤髪ちゃんが映画に誘ったのかわかったような気がした。

 大人二人分のチケット代を払う。けっこうな出費だった。

「始まるまで時間あるけど、どうする?」

「じゃ、ゲーセン! ゲーセン行きたい!」

 赤髪ちゃんは入り口付近になるUFOキャッチャーを指さしてはしゃいだ。

「ほう、金もないのに、ゲーセンに行きたいとは」

「じゃ、ちょっと見るだけ」

「ねだるなよ」

「ねだらないよ!」

 ぷらぷらと入り口の方へ戻る。


「初めてか、ゲーセンは」

「うん、電車も映画館もファミレスもね。資料では知ってるし、なにをどうする場所かって知識も教わってるけど」

 赤髪ちゃんは先行して場内を歩き出した。

 浮足立って歩く後ろ姿を眺めながら、ふと思う。

 おれが2人目だってことは、前にこっちで勧誘された人間がいたはずだった。にも関わらず、赤髪ちゃんはこっちの世界で初体験のことが多い。以前にこっちの世界で魔法を行使した形跡もない。もしもその時に魔法を使っていれば、赤髪ちゃんの歳が合わないからだ。そして、最初におれを勧誘しに来た時の赤髪ちゃんの言動。誘われれば、喜んで異世界に行くのが当たり前みたいな態度だった。赤髪ちゃんが初めて異世界に連れて行った人間……。そいつはもしかすると、おれとは正反対にすごく純粋で、協力的な、いいヤツだったんじゃないだろうか。

『うん、ボク勇者になるよ、そしたらボクと結婚してね!』

 思い出したのは、初対面の時に赤髪ちゃんがおれに期待したリアクションだった。


 薄暗い場内を足早に歩きまわったかと思えば、とある筐体の前で足を止める。UFOキャッチャーを小さくしたようなヤツだ。普通のUFOキャッチャーに比べて取りやすいが、小物しかない。中では小さなイカやタコ、クラゲのキーホルダーがひしめいていた。

