はじまりのリンゴ
勢いとノリで書いていますので読みにくい個所などありましたらすみません
確かにあの瞬間一番強く願ってしまったことだが
それがこの結果というなら神様というものは何を考えているのか
とりあえず一言
「これって食べられるのか?」
どこから説明すればいいのか、というより誰か説明してほしい状況だが
それでも時間は過ぎてしまうので状況整理をしよう
まず俺、高野孝輔(17)は今まで平々凡々に生きていた
バイトはしていないがそれなりに部活と勉強を頑張っていた
そして部活が終わり日が暮れる中、自宅へと向かっていた
とすべて過去形なのは自分の記憶が正しければ、俺はすごくでかいトラックと正面衝突したはずだからだ
なのに気が付いてみれば森の中。体はどこも痛くない
頑張って脳を働かせてもどうしてここにいるのか思い出せない
それどころかほかのことを思い出そうとしてもぼんやりとしか思い出せない
なんだかぼろぼろと今までの思い出をこぼしている感じだ。これが事故にあった後遺症なのか?
それでもあいまいな頭で考えた結果
「これが異世界トリップか」
と現実逃避なんだから開き直りなんだかわからない結論に至った
ちなみに決め手は太陽が光り輝いている隣に土星みたいなものがあったからだ
最初はUFOかと思って目が乾くまで睨みつけたのだが、いくら粘ってもピクリともしない
仕方がないから消えも動きもしない土星を
肉眼でしかも明るいうちからあんなものが見られるなんて
ある意味ラッキーなんじゃないかとわけのわからないことを考えてしまった
「とにかく異世界トリップか夢かわからないけどどうするか」
ぼけっとしていても物事が進むはずもなく
これは自分で動かないとどうにもならないことを悟り周りを見渡す
もし俺が物語の主人公なら伝説の剣や賢者の本やらが落ちているはずだが
「・・・ないな」
ぐるっと見渡し、近くの枯葉もめくって見たものの重要そうなものは見当たらない
うっそうとした木々がどこまでも続いていく
ちなみに30分以上は現実逃避していたので
とっくに神のお告げやうら若き女性の悲鳴などの対人イベントの可能性は切り捨てた
悲鳴が聞こえたところでそれを解決できる力は俺にはないけどな
「じゃあ魔法が使えるとか」
とりあえず思いつく魔法を口にしてみる
有名RPGの魔法やベストセラーのファンタジー小説の呪文を試してみたけどなにもない
ポーズまで決めて口に出したのに・・・
やってみてわかったがあれは結構恥ずかしい
「なんだよ!全然なにも起きないじゃねえか!?」
ちょっと待て、それは困る、すごく困る
普通はなにかあってもいいはずなのに!!!
異世界トリップした時点で普通も何もあったものじゃないが
あいにくツッコミをいれてくれるナビゲーターな妖精もいない
この世界がどのくらいの文明かわからないが
重要アイテムも特別な能力もなにもない俺が生きていけるなんてそんな甘い世界じゃないだろう
「なにかっ、なにかないのか!!!」
さっきまでのどこかのんびりした考えが吹っ飛びあわてて探しなおす
しかしそんな短時間に何かが生まれるはずもなく何もない
それでも俺はあきらめきれず草の根を分けてまで探すがネズミ一匹出てこない
「本当になにもないのかよっ・・・」
どれだけ探し回っても何も見つからず疲れてしまった
どうやら体力強化もされていないらしい
悲しいことばかりわかってしまう
「もうやってられねぇ・・・んぁ?」
疲れと絶望に思わず腰を下ろした瞬間、尻にゴリッと何かが当たる
なんだこれ、なにか入ってるぞ
尻ポケットに手を突っ込んで探ってみれば
「ゲームじゃん」
そこには日本が世界に誇るゲーム会社の携帯ゲーム機が入ってた
俺、ゲームはポケットに入れることないんだけどな
だけどゲーム機の右下部分に貼ってある黄色い鳥のシールは
