やらかし聖女の後始末
モブリーナです。
一人でネゴシオ国に乗り込んだ六歳児です。
一人と言ってもちゃあんと仲間は連れて行きました。
一国を一夜にして滅ぼした聖女を無力化する為に来たのです。
聖教国の軍も周辺の軍も、名のある傭兵団も全て蹴散らした聖女軍。
周囲の国の人々を蹴散らし続けた、つよつよな奴隷戦士達を手に入れました。
あと癒しの力をもつ聖女もね!
今回の戦の趣旨は、聖女の心を折って、奴隷戦士達の所有権を私に移す事にあった。
彼らは強いだけでなく、死を恐れない死兵なのだ。
生にしがみつかない分捨て身の攻撃を仕掛けてくる強さと、聖女の癒しの魔法が巧く嚙み合っているからの強さ。
蘇生ではなく、片っ端から広範囲の回復で全快するんだから、相手をしていた他国の兵士達は絶望的な戦いを強いられたわけです。
怖いね。
でも、その二つを私は手に入れた。
やったね!
帝国軍に一報を入れると、私は聖女と街を巡った。
これから来る帝国軍とは戦わないから、決して逆らわないように、と。
脅える人もいたけれど、混乱しないように説明して回った。
食べ物くれるから、待っててね!と言えば、皆笑顔で頷く。
ちょろいぜ。
そして、一報を入れたその日の夜に、いの一番に駆け付けたのが父である皇帝陛下だった。
第一皇子と皇后陛下を残して、他の皇子達と遠征してきたらしい。
「おお、我が愛しの小夜啼鳥や!」
「お父様、良くいらっしゃいました。まさか此処までいらっしゃるなんて」
「お前だけを死地に送るものか。何かあった時にすぐに助けにいけるようにな、待機していた」
愛情深い!
私は父に抱きついた。
「ご心配をおかけしました。こちらが、聖女のスィスィアです。礼儀作法はあまり習っていないようなので、不敬には目をお瞑りくださいませ」
「良い、許す」
「あ……皇帝陛下。モブちゃんにはお世話になりました」
「も……モブちゃん……とな!」
あ。
不敬?
不敬なの?
「ですから、不敬は…」
「なんっっと愛らしい呼び名なのだッ!」
「あ、そっち」
そっちか。
じゃあ、まあいいか。
「これから聖教国が聖女の身柄引き渡しとか言ってくるかもしれませんけど、全部突っぱねてくださいませ。この子は私の物になったので」
「おおそうか。お前の物ならば、うむ、守ろうぞ」
よし。
だって、苦労して手に入れたんだもんね。
聖女の力は、有効活用しないと。
「彼女は今後も、私と行動を共にしますが、基本的には帝都の大神殿で臣民の為に病気や怪我を癒す奉仕をして貰います。寄付金は全て孤児院に回してください」
「いいんですか?」
聖女にはまだどうするか話してなかったので、驚いたように彼女は胸の前で両手を握って目を潤ませる。
「ええ、勿論。失われた数多の命の分、生きて償い続けてください」
「はい……そうします……」
聖女は間違いを認めたくなかっただろう。
随分迷っていたもの。
でも認めた後は、自分のした事の大きさに苦しんでいたのだ。
多分今でも、人を奴隷とするような輩は死んで当然!と思っているだろう。
でもその裏で罪のない人達まで巻き込んで死なせてしまった事への悔恨もある。
「……一応聞きますけど、聖教国に帰りたいとか、無いですよね?」
「無いです、あんな腐ったところ」
お、おぅ。
急に元気に切り返してきた。
何ていうかこう、自分の犯した罪の大きさに涙する分、腐敗には怒り狂う正義感もあるんだね。
しょぼんとしてた聖女は、今はぷんすこしてる。
「それは後々対処するとして。お父様、聖教国には舐められてました」
「……何?」
皇帝陛下としての凄みのある鋭い目を見ながら言う。
「聖女に毒を盛ろうとしたこと、奴隷制度に関する聖女の訴えを無視した経緯があること、それらの情報をこちらに伏せておりました」
「……ふむ」
「なので、後々あれらの勢力を削ぎたいと存じます」
「ほう」
お父様ったら相槌マシンになってる。
「ですので、情報を書き換えます。表向き聖女は奴隷を解放しただけで、主人殺しは突発的に起きてしまった奴隷の反乱として片付けます。決して狂聖女などではないと」
お父様が頷こうとしたのに、聖女に背中を撃たれた。
「でも、私が原因で、責任もあるので」
もー!