 じっとそれを見つめたかと思えば、ちらちらとこちらを見てきた。

「ねだるなっていってんじゃねーか」

「ふむ……」

 納得したかに思えたが、きょろきょろとあたりを見回す。

 何やってんのかと思っていると、ワンピースのスカートが少しまくれ上がって、白い触手がしんなりと伸びてきた。

「おいまて」

 取り出し口をそっと手で押し開け、ゆっくりとその中に触手を忍ばせる。

 ぱしーん、と、頭をはたいておいた。

「んなことばっかしてるから警察のお世話になるんじゃねーか」

 小声で諭すと赤髪ちゃんは「おかしいな」と首を傾げた。

「先輩方の教えによると……欲しいものはこっそり持っていくように、と」

「いや、いろいろ間違ってるからな、それ」

「でも、お腹が空いたら何か食べないといけないし」

「その触手でカラス捕食してたじゃねーか」

「……見ないでって言ったのに……恥ずかしい……」

「おまえに恥の概念があったとは」

 まあ、これぐらいならいいか。そんなに金もかからなそうだし。

 おれは黙って百円を入れると、小さなくらげの人形をあっさりとゲットした。

「わぁっ、やったっ! ありがとう!」

 目を輝かせて手を伸ばしてくる赤髪ちゃんをおれは片手を上げて制した。

「よし、これをやるから、おれの家族に謝れ」

「……くらげじゃなくてイカがよかったんだけど」

 おれは黙ってもう百円入れると、狙い通りにイカを取った。

「よし、じゃあこれで」

 赤髪ちゃんは受け取ろうとしたが、寸前で何か考える素振りをして、すぐに手を引っ込めた。

「いや、やっぱりいいや。それは私にとってのラストカードだし。また相手してもらえなくなっちゃうしね」

「……おまえな、イカ取る前に言えよ」

 まあ、こんなことであっさり謝ってくれるわけがないとは思ったが。おれは特に欲しくもないキーホルダーを二つポケットに突っ込んだ。


 その後、赤髪ちゃんとゲーセンをうろうろしているうちに開場の時間になったので座席についた。

 本編が始まる前に、いろいろな映画のCMが流れる。

 そのたび、隣から小さく感嘆するような声が漏れていた。

「おまえ、ほんとはどれが観たかったんだよ」

「ん?」

「おれに観せたい映画じゃなくてって話だよ」

「あはは……ホラーかなぁ。あっちにはお化けとか幽霊っていう概念がないから、お伽話にもホラーはないんだ」

「言っとくけど、おれだって別にファンタジーが好きってわけじゃないんだぞ」

「ラノベの冒険物は好きなのに?」

「似てるけど、やっぱ二時間の映画じゃストーリーも限界があるしな。アクションシーンは見応えがあっていいけど、強引な展開があると冷めるんだよ」

「うーん、そうなんだ……。失敗したなあ。やっぱりマニュアルなんてあてにならないね」

 小声でひとりごちる。

 おれにファンタジーを見せたかったのは、異世界に興味を持ってもらうため。その手法は先輩たちから受け継がれてきたいい加減な知識の一部なんだろう。

 映画が始まり、スクリーンには壮大な大自然が写しだされる。険しい山々や大きな滝、荘厳な白亜の城。

 ぶつぶつと入るナレーションも洋画の字幕バージョンなので味がある。

 英語ってそれだけでなんかかっこいいよな。日本語の方が、ひらがなカタカナ漢字があってずっと複雑だと思うんだけど。

 その後唐突に始まる、知らない海外の俳優達によるよくわからんバトルも、凝ったCGなのでそれなりに見応えがある。

 戦闘が終わると場面が代わって、主人公らしき少年の日常シーンへ。

 平和的な村だ。きっとなんか悲劇的な展開に巻き込まれるんだろう。そのまま何も起きなけりゃいいのになあ、と考えるが、案の定主人公の暮らすのどかな田舎町はモンスターに襲われてしまう。

 ちらっと隣を見ると、赤髪ちゃんは予告CMの方がお気に召したのか、特に表情も変えずにただスクリーンを眺めていた。

 主人公は助けに来た強そうな騎士に保護されて、生き残る。親しい家族や友人達を失って悲しみにくれるが、助けてくれた強そうな騎士に諭されてモンスターに復讐を誓う。まあ、テンプレだな。

