プロローグ
今年は新しいジャンルにもチャレンジしようということで。
作者は時代的なアレコレの知識が全くありませんので、今後何作か書くのであれば勉強しようと思います。
今作についてはいい感じに脳内保管したり優しく教えてくださると嬉しいです。
パーティは概ね順調だった。
王族、貴族はやはり仮面のように笑みを張り付けているように見えたが、表面的には打ち解けていた。
あなたの娘は美しいとか、息子は立派に育ったとか。
最近はこんな武功を挙げたとか、至って平和である。
首を限界まで稼働させなければ視界に収める事ができないほど高い天井、そこから吊り下げられたシャンデリアの光は煌々としていて、照らすもの全ての人生を祝福しているようだった。
しかし、今日この場でその輝きを最も浴びている人物――ロンゲール・グレイフォードの言葉をもって、周囲に冬の時代が訪れることになった。
「――アンリ、俺はここに、婚約破棄を宣言する」
腰まである黒髪は、男性のそれとは思えないほど艶やかで美しい。絶世の美女の付属品と言われても容易に信じられる。
では、持ち主は顔はどれほど儚いのかと思いきや、彫りの深い顔立ちに意思の強そうな瞳。
美男子――齢二十七でその表現もおかしいが――というよりタフガイという言葉が似合う。
今日は流石に正装だったが、ロンゲールは快活な男であり、服装程度で気質は整えられまい。
婚約破棄という御法度ですら堂々と言い放ってみせた。
「――――」
言葉を失っているのはアンリだけではない。
ロンゲールの兄、つまりグレイフォード第一王子であるエドガー。その父であるオスカー、母のエレオノール。
……名前を挙げていたらキリがない。
この場にいるすべての人間が唖然としているのだ。
「そ、そんな……ロンゲール様……っ」
アンリの生まれたベルナール家は雑に扱われるような家柄でもなく、むしろこの結婚によって周辺の統治も盤石になる。
二人のこれまでの関係も良好だったはず。
それなのに……乱心したかのように見える婚約者に対し、縋り付くような声を発したアンリ。
素朴ながらも気品溢れる女性に対して、ロンゲールの瞳は微塵も揺れることがない。
「お前が触れられるような相手ではないのだ、俺は。お前にはそこの――みすぼらしい男がお似合いだろう」
圧倒的な見下し。ロンゲールが指差す先にいたのは、アンリの幼馴染のオズワルドだった。
確かに王族から見れば「みすぼらしい」風体ではあったが、それでも平民とは比べ物にならない身分ではある。
だというのに、オズワルドは潤んだ瞳で俯くばかりで、とてもじゃないが威厳を感じられない。
「……ど、どうして」
アンリが震える声で、信じられないものを見るという目でロンゲールへ問う。
「どうしてロンゲール様は、このようなことを……っ」
「当然のことだ」
ロンゲールは鼻で笑う。
「俺が人生を共にするのはお前ではない。北にそびえるワナムント山よりも高い志を持ち、我々が未だ全貌を知ることのできない海のように深い心を秘め、それでいて自らの能力を決して鼻にかけない――この者だ」
彼が視線を向けると、他の者も同じように注目し、息を呑んだ。ざわめきすら起こっていた。
それもそのはずである。
ロンゲールが自らの伴侶として熱烈な想いをぶつけた相手というのは――
「……リンタロウ。俺と結婚してくれないか」
――俺だったからだ。
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