いらんところで正義感を発現させるな!
「良いですか?貴方を信じている信徒たちを、腐った聖教国の下に置いておいても良い事はありません。これはイメージ戦略なのです!」
「イメ……?」
しまった、前世の言葉が出てしまった。
「印象操作が必要なのです。貴女の印象や評判を下げようとして、教会は貴女を教会籍から除籍した挙句に、狂聖女ってよくわからない蔑称を作り出したのですよ。それは聖女に対する信徒の信頼をなくすため。だから、逆を行わなくてはいけないのです。貴女だけは自分の罪を決して忘れては駄目。一生をかけて償っていくのです。分かりました?」
「はい……そうですね。信徒達が騙されているのは良くありません。それに、罪を償える場所を与えてくれたことに感謝します」
聖女も納得したところで、お父様も頷いた。
「分かった。その為の囲いであったか」
「はい。警戒されないようにというのは建前で、政治干渉と戦闘行為を排除したのは情報封鎖でもありました。今後、奴隷戦士たちは私の領へ連れ帰りますので、この地で死んだ事にいたします」
「うむ。そうしなさい。では、帝国軍をここに配置して、その分の魔導車で早速送ると良いぞ」
「はい。十人を残して、それ以外は送ります」
心得た様に、フロレンツが隊長のシュバートを連れて、手配に動く。
「奴隷商人の財産については、影狼に集めさせまして、ラルスに鑑定と目録作りをさせています。一部はこの国の運営資金にして、それ以外はわたくしの物にしますね。あ、ちゃんと帝国軍の行軍費用もお支払いしますから」
「良い、良い」
「お父様には美術品も一個あげますね」
「おお、何と心優しき、天使だ!」
ここまで来てくれたお礼としては安いと思いますよ!
フフン!
「あとお兄様のどなたかに此処を治めて頂きたいのですが、この国をどう発展させるか展望を語ってもらうのを試験としようかと思います」
「うむうむ、良い案だ。おい、早速用意にかかれ」
話を聞いていた兄皇子達が、それぞれ適当に紙を用意してさらさらと何かを書きつけ始める。
それを横目に、私は考える。
どんな風に作り変えるにしても、帝国軍と商人が雇った軍である程度事足りるだろう。
周囲の国は蹴散らされた後だから、襲ってはこないだろうし。
逆に攻め込めば勝てるだろうなあ、とは思う。
けれど、やり過ぎは良くない。
大義名分もないしね。
結局ネゴシオ国を治めるのは、第四皇子のアルフォンスに決定した。
観光地と商業を兼ねる都市にして、賭博場を作る。
カジノいいね!ってなった。
「初期費用は貸し付けますね」
「うんうん、ありがとうモブリーナ」
にこにこっとアルフォンスお兄様は微笑む。
第一皇妃のアンヌ=マリー様に似て柔らかい印象を与える笑みだ。
でもカジノとホテル業をやるって言い出すの面白ない?
私でもすぐは考え付かなかったもん。
「あと、うちの領とは直線距離で南北最短距離だから、帝都からより近いですね。必要な食料品とか生活必需品の貿易も任せてください」
「至れり尽くせりだなぁ」
他のお兄様達も楽しそうに見守っている。
特に諍いが起きる様子は無し。
良かった。
「あと賭博場を開業するのなら、招待状を送ると良いと思いますよ。私に秘策がございますの!」
「おお、どんなだい?」
父が横から口出してきた。
まあいいか。
私は懐から、手帳を出して見せる。
「ふふふ。奴隷商の顧客リストになります!これを使えば金持ちを捕獲できるでしょう!賃貸料として売り上げの一割を要求しますね」
「うんうん。流石はモブリーナだ。感謝するよ」
お兄様は私の頭をナデナデと撫でる。
お父様が羨ましくなったのか、その手を払って私の頭を撫で始めた。
大人気ない!