 きっと、このまま旅に出て、ラスト前にこの騎士が死んで、それまで頼ってばかりだった主人公がなんか覚醒したりすんのかなあって予想した。

 ふと隣を見る。相変わらず表情はほとんど変えないままだが、スクリーンが明るくなる度に目の下に雫が流れているのが見えた。

 モンスターの親玉を叩こうという決意をして、主人公と騎士が旅立ったばかりである。

 泣く意味がわからん。ホラーなんて観せたら大爆笑するんじゃねーかな。

 気になったので、腕をつんつんつついてみた。

「ああ……ごめん。……ええと……ちょっとお腹すいた」

「さっき食ったばっかじゃねえか。まあいいや。じゃ、ポップコーンでも買ってきてやるよ」

 隣で泣かれててもしらけるし。

「え、でも映画途中……」

「いいんだよ、ちょうどトイレも行きたかったし」

 おれは席を立って、一度ホールに出た。

 ポップコーン売り場の小さな列に並ぶ。軽くなった財布の中を確認して、ふと思った。

 ちょっと優しくしすぎたか。 

 どうもヤツのペースに乗せられている気がする。泣き落としなんざあいつの常套手段だろ。さっきの涙もどこまでマジかわからんぞ。

 適当にキャラメル味を購入して列から離れる。こういう時、同じ値段ならなんとなく味のついたものを選んでしまうのはちょっとした貧乏性だ。

 映画の上映されているホールに入る手前で、「ちょっとよろしいですか」と呼び止められた。

 見れば、青みがかった長い黒髪の女の子だった。真っ白なシャツに黒いロングスカート。一瞬映画館のスタッフかと思ったが、先ほど売り場で見た制服とは違う。

「……えーと、なんすか?」

 おれは瞬時にだいたいの事情を察しながらもあえてとぼけた。

「……お話が」

 緊張の為か彼女の言葉は短い。切れ長の目がナイフのように鋭く光っている。

 理知的な外見に反して肉食系かもしれん。

 彼女はそのまま通路の奥の方へと歩いて行く。

 ひと目を避けるつもりか。強引なのにシャイなんだな。

 天井に非常口を示す緑のマークがぶら下がっている。そこで彼女は通路を折れた。

 外階段につながるドアの手前。先ほどまで歩いていた通路からは死角になる場所だ。

「あの赤い髪の女の子……彼女ですか?」

 ほう……なかなか慎重な切り口だ。これは計画的なナンパだとみた。

 おれと赤髪ちゃんがゲーセンをうろついていたのはもう20分ほど前だ。

 大方、おれに一目惚れして声をかけるタイミングを伺っていたのだろう。

「ふ……心配いらない。あの子はただの知り合いだし、キミが思ってるような親しい関係じゃないよ」

「そうですか。……彼女から変な誘いを受けてませんか?」

「ん……たとえば?」

 なんだか話がおかしな方向に。

「どこかについてきてほしい。助けてほしい。そういう類の話です」

 なるほど……逆ナンじゃねえのな。

「……ちょっと失礼なこと聞くけど……キミは、人間?」

「……あなたが心配なだけです。彼女には、できるだけ関わらない方がいいですよ」

 彼女はそういうと、おれの脇を抜けて通路の方へと歩き出し――足を止めた。

 赤髪ちゃんがいた。

「……驚いたね。どうして魔族がこっちに来れるの?」

 赤髪ちゃんは顔に警戒の色を浮かべながら、進路を塞ぐ。 

「教える必要ないですね。それから、私達を『魔族』なんて呼ぶのはやめてほしいのですけど。人間まで争いに巻き込むあなた達の方がよっぽど悪魔染みているじゃないですか」

「略奪と侵略を繰り返すあんた達を他になんて呼べばいいの? あんた達がいなけりゃ、好んで人間を巻き込んだりしないっての」

「私達はそうしなければ生きれいけないようにできているのだから、仕方ないでしょう。こっちの世界のことはこっちの世界で完結させるべきですよ」

「魔族がこっちの立場になれば同じことをするよ。そうしなけりゃしかたないってね」

「精霊がなぜ私達よりなぜ弱いのか考えたことはありませんか?」

「……どういう意味?」

「精霊は私達の為に環境を整え、奪われるための存在だからです。ムリに抗うから余計な血を流すことになる」

「勝手な理屈を言わないで。あんた達に暮らしを奪われるたびにみんながどれだけ苦しんでるかもしらないで!」

「残念です。私、あなただけは他の精霊達と違ってもう少し物分かりがいいと思っていたんですが……。前回の戦、忘れたわけではないでしょう。あの少年で懲りたんじゃなかったんですか?」

「あ……あんたにだけはそんなことっ!」

「……しょせんは霞のように生きる精霊。安い涙でしたか」

 赤髪ちゃんは言葉をつまらせ、固く拳を握りながら睨みつけた。

「くれぐれも思い違いをしないでくださいよ。あの子が死んだのは殺した私のせいじゃない。平和な人間界から戦場に連れてきたあなた達のせいです」

 青い髪をした女の子は、そのまま通路へと歩き出す。が、去り際に振り向いた。

「ああ、そうそう。私だって驚きましたよ。こんな時期に精霊が一匹人間の世界に飛び込んでいったのですから。何を企んでいるか知りませんが、身勝手な行動は慎まなければ、あなたの敵は私達だけではなくなりますよ」

 それだけいうと、返事は待たずに今度こそ去っていった。


  ◆


 その後、席に戻り一応ラストまで映画を見たが、内容はほとんど頭に入ってこなかった。

 赤髪ちゃんはといえば、あれからすっかり元気をなくしてしまい、クライマックスのバトルシーンが始まった時には耐えられないように席を立って、終わるまで戻ってこなかった。トイレだと言っていたが、まあ嘘だろう。

 映画が終わり、感想を言い合うでもなくとぼとぼと帰路につく。赤髪ちゃんがバテないように気を遣いながら、ゆっくりと歩いて駅に向かう。

 あれほど晴れていた空も、今は少しずつ雲の量を増やし始めていた。

「なあ……」

「……なに?」

「一応言っとくが、おれは異世界には行かない」

 それは予想していたことなのだろう。赤髪ちゃんは、何も言わずに寂しそうに頷いた。

「行かないが……そっちの事情ぐらいは、まあ……聞いてやってもいいぞ? 話したいならだが」

 赤髪ちゃんは、歩きながらぽつぽつと語った。


 ◆


 世界には、二つの種族がいた。片方は精霊族で、もう片方が魔族。

 広大な森が広がり、動物がいる世界。精霊族は自然界にプラスの作用をもたらす種族。魔族はマイナスの作用をもたらす種族。

 精霊達は集落を作り、木々や果実、穀物を育て、家畜を飼って暮らす。魔族は育ることを知らないから、精霊たちから奪うだけ。

 一生懸命に家を立てて畑を作って、作物を育てても、収穫の時期になれば魔族たちがやってきて村を乗っ取られてしまう。逆らえば、力と魔法で殺されてしまう。

 追われた精霊達は、魔族が荒らしつくした枯れた土地に追いやられて、そこでまた一から土地を再生させる。生活はずっと厳しくなって、野生の動物を狩って木の皮をかじるような生活から始まって、少しずつ恵みを受けられるようにしていく。

 魔族は奪った土地を食い尽くせば精霊達を探して奪いに来る。いや、探すまでもないのかもしれない。実際のところ、精霊はいつも魔族に生かされているようなものなのだから。穀物が実るのを待つように、精霊が土地を再生させるのをただ待つのだ。

 世界はそうして成り立っていた。

 でも、昔。

 ある時、精霊達は別の世界に助けを求める方法を知った。人間の世界にやってきて、人間を私達の世界に連れてくる。

 村のボディガードとして、人間の膂力は優秀だった。

 なんども魔物を追い返すことに成功したし、ある時は魔族の殲滅に挑むような時もあった。

 ただ、私達精霊の長――女王は、精霊以外の種族が村にいることを快く思わなかった。人間を戦闘の道具として割り切った厳しい掟を作った。

 村がある程度栄えたら、徴兵する為の精霊が人間を連れてくる。その精霊と人間はパートナーになり、村を守る。

 もし人間が倒されたら、その時は村を諦めて逃げる。次の土地がある程度再生し、村ができて、畑に収穫の時期が近づけば、魔族から守るためにまた人間を連れてくる。

 追いかけっこのサイクルはわずかな変化を見せていた。


 ◇


 赤髪ちゃんが初めてこっちの世界に来たのは、今から六年ほど前だった。十歳になり、年老いた先輩の後を継いだばかりだった。

 生まれた時からこっちの世界に徴兵に来る為に育てられていたし、先輩達の残した記録を熟読していたから、どんなに渋る相手でも異世界に連れて行く自信があった。こっちの世界の重力に耐えるため。それから、連れてきた後に一緒に戦う為に、毎日の訓練もかかさなかった。

