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人間、本当に驚いたときは叫び声なんてあげられない


ガサッ!!!


「なんだぁ?なんでこんなところにガキがいるんだよ」


「・・・っ!?」


突如現れたでかい男に俺は驚きすぎてなにもアクションできなかった

逃げることも声を上げることもできなくて

ビクッとしたのち、ただ口をぽかんとあけるだけだった


「おい、坊主お前何してんだ?」


「っぁ・・・・・」


びっくりし過ぎてのどが引きつり声が出ない

いきなり声をかけられたのもあるが

それ以上に男の見た目が俺に恐怖を与える


現れた男は身長は2メートルを超えてそうな高さ

そして幅や厚みは俺の倍以上あるんじゃないかという大男だった

しかもその厚みも脂肪とかではなくがちがちの筋肉

アメリカンフットボールの防具付のような体型をしているのだ

さらに男の腰には男の体に負けないような大きな斧がぶら下がっている

しかも伐採用に使われる斧ではなく、ゲームで描かれるような派の部分が多い斧だ


「もうじき日が暮れるぞ、親はどうした」


「っ・・ぁ・・・」


何か言っているのはわかるがまったく言葉が頭に入ってこない

情けないことに驚きすぎて腰が抜けてしまった

初めての見る武器はあまりに衝撃的すぎた

それが普通に使われていそうなことがますます恐怖を煽る


「お前大丈夫か?というか喋れないのか?」


「ぃ・・・あ、っだぃじょ・・っぶ、しゃべれ・・だすっ」


全然大丈夫じゃないのに大丈夫と言ってしまう日本人の悲しさ


「本当に大丈夫かよ、とって食ったりしねぇから落ち着けよ」


冗談のつもりで大男が言っているみたいだがまったくもって冗談に聞こえない

落ち着かせようと笑いかけてくれるがそれがさらに怖いです

それでも今まで投げかけられた言葉に敵意がなさそうなので

呼吸を繰り返し心を落ち着けることができた



「スー・・ハー・・・もう、大丈夫です」


「それならいいけどよ、それで?」


「それで?」


「何してるんだ?親はどうした?日が暮れるぞ」


見た目に反していい人そうな大男が心配げに聞いてくるが

なんと答えていいか困ってしまう

正直に話していいかわからない。かといってここで見捨てられても困る

大男が言ってたようにいつの間にか日はだいぶ傾いているのだ

ここから人里までどのくらいかかるかわからないが

心配してくれるぐらいなんだから結構距離はあるのだろう


「親はえっと・・・、ここ・・・どこですか」


「なに寝ぼけたこと言って・・・あーお前」


「いたっ!?やめっ!!!」


なにか思いついた大男はあろうことか俺の髪の毛を引っ張った

髪の毛引っ張られただけだったが体格差腕力差その他もろもろのおかげで

ぶち抜かれるかと思うほど痛かった


「おぉわりぃ、真っ黒だな。お前生まれつきかそれ」


「うぅ・・・いてぇ。はい・・・」


「じゃああれか、お前『黒の流れもの』で追い出されたんだろ」


「ながれもの・・・?追い出される?」


「しかし過激派が動いているからって、いきなりこんな山奥に捨てるこたぁないだろうに」


「過激・・・捨てる・・・」


物騒な言葉がぽんぽん出てくる

やっぱりここは俺がやってたほのぼの牧場生活ゲームの世界ではないのか

いったい俺はどこに飛ばされてしまったんだろうか


「あ!いや、まだお前が捨てられたって決まったわけじゃねえって」


「・・・・」


この世界はどんなところなんだろう

さっきは試しても出なかったがやっぱり魔法とかあるのだろうか

魔法・・・使ってみたいなぁ


「ほらっ、もしかしたら親が安全なところに逃がそうとしたとか・・・!」


「・・・・」


「だからっ、えーっと・・・・」


「・・・・」


魔法はいいけど、戦争とかもあるのかな

あぁもしかしたら魔物やモンスターなんていうのもいるかもしれない

俺、そんなモンスターとか倒せる自信ねぇよ

喧嘩とか人殴ったこともないからなぁ


「と、とにかくっ!!!今日は俺の家にこい」


「えっ?」


「なにとぼけた顔してんだよ、日が暮れたらどうするんだ?」


ちょっと思考を飛ばしてたらいきなり大男が声を上げる

確かに夜の森は危険だもんな

この世界の夜の森がどの程度危険なのかは想像もつかないが

こんな大男がいうくらいなんだ。大変危険なのだろう


「お前、大丈夫か?ずっとぼんやりしてるぞ」


「えっと、大丈夫。ただなんか現実味がなくて」


「・・・しっかりしろよ」


「はぁ、でもなんで助けてくれるんですか」


「『黒の流れもの』はこの国じゃ保護対象なんだよ、

 そうじゃなくてもガキを夜の森においておけるかってんだ」


大男はそういいながら俺の腕を引っ張った

いまだに『黒の流れもの』がなにかわからないが

ずっとここにいてもしょうがない

なんとか震える足に力を入れて立ち上がる


「本当にこのままじゃ日がくれちまう、とりあえずついてこい」


「えっと、それじゃあお願いします」


ともあれ俺は今日の寝るところを確保したみたいだ



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