「では、リストは原本から写した物を後程お渡し致しますね」
「分かった。有効活用させてもらうよ」
カジノかぁ。
今実装できるとしたらルーレットとカードゲームかな。
スライハンドが出来る詐欺師とかには気を付けないとね。
治安維持はちょっと大変かもしれない。
ギャンブルの街だもんね。
詐欺もそうだけど、スリや強盗の類も出るだろうし。
カジノに銀行機能も持たせて、大金持ち歩かせないのがいいのかなぁ。
そもそも富裕層目当ての施設だから、住民達への影響はないと思うんだよね。
後々問題が出たら対応するか。
「あっ、お兄様、賭博場と一緒に競馬を行うのは如何です?我が国は魔導車を使っていますけれど、他の国ではまだ馬車が主な移動手段ですし、競馬を開催しつつ良馬の売買をするのは如何でしょうか?」
「それは良いな。名馬も集まるだろうから、牧場も作って交配も行おう」
「はい。近隣国の馬主も喜んで参加するでしょう。最初は騎手も軍から選ぶと良いかと存じます」
「モブリーナは凄いな」
言ったのは、ローレンツお兄様だ。
「そうだろう、凄いだろう?」
何故か父が偉そうに答える。
まだ人の頭を撫でてる。
ずっと撫でてた。
摩擦熱で燃える。
「綺麗な馬が手に入ったら、モブリーナにあげるからね」
「それは嬉しゅうございます!」
「何!?じゃあ父の所有する名馬をあげる!」
「それは遠慮します。ただで貰う訳には参りませんもの」
今度はアルフォンスお兄様が父にドヤ顔をした。
父はぐぬぬと悔しそう。
「治安維持は大変そうですけど頑張ってください。問題が起きたら相談してくださいませ」
「出来るだけ自力で対処するけど、心強いよ、ありがとうモブリーナ」
でも私にはもう一つ疑問があった。
ローレンツお兄様の、回答が「観光地」しかなかった点。
らしくない。
「ローレンツお兄様は手を抜かれました?」
「流石にバレたね。だって、この国に来てしまったら、モブリーナと離れる事になるじゃないか!」
父にナデナデされている私を攫うようにローレンツお兄様が抱き上げる。
頬ずりされたけど、父が強引に奪い返した。
おい、私は物じゃないぞ!
「いい加減妹離れするのだ!」
「え、父上に言われたくない」
すかさずローレンツお兄様が言い返した。
そりゃそうだ。
一番離れてないのは父だもの。
「私は良いのだ」
「何でですか?」
思わず私が訊いてしまった。
途端に父がドヤ顔を披露する。
「皇帝であるからな!」
「……まあ、それはそうですけれど、子離れするしないとは無関係だと思いますよ」
「なっ!まだ六歳なのだからいいだろう!」
「良いですけど、何れはちゃんと子離れしてくださいませね」
「断る」
断られた。
子供か!
私が子供だったわ。
ふう、とため息をつくけど、父は意に介した風もない。
「では、アルフォンスお兄様以外は、明日撤収いたしましょう。フロレンツとラルスは、財務管理のお仕事があるのでお兄様にお預け致しますね」
「ああ……いや、ラルスは残してフロレンツは一緒に帰らせていいよ。私の側近も来ているからね」
「畏まりました。それではよしなに」
一応お兄様達も側近の方々も、戦争に「参加した」という箔は付く。
実際には戦闘は起こっていないけれど、対外的には激戦を制したのがザイード帝国なのである。
その裏で活躍した私の存在は無い。
調査すれば目撃証言とかもあるんだろうけど、聖女にくっついて話してた女の子、止まりだろう。
私が皇女で、聖女を説得したのを知っているのは死人となる奴隷戦士達だけなのだ。
よしよし、万事オーケー。
奴隷戦士たちはシュバート含む十人を除いて既に夜の内にリヒテンシュタール領へと魔導車で向かった。
状況説明やその他は、同行するフロレンツに託して。
フロレンツも出会った時は7歳だったけどもう九歳だ。
立派な大人……ではないな。
まだ子供だ。
けれど随分としっかりしてるので大丈夫。
翌朝、私は皇帝陛下専用の魔導車に乗せられて、今馬車モードになってる車に揺られている。
お兄様や影狼、奴隷戦士達もそれぞれの馬車に乗っていて。
歩兵達と領民となる予定の奴隷は徒歩だ。
道々食べ物を与えられつつ、大人しく歩いて領へと向かうだろう。
特に繋がれているわけではないから脱走するのも自由なんだけど、食糧難で食べ物がないひもじさを体験した後では、ご飯くれる人の存在が有難いから離れないと思うな。
で、皇帝専用車。
ごてごてに飾られてるかと思いきや、そうでもない。
壁には武具がかかっていて、どれも使う為の武器だ。
何本もないと、折れたり、刃毀れして切れ味が鈍ったりした時困るもんね。
執務机に書類もあった。
そして端っこの方に小さな寝台と絨毯。
毛足の長い絨毯のエリアがあるので、私はそこに寝そべる。
あ、ここ、私の為の場所なのかな!?