 異世界に向かう前。

 水晶で見せてもらった顔は、小学生ぐらいの子供だった。

 選ばれる基準は誰にもわからない。ただ、女王様の占術が示したら、絶対にその人間でなければこっちに連れてくることはできない。

 赤髪ちゃんは人間の世界に行って、その少年に会った。

 少年はその誘いに手を叩いて喜んだ。リスクや都合の悪いことは、聞かれるまで伏せるのが先輩たちの残した教訓だった。ただし、露骨に騙すのもいけない。過去、連れて来られた後に精霊たちに反逆した人間は確かにいた。

 その少年は両親に虐待されていた。学校にも行かせてもらっていなかった。

 そういう事情もあったのだろう。赤髪ちゃんの初めての徴兵は拍子抜けするほどあっさり終わり、一日とかからなかった。

 少年は精霊の村に着くなり、すぐに戦士として戦い始めた。赤髪ちゃんも懸命にサポートした。彼は戦いのたびに傷を負い、その度に立ち上がり、魔族が来ない時は必死に剣を鍛えて、何度も村を魔族から守った。

 村の仲間達も、少年が魔族を倒すたびにその活躍を讃えた。その時の少年の顔は、本当に嬉しそうだった。

 やがて少年は、あの魔族の強力な魔法に当って絶命した。

 赤髪ちゃんは泣いた。村の仲間達は誰一人として泣かなかった。ただ、習慣として、村を捨ててそのまま逃げた。

 新しい場所を見つけて、精霊たちはまた村を作り始めた。

 赤髪ちゃんはその時、密かに考えていたことがあった。

 人間が不慣れな魔法に対抗する方法だ。魔法を発動するためにはそれぞれの魔法ごとの術式がある。手印を結ぶものもあれば、詠唱するものもある。強力な魔法ならば道具を介してでなければ発動しないものもある。覚えてもらえば、何が来るのか予測ができるし、きっと魔法にやられる危険はずっと少なくなる。でも、その術式はわかっているだけでも数百を数える。時間をかけて修行をする必要があった。

 赤髪ちゃんは女王に進言した。村作りをしている今の段階で人間を連れてきて鍛えれば、優秀な戦士になる。きっと死ぬことなく魔族を全滅してくれる、と。

 女王はそれを拒否した。魔族も攻めてこない村に不必要な人間がいることが許せないのだ。

 諦めたふりをしながら、次に連れてくる人間を徴兵の準備として尋ねた。

 プロフィールをしっかり覚えたら、女王に無断でこっちの世界に飛び込んだ。

 それが、厳罰の対象になる行動だとわかっていながら。


 ◆


 ……やっぱ聞くんじゃなかったかもしれねえ。

 いろいろあんのな。めんどくさいことって。

 もうちっとくだらねえ内容だったら、断るのも楽だったんだが……。

「それって、おれも赤髪ちゃんも異世界にいったらヤバいんじゃないか? 女王様怒ってんだろ?」

「村には戻らずに二人だけで修行するつもりだよ。それで、ピンチにさっそうと現れる! 新しい人間は連れてこれないから、女王様がどれだけ怒ったってキミは大丈夫。頼らないわけにはいかないんだから」