自分が持っているゲーム機に貼ってあるのと同じで
パカッ ポチッ ティロリン♪
「やっぱり俺のだ」
起動して設定画面を開いてみれば、やっぱり俺が適当に作ったキャラや情報がある
そしてなにより刺さっているソフト
『まったり進めよう!ドキドキ農業&牧場』
これは俺が今ハマっているゲームだ
数あるゲームの中でも俺の一番大好きなソフト
今どきの戦闘やらアクション要素など一切ない超!ほのぼの生活を満喫しよう
主人公になって野菜やら家畜を育てのんびり暮らしていきましょうという
それほどゲーム技術がいらないよが宣伝文句のゲーム
オンライン要素もなく魔法やらのきらびやかな要素がないので
大ヒットするということはないがある一定の層に支持されそれなりに売れているゲームなのだ
「これまだクリアしてないんだよな」
探しつかれた頭と体が勝手にゲームを起動してしまう
こんな森の中に、似つかわしくない機械音が響く
「ようやく種が集まったから品質あげていた途中なんだよ」
ゲーム技術がいらない代わりにこのゲームは時間をとられる
季節によって育てられる作物に毎日肥料を上げ徐々に美味しく育てていくのだがその品質がまあ上がらない
ちまちま季節が変わるごとに作物も植えなおしそしてひたすら肥料を上げる
ゲーム内の年数が10年たっても最高品質に届かないのだ
作業ゲーここに極まりというゲームだが
俺はその少しずつ上がっていくレベルを最高値にするのが楽しいのだ
「あ、リンゴ生ってる、収穫しなきゃ」
ゲーム内の季節は秋
さつまいもやニンジンを育てている横で赤々としたリンゴが実っている
「収穫っと、・・・あーなんか腹も減ってきた」
画面内で収穫している主人公をタッチペンでつつきながら
朝からなにも食べていないことを思い出す
「リンゴうまそー。なんかすごくリンゴ食べたくなってきた」
華美なアクションや魔法がない代わりにこのゲーム
無駄にやたらと収穫物や料理の表現に力を入れている
画面の中には瑞々しそうなリンゴ
「くいてーなー、ほらお前食え」
食べたい欲求を紛らわすように主人公にリンゴを選択して食べさせようとした
その時
ポンッ
「は?」
食べるように画面を選択した瞬間、いきなり画面からリンゴが飛び出てきたのだ
「うえええええええ!?」
なんだこれ!?と思わず出てきたリンゴを転がしてしまった
食べ物は粗末にしないよう生きてきたがこれは許してほしい
だっていきなり手元にリンゴがあらわれたんだ。放り投げなかったことを褒めてほしいぐらいだ
「えっ!?なんでリンゴ?はぁ?あ、出たの!?え、出てきちゃったの!?」
そんな馬鹿な!?と思いつつ画面を見ればひとつリンゴが消化されていて
ありえないと思いつつこれはやっぱり・・・
「あっ、出た」
試しにもう一つリンゴを主人公に選択してみれば
ポンッと画面から美味しそうなリンゴが転がり落ちていった
「なにこれ、ゲームの中のものが実体化するのか?」
落ちたリンゴを恐る恐る拾い上げる
どう見てもリンゴ、美味しそうなリンゴ
匂いを嗅いでみれば甘い香りがする
まさしく採りたて鮮度抜群なリンゴである
「あっ」
そこでひとつ思い出した
トラックを目の前にして強く願ったこと
『まだあのゲーム、クリアしてないのに!!!』
え、なにこれ。その願いかなっちゃったの?
まさか俺、ゲームの続きするためにゲームの中に入っちゃったってことなのか!?
いやでもこのゲームの中にはあんな土星みたいな星なんてなかったし
ゲームの世界なのかはまだわからない
そもそもゲーム中でゲーム機いじるっていうのはどうなんだ?
何一つわからないまま俺はリンゴを二つ手に入れたのだった
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