ペットの寝台みたい。
うつ伏せに寝転んで、本を読んでいると父が私の側にやってきて、父も同じように床に座った。
「よく、頑張ったな」
そう言って、大きな手で頭を撫でる。
何だかこう、やっぱり子供だっていうのもあって、褒められるのは嬉しい。
えへへ。
嫉妬したり疑心暗鬼になったり怖れたりしそうな事してるのに、父は親として変わらない愛情を持ってくれている。
かなり、寛容なんだと思う。
ありがたや。
「死ぬ可能性は、無かったのか?」
「うーん。一割以下、といったところでしょうか。聖女は善人なので絶対に子供である私を殺すような人ではないし、従っていた奴隷戦士たちは命令無しで動く人々じゃないですし。いざとなったらリィエがわたくしだけでも助けてくれたと思います」
「番か」
複雑そうに、眉をきゅっと寄せて父が言う。
番だけど、私には分からないし、保留なんだけど。
「ですね。その感覚はわたくしには分かりませんけれど」
「一生!分からなくて良い!」
「あ、はい」
人間て獣人と違って、番って言われても分かんないって聞いてたけど、マジ分からん。
でも今回頑張ってくれたから、リィエフォンも誉めてあげないとな、と思う。
「今回の戦、何処まで読めていた?」
「最善の最善で動けたと思いますけど、時機がズレていたらもっと悲惨になっていたかもですね」
反乱から既に半年経っていた。
街の奴隷や商人が雇った軍隊の何割かは戦で死んでいるとはいえ、この都市に一次産業をする人が少ない。
つまり、元々食料を生産する機能に欠けているのだ。
「本当は彼女達をネゴシオごと囲んで、飢えるのを待つだけでも事態は収束したと思いますよ」
「ふむ、何故そうしなかった?」
「勿体ないからです」
奴隷達は働かず、食糧難に陥ると何が起こるかと言えば、暴動、または周辺国への襲撃。
けれど、聖女はそれを絶対に許さない。
結果、抑え込むためには殺すしか選択肢がなくなってしまう。
定期的に食料が届いた時は良かった。
戦を知らない遠くからの商人が訪れたり。
戦に来て返り討ちにした軍人達の兵糧を奪ったり。
都市にある大量の備蓄を何とか食いつないで。
でも、それも終わりに近づいてたんだよね。
「聖女がか?」
「聖女も奴隷戦士も、わたくし欲しかったんです」
聖女ってそうそういないし、優秀な力もあるしね!