「それで、おまえはどうなんだよ」

「……はは、最強の勇者様が魔族を全部やっつけてくれれば、きっと許してもらえるんじゃないかな?」

「その様子じゃ希望は薄いんだな。で、村に魔族が攻めてくるまではどれぐらいの期間があるんだ?」

「お、来てくれる気になったの?」

「うわ、やべえ! 雨降ってんじゃねーか」

 赤髪ちゃんの話を聞いているうちに駅に着き、電車の移動も終わって地元の駅のロータリーまで戻ってきていた。

「赤髪ちゃん、傘持ってないよな」

「ないよー」

「しょうがねえ、コンビニの傘は高けえんだが……ちょっと待ってろ」

 おれは駅前のコンビニまで走る。傘売り場には、一つ800円の傘しか置いていなかった。財布を確認すると、後千円しかない。

 ちらっとコンビニのガラス越しに赤髪ちゃんを見た。駅のひさしの下から雨空を見上げている。その様子は、同年代のただの女の子だった。

 あんななりで、ずいぶん抱えてんのな。

 傘を一つ買って赤髪ちゃんの元へ戻る。

「ありゃ、それはもしかして、私は濡れて帰れってこと?」

「二つ買いたくてももう財布が空なんだよ、誰かさんのせいで出費が倍になったからな」

「怒らないでよ、ちゃんと返すってば。まあ、帽子があるから雨はなんとかなるかなぁ」

「おまえにゃ便利な魔法があるじゃねーか」

 どうせ歳食うから使わねーだろうが。

「あ、あれはもうそれほど便利じゃないんだ」

「なんで?」

「こっちで使える魔法は三つまで。もうテレパシーと化石化とガラス修繕で固定されちゃったから、新しいのは追加できないんだ」

「なんつー不便なセレクトしてんだよ、おまえは」

「だって、すぐきみを連れてあっちに戻るつもりだったし。それに……あの時部屋のガラスを直さなかったら、今日のデートはなかったでしょ?」

 赤髪ちゃんは苦笑すると、駅のひさしから歩き出した。

 おれは黙って後ろからついていき、頭上に傘をかかげてやった。

「へ?」

「いや……。いいか、よく聞けよ。コンビニの傘ってのはな。無駄にでけえんだよ。小さくて安いのを置いとくとみんなそっち買っちまうだろ。もちろん品揃えがいいところもあるが、こんな田舎だからな。店のヤツもどうにか儲けようと必死なわけだ。わかったか?」

 赤髪ちゃんは返事の代わりに声を出して笑った。

 一つの傘の下、二人で並んで歩く。

 すぐ隣から甘い匂いが香る。香水かなにかだろうか。

 いつもしつこいように香るので苦手だったのだが、今日のそれは控えめでそれほど悪くなかった。


 ◆ 

 

 駅からちょっと離れると、すぐにのどかな田園風景が広がっている。

 線路脇のボーリング場は二年も前に潰れたままだ。

「おまえ家どこなんだよ。まさか野で寝起きしてんじゃねーだろな」

「家は随分前の先輩が残してくれてるから大丈夫だよ。ずっとほったらかしだからひどいボロ屋だけどね」

「ふーん」

 強く降っていた雨は、徐々に収まってきた。ただの夕立だったらしい。

 こんなことならわざわざ傘なんて買わずに雨宿りしてりゃよかったぜ。

「ねえ……」

「なんだ?」

「……疲れた」

「もう!? だんだん貧弱っぷりがひどくなってねーか?」

「……いやいや、今日はもう歩きすぎてるんだよ。過酷な修行を耐えてきた私じゃなかったら死んでるよ」

「弱……。しょーがねぇな」

 その変で腰かけて休もうかと思ったが、周囲は雨で濡れていて座りたくない。

 潰れたボーリング場の入り口の付近で休むことにした。

 ボーリング場の入り口であるガラス戸はゴツイ南京錠で厳重に施錠されていて入れないが、外側はひさしが出ているので雨には濡れずにすむ。

 喫煙所として使われていたのだろう。入り口の脇に、背の高い石の灰皿と、もうすっかりぼろぼろだが木製のベンチがそのまま残っていた。

「もうちっとでやみそうなのにな」

「ねえ……気のせいならいいんだけどさ」

「なんだよ」

「なーんかいやーな気配が近づいてる気が……」

「そのいやーな気配ってのは、雨の中傘もささずにふらふらとこっちに向かってくる女の子のことかな……?」

 道路とボーリング場の間に広がる駐車場。チェーンが張られていて当然車は一台もない。その広大なスペースを、ずぶ濡れになりながら見覚えのある女の子が歩いてきていた。

 見覚えのある青みがかった黒髪。

 だが、顔がおかしい。変な顔してる。

 いや、パーツ自体は美人のままだが、表情がキマッちまってる。唇がまくれあがって、その間から笑い声とも喘ぎ声ともつかない奇声が漏れていた。

 歩き方も、ところどころで小走りになったり止まったり、ふらついたり、まるきり千鳥足だ。

「赤髪ちゃん……あの人こええんだけど。知り合いなんだろ、なんとかしろよ」

「……やっぱり……。魔族がこっちの世界にこれないのは、世界の空気が合わずにあちこちに失調を起こすから。どうにかして克服したのかと思ったけど、ムリしてんだね。……暴走してる」

「んな解説いいから」

「裏の方に回って逃げて。この世界の重力はきちんとあいつの足も縛ってるよ。きみなら簡単に逃げれる」

 赤髪ちゃんはこめかみに冷や汗を流しながら軽く笑う。

「まるで自分が犠牲になるからって感じの言い方だな。……おまえ、本当は全部計算でやってんじゃねえの? そんなふうに言われたら逃げにくいだろが」

 ふらふらと近づいてきていた女の子――魔族が、後十メートルほどの距離に来たところで腕をふらふらと振り始めた。

「なんだあいつ、踊り始めたぞ」

 そうかと思えば、赤髪ちゃんが血相を変えて傍にあった灰皿を蹴り倒した。倒れた灰皿が馬鹿でかい破砕音を響かせてガラス扉を突き破る。南京錠と枠はそのままだが、ガラスには人が通れるほどの大穴があいた。

