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よくある朝の曲がり角

「あ~ん、どうしていつもこうなるの~!」

 私、ヴァン・ベラ子。近くの高校に通う、どこにでもいる普通の吸血鬼。

 今日もいつものように寝坊で遅刻しちゃった。壊した目覚まし時計も、今日で29,317,932個目。

 やっぱり朝は起きられないな。吸血鬼だから仕方ないよね。

「それにしても、今日も朝日が厳しいな。これじゃあ、どこかで血を補給しないと学校までもたな――!」

「きゃあ!!」

 ドスン!っと尻もちをついた。

 誰? 突然曲がり角から飛び出してくるなんて!

 もうちょっとしっかり前を――。

「ごめん、大丈夫?」

「えっ?」

 私に手を差し出していたのは、見たことのない男の子だった。

 短髪で、整った顔の、綺麗な瞳をした男の子。しかも、同じ学校の制服。

 いやだ……ヨダレが止まらなくなっちゃう。

「ちょっと、お兄ちゃん! あたしは無視なの!?」

「……元はと言えばお前がちゃんと前を見てなかったからだろ? 一人で立て」

「だって、転校初日から遅刻するなんて――って、あーーー!!」

「何だよ大きな声を出して?」

「わ……わ……我が家に代々伝わる“吸血鬼にしか反応しない出前の人が持っている銀色のアレ”がものすごい光ってるー!!」

「な、なにー!? なぜ俺は、自分の妹が変なモノを持って登校しようとするのを止めてやらなかったんだー!」

 なにこの人達!?

 すっごいうるさい!

「って、あーー!!」

「今度は何だ妹よ!?」

「その人の……その人の肩に……我が家に代々伝わる“吸血鬼の力だけを吸い取ってしまう古の地球儀”が刺さってるー!」

「なにー!? お前はそれを小脇に抱えて走ってたってのかー!!」

「ホントだ! すっごい痛い!」

 どうりで右肩が痛むと思ったわ。まさか地球儀が刺さってるなんて思わないもの。

 って、待って? いま、あの子なんて……?

「…え? か、体が!?」

 なに!? 力が入らない!

 肩に刺さってる地球儀が、すっごい回ってる!

「いやあああああああ!!」

 気持ち悪いから思いっきり引き抜いちゃった。勝手に回りだす地球儀とかホラー映画かっての。

「お兄ちゃん離れて! その人吸血鬼よ!」

「なんだってー!? でも、我が家に代々伝わる“吸血鬼の力だけを吸い取ってしまう古の地球儀”が力を吸い取ったんじゃないか!?」

「恐らくね。その人は、吸血鬼の力を失ってただの人間になったわ」

「……え? 私が、ニンゲン?」

 そ、そんな……。

 じゃ、じゃあ……じゃあ……。

「もう、目覚まし時計を壊さなくて済むのねー!」


 こうして、私は人間になった。

 でも、やっぱり朝は苦手だな。

 Fin.

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