けれど、聖女の居る生活に慣れるのはあまり宜しくないっちゃ宜しくない。
帝国で聖女依存が始まるのは避けたい。
だから私が連れ歩くの。
「聖女は最後まで生き残るだろうから、捕獲すれば良かったのではないか?」
「うーん。餓死の最終段階にきちゃうと、自滅を待つことになるんですけど、その過程で多分聖女は使い物にならない程狂ったんじゃないかと思いますよ」
「何故だ」
彼女は善人だから。
「だって考えてもみてください。奴隷という身分から解放してあげたいって解放した人々を自らの手で殺すんですよ。結局『奴隷で居た方がマシだった』って事になるでしょう?彼女の善意が、主人も奴隷も皆殺しにしたってなったら、多分耐えられないんじゃないかなぁって思います」
仕方ないか☆って思えるとしたら、その人は別に善人ではないと思う。
「ふむ、そのようなものか」
父はその辺仕方ないなって割り切れるんじゃないかな。
「あと、もう一つの可能性として。危ない人間が聖女へ接触したら詰んでたと思いますよ。彼女は善人だから、善なる行動をさせれば良いんです。誘導しやすいのですよ」
「ふむ」
「実際は善い事じゃなくて構わないんです。例えば『隣国にも奴隷はいるから解放してあげましょう』と言われれば、絶対ではないにしろ動いた可能性は高いです。その過程で多分、奴隷達による略奪と凌辱が行われて悲惨な結果になるでしょうね。でも聖女の耳にさえ入らなければ良いんです。そうして侵略を繰り返すような人間がいたとしたら、危なかったですね。あ、これはあくまでも可能性の一部ですけど」
実際に八割がたこれで聖女はホイホイ説得(という戦争)を行いに隣国へ行ったと思う。周辺国には抗う兵力はもうないので、従うしかないんだけど、大人しく従うかは分からない。
もし従った場合は、奴隷の数が膨れ上がって自滅の速度も上がる。
けれど多分、争いを起こしたい人物がいたら、食料の供出をその国に交渉して延命させるだろうしね。
などなど、ちょっとした戦国時代に突入していたのではないでしょうか。
「だから、無事に終わって良かったですよ。周辺国は特に帝国に感謝してもらわないと」
「帝国というより、お前にであろう。我が宝物や……」
父がまた頭を撫でる。
何だかだんだんと眠くなってきた。
ふあ、と欠伸をすると父が抱き上げて、小さな寝床に載せられる。
「疲れたであろう。眠るが良い」
「はい……おやすみなさいませ、おと…さま……」
優しく優しく、宝物って言葉通りみたいに優しく頭を撫でられる。
気持よさにそのまま私はぐーすかぴーと寝こけた。
そして、変な時間に目覚めた。
むくり、と起き上がってドアの所にある小窓を見れば、まだ暗い。
深夜か早朝かわからないけれど、室内灯も少し暗めにしてあるようだ。
父を見れば、長椅子から組んだ長い脚をはみ出させて横になっている。
床に面した左腕には剣が挟んであり、瞬時に戦えるようにしているよう。
おお……カッコイイ。
初めて父をカッコいいと思った瞬間。
いや、顔も容姿もかっこいいんだよ?
アラフォーだけど、精悍で美しい顔立ちでまだ皺もない。
うかつに近寄って切られるのも嫌だから、小声で呼びかける。
「おとうさま…」
「……ん、どうした?モブリーナや、悪い夢でも見たか?」
ぐっすり寝ているのではないかと思ったけど、違った。
目を瞑っていただけだと言われても、信じる位にすんなりと目を開けてこちらを見る。
「お父様と一緒に寝てもいいですか?」
「ああ、いいぞ。こちらにおいで」
何となく。
この世界に来て家族と一緒に寝たのって多分赤ちゃんの時くらい。
起き上がった寝床から降りようとして、ぽろりと零れた何かが目に入った。
豚の縫いぐるみと熊の縫いぐるみ。
何時の間にかセットされてた小さな頃からの贈り物。
それに、使い古した私の毛布。
捨てるって言ったのをイヤイヤって離さなかったやつ。
綺麗に洗われて、今も現役。
小さいから使うのはお昼寝の時が多いけど。
お母様から貰ったヘンテコな毛布。
こんな物まで用意されてたなんて、知らなかった。
私が父の許に歩いて行くと、少し上半身を起こして、右腕に抱き上げられる。
そのまま元の位置に戻った父の腕の中で、じんわりと噛みしめた。
親の愛って良いよね。
無償の愛ってよく言うけど、限りがあるって知ってる。
甘えられる時間だって少ない。
ちゃんと親孝行しますね。
心に誓って、私はまた眠り始めた。
奴隷や差別等、色々な出来事が転がってますね。皆様にも色々なお話が聞けて大変参考になります。いつもありがとうございます!多分?今後の展開でガチ戦争は一回だけであとは平和である予定。
獣人国編も三話程度書いたので、それにて一旦終了と言うか、終了はしませんが、モブちゃんの大好きな乙女ゲーちっくなお話とか単話で書く感じ…でしょうか。
人物紹介も更新のたびに少しずつ人数増えてます。
あと前回の感想で聖女は唇尖らしてる場合じゃないと突っ込んでくださった方、鋭すぎて脱帽です。描写してないのに読み取られてしまった。今は素直に言う事聞いてます聖女!勉強して自分のいたらなさに反省する日々。
ちょっと訂正をば。
獣人国は今後UP予定です(分かりにくくて済みません)