「中にっ!」

 いうなり、赤髪ちゃんは破れたところからボーリング場のエントランスに飛び込んだ。

 わけがわからないまま後に続く。扉に残ったガラスが引っかかってシャツの肩口が破れる。

 飛び込んだ直後だった。閃光弾が炸裂したような強烈な光が背後で起こった。

 雨で濡れたアスファルトを、直視できないほどの光がのたうちまわっている。あちこちで火花が飛んでいて、それが雷らしいことがわかった。

 魔族を中心に木の根が這うように広がっていた雷だったが、やがて収束されながらこちらのほうに伸びてくる。腰を抜かすおれの目の前で壁にぶつかったかのようにまばゆく四散した。

 気がつけば、足元に散らばっていたはずのガラスがなくなって、目の前のガラス扉が元通りに修復されていた。

 飛び込んだ直後、赤髪ちゃんが魔法で直したのだろう。灰皿の横たわった部分はそのまま取り込まれてしまって、不思議なモニュメントになった。

「……大丈夫?」

 呆然としているおれに向かって、背後から赤髪ちゃんが訪ねてくる。

「大丈夫じゃねーだろ……。なんだあいつ……なんも言わずに殺しにきやがったぞ」

 場内の方に振り返ると、受付のカウンターに背をもたれて赤髪ちゃんが座っていた。

「びっくりしたね。でも、きっとこれで大丈夫だよ。中に篭ってれば手も足も出ないし」

「んなこと言ってたらおれらも出れねーじゃねーか」

「落ち着いてって。あいつ、別に私達が何かしたからあんなにふらふらなわけじゃないでしょ? 多分、この世界に留まってるだけでダメージがあるんだよ」

「きっととか多分とか、信頼していいだろな?」

「うん、いずれ耐え切れなくなって消えるはず。おそらく……」

「……わざと言ってねーか?」

 不安でいっぱいだが、信頼するしかないんだろう。

 だがまあ、赤髪ちゃんの言うことにも一理ある。力では人間の方が勝るという話だし、ガラスを破られないのならば、特撮でも見るような気分でゆっくり鑑賞してやるのも悪くないか。

 おれは恐る恐る視線を窓の外に写す。

 でかい氷塊が飛んできて、修復したばかりのガラス戸にヒビが入るところだった。

 白目を向いた元美少女が、入り口のひさしの下まで近づいている。

「まずっ! もっかい修復しないと!」

 おれは慌てて受付の方に走り、赤髪ちゃんの腕を握った。

「待てバカ! 何回もやってたら本当にババアになっちまうぞ!」

「だって、他にどうしようもないじゃん!」

「いいから、二階に逃げるぞ」

 ここのボーリング場は潰れる前はかなり遊びに来ていた。二階には広い卓球場やゲーセンがあるし、階段も輪を描くように二つあるので追い詰められる心配もないはずだ。

 だが、赤髪ちゃんは動かなかった。

 ガラスを飛び超える時に切ったのだろう。足から血が流れている。

 ち、しかたない。

 おれは黙って赤髪ちゃんを抱え上げて階段を登る。ことにした、いわゆるお嬢様だっこだ。

 胸元から戸惑うような声が漏れたが無視。階段の途中で足がキツくなった。

「重いぞっ!」

「……それ言わなけりゃ、むちゃくちゃ感謝したんだけどなあ……」

 赤髪ちゃんが太っているわけでもないのだが。

 おれは普段から特別鍛えているわけでもないので、人を抱えて階段を駆け上がるような力はないのだ。

 二階は開けているが、撤収されなかったゲーセンの筐体があちこちに置いてあって、隠れる場所には困らなそうだ。

 奥の方へ進んで、レースゲーム用のでかい筐体の横に隠れた。

「足、大丈夫か?」

「ありがとう……大丈夫だよ。今はちょっと動けそうにないけどさ」

 階下からは、一定の間隔を開けてガラス戸に何かをぶつけるようなでかい音が響いていた。

「ここに隠れていれば大丈夫だと思うか?」

「……正直、隠れる意味はないと思う。あいつ、逃げた精霊を探索したり監視したりする仕事もしてたから、簡単に私の気配を探ってくるよ」

 なるほど、だから映画館でも簡単にこっちに接触してきたのか。

「……あいつの目的は多分私だよ。理性が吹っ飛んで本能的に精霊を殺したがってるように見える。今からでも遅くない。きみ一人でも……」

「バカ……怪我したヤツ置いていけるか。それに、さすがに裏口なんかはしらねえ。逃げようとしたって」

 階下から、がっしゃーんと大きな音がした。

 多分ガラスが破られたのだろう。赤髪ちゃんは大いに取り乱した。

「どどどど、どーしよう! ええと、ええと、先輩達の残した記録によると魔族はこっちの世界にこれないはずだから! ……あ、じゃああれは魔族じゃなくてただの人間?」

「現実逃避すんじゃねえ、あんな人間いねえよ! 言っとくけどその先輩たちのデータはあてにしねえほうがいいからな!」

「ひぐっ……」

「泣くなバカ。さっきはおれだけ逃がそうとしてくれてたじゃねえか。あの余裕はどこいった!」

「だってだって、あんな頑丈なガラス、貧弱な魔族に破られると思わなかったもん!」

「一番貧弱なおまえがそれをいうかね!」

 言い争う声の間に、湿った足あとが聞こえてきた。

「……やっぱりきみ一人で逃げた方がいいよ。あいつが階段を登り切ったらどんな攻撃が来るかわからないし。今なら反対側の階段を使えば……」

 赤髪ちゃんは泣きながらそんなことを言う。

「いや、もういい……わかった」

「……なんで逃げないの?」

「それはだな……逃げる必要がないんだ。冷静になってみれば、万一おれが異世界に行ってもパワーアップするわけじゃねえ。この体で戦うわけだな。となれば、今の状態で魔族の一匹倒せないわけがない。相手はなんもしてねえのに弱ってるし。……そうだろ?」

「……あいつ、魔族の中でも特に強いヤツだよ」

 うすうすそれも感づいちゃいたが。

「つってもさ。……ガキのくせに逃げなかったヤツもいたんだろ」

「やっぱりそうだ」

「……なんだよ」

「んーん、本音を言うと、今回はなんでこの人なんだろうって思ってたけど」

 赤髪ちゃんはこんな状況なのに。涙でぐしゃぐしゃになった顔で幸せそうに笑った。

「……やっぱりきみは選ばれてるんだよ……私なんかじゃなくて、あの世界にさ」

「……言っとくが。異世界に行くとは行ってないぞ」

 おれは側にあったバッティング用のゲームから金属バットを拝借した。

「なあ……相手は一応女の子っぽいんだけど、どの程度殴っていいもんかな」

 赤髪ちゃんは片足で無理に立ち上がると、おれの両肩に手を置いた。

「絶対。手加減なんてしないで。殺すつもりでやって」

「……はい」

 目がマジだ。

「それから……絶対に死なないで」

 これもマジらしい。

「おう……」

 おれは筐体を離れて階段に駆け寄った。手すりから恐る恐る下を見下ろす。

 いた。

 極めて動きは遅いが、確実に階段を登ってきていた。

 もう、後十段ほどで登り切るだろう。迷っている時間はない。

 手すりに片足をかける。相手がこちらを視認する。斜めに宙を飛び、そのまま階段側の手すりに着地しつつ、相手の肩をおもいっきりバットで打ち付けた。

 魔法を使われたらどうなるかわからない。危険性を排除するためには、出会い頭の一発で倒すしかないと思っていた。

 おれはそのまま勢いで下まで転がり落ちる。

 正気を失っていた相手の顔がさらに歪み、何かを叫びながら。階段を駆け上がった。

 仕損じた。

 側頭部を打ちつけることもできたはずだった。直前で見たその姿があまりに人間染みていたので、無意識のうちに加減をしてしまった。

 踊り場まで転がったおれはすぐに、後を追う。

 あれは、ただ攻撃されてパニックになっているようには見えなかった。ずたぼろになった理性の中で、最後の力を振り絞って目的に向かっているような、そんなふうに見えた。

「赤髪ちゃん!」

 階段を駆け上がったところで、魔族が魔法を使うのが見えた。

 爆発による音と閃光、熱風。ちょっと煙との合間にちろちろと炎が見えた。

 爆発はそれほど大きくはなかった。壁を貫くこともなかった。だが、レースゲームの筐体に直撃する直前、確かにその影には赤い髪が覗いていた。

「てめえっ!」

 バットを振りかぶって殴りかかったが、魔族はもうこっちを見ようともしなかった。目的は達したとばかりに膝からくずおれて、そのまま灰か何かのような黒くて脆い物質に変形していった。死んだのか、それともあっちの世界に戻ったのか、判然としない。

 だが、そんなことはどうでもよかった。

「……おい?」

 恐る恐る声をだす。レースゲームの椅子はただの瓦礫になっていてところどころでバチバチとショートしながら、シートは小さく燃えていた。

 周囲に燃えそうなものはない。炎は放っておいてもやがて収まるだろう。

 あいつのことだ。おれを驚かそうしているのだろう。どこまでいっても性格が悪い。

 近くの筐体を覗いていく。

 いない。

 一つ一つ確認するごとに、焦りが増していく。

 足元の瓦礫を避けようとして、短パンの一部が赤く染まっていることに気がついた。

 自分の血ではない。赤髪ちゃんを抱えた時についたものだろう。

 おれは、魔法が直撃する直前に赤髪ちゃんがいたのをみた。あの怪我で、とっさに動けるわけがない。

 頭ではわかっていたが、どうにも受け入れにくい。

 振り返れば、先ほどまであった魔族の粉は幻だったかのようになくなっていた。

 ボウリング場にはおれ一人しかいなくなっている。まるで白昼夢だ。

「……せっかく……ちょっと協力してやってもいいかなって考えてるとこだったのによ」

 これじゃ、もうどうしようもねえじゃねえか。

 しつこくされないのは元々望んでいたことだったはずだ。

 付きまとわれるのも終わるし、日常が戻るだけのことだ。

 つっても、誰がおれの家族の誤解を解いてくれんだよ。

 勝手なことばっかやって煙みたいに消えやがって……。

 しばらく立ち尽くしていた。

 砂と埃のたまった、廃墟のようなボーリング場の二階。

 ちろちろとくすぶっていた炎はいつの間にか消えていた。


 歩きだそうとして、何かが足にまとわりついた。

 それは、2本の白い触手のようだった。出処は、粉々になったレースゲームだ。その瓦礫を掘り起こす。見覚えのある化石が転がっていた。

 化石になった表情がなんだかにやついているようだったので、非常にむかついた。

 瓦礫を戻して、もっかい埋める。一回まで階段を降りたが、触手が何かを訴えるようにまとわりついてきていて、やがてなんだかこっちの生気を吸い取り始めやがったように感じたので、仕方なく戻ってまた掘り起こしてやった。


 ◆


「私、謝るよ」

 大量のスーパーの安売り肉を取り込んで元に戻った赤髪ちゃんはそう言った。

 場所はおれの部屋だ。

 あの後、おれは赤髪ちゃんの化石を回収。ひとまずは金がないので家に帰り、スーパーを回って安売りの肉を40キロ程買い込み(5万程度の出費。しかも自転車で運ぶので何往復もした)、金がヤバいから二度と化石化しないようにと説教をし、ついでに魔法も使わないようにと心配してやり、店の物は必ず金を払って手に入れることを教え、やっと肉を与えた。

「ああ、そうしてくれるとありがたいが……その前にまず」

 おれはなんとはなしに壁についている染みを見た。

「私、本当に嬉しかったから。私がしてあげられることなんて今はこれぐらいしかないから!」

 どうしてこうなったんだ……あれか、肉だけしか与えずに栄養素が偏ったせいか。

「わかった。わかったから、その前にまずだな……」

 目のやり場に困る……羽毛みたいなのがあれば前回のように上手く服も再生できたのか。

「今一階にお母さんいたよね!」

 そういうと、ドアを開けて飛び出して行った。

 おれは「まず服を着やがれっ!」と叫んだがすでに遅く、突然、事件の被害者(だと思っていた)少女に全裸土下座をされたかあさんはほんとうに驚いたようで、全てを理解することを放棄して、ただただ優しく微笑んでいたという。

 しかも、考えなしにただ謝ろうとしていただけの脳筋な赤髪ちゃんのせいで、ファンタジー要素を排した説明は難解を極め、どうしていつの間にか家に上がり込んでいたのか、どうしてこの間は半裸で今回は全裸なのか、そういう事情をかあさんに納得してもらうためには『赤髪ちゃんは実はおれの彼女で、いろいろえっちいことをしようとしてたからこんな状況なんだぜ、ハハハ』という最低な話にする以外に方法を思いつかず、どうにか必死に上手くことを収めようとしたが、本当に、本当にこれしか思いつかず、気がつけばおれは涙ながらに『こんな残念な息子であり、こんな残念な彼女ですが、今後共よろしくお願いいたします!』と一緒になって土下座していた。

 プライド? 尊厳? 恥? もはやねえよ。

 その後、何かを勘違いしたかあさんが市役所に行って入籍届けを取ってきたりしたのも、まあ、頷ける話ではある。

 

 ◆


「ねえ」

「んだよ」

「いろいろごめんね」

「まったくだ。反省しろ」

「ところでさ」

「なんだよ?」

「あの時、なんて言ったか憶えてる?」

「いつ?」

「ほら、ボーリング場の二階でさ『ちょっと協力してやってもいいかな』みたいなこと……」

「言ったな」

「本気?」

「わかんね。ただ、いろいろ考えたんだけどさ……おまえもしばらくこっちで暮らしてみたらどうだ? おれが実際に戦うのってむこう行って戦うってなったとしても、しばらく修行するんだろ? だったら、こっちでそれをやればいいじゃねえか。もしかすると、向こうに行きたくなくなったりするかもしれねえし、実際にどうなるかわかんねえけどさ。おまえだって、戻って見つかるとヤバいんだろ?」

 赤髪ちゃんはしばらく「うーん」と考えていたが「じゃ、こっちのこといろいろ教えてね」と言って笑った。

 

 終わり

 読んでいただきありがとうございます。

 自分としては途中で間延びしてたような気がしますがいかがでしょうか。

 直せやって話ですけど、どのシーンもあったほうがよい気がして削れませんでした。

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