異世界転移したらすぐ終わった話
仕事帰りでいつものようにバスに乗ったとき、日本語が話せない外国人がバスに乗ろうとしていました。
運転手に行き先を尋ねているような感じでしたが、運転手は面倒臭そうな表情で「何を喋っているのか分からない」と日本語で答えていました。
ちなみにこのバスには外国人が乗ることが頻繁にあって、その行き先はきまって私が降りるバス停の近くにあるホテル。そしてバス停の名称にはがっつりとカタカナが入っています。
外国人が話した言葉の中にそのカタカナが聞こえました。
こういう場面によく出くわします。英語の話せない私はスマホの翻訳アプリを起動して、『日本語⇔英語』の設定で〇〇ホテルに行くのかを尋ねる英文の画面を見せて話しかけました。
私が差し出した画面を見た外国人、日本語も英語も分からない人だったんです。画面を見てくれたものの『分からない雰囲気』を感じました。
何処の国の言葉を話しているのか分からなくて翻訳アプリの設定も出来ず、結局その外国人はバスに乗るのを諦めて去ってしまいました。
翻訳アプリに頼らず、バス停の名称を口頭で伝えて手招きすれば良かったと、後になって気付きました。
前置きが長くなりましたが、そのときに浮かんだ物語です。
気が付くとオレは原っぱに倒れていた。上体を起こして周りを見ると、遠くに木造の家が数軒建っているのが見えた。
さっきまで職場の自席で仮眠をしていたはずなのに……そうか、夢を見ているんだな。空にはドラゴンみたいな生き物が飛んでるし、月みたいなデカい星が三つ見える。現実なわけない。
また眠れば職場の自席で目が覚めるんだろうけど、眠気はないし起きて村っぽいところに行ってみるか。
オレは立ち上がって村へと歩き始めた。
村に着くと村人が三人で立ち話をしていた。
ファンタジーな夢ならエルフやドワーフ、なんならオークでも出てくれそうなのに、普通の人間だった。まぁ危ない目に遭わないに越したことないか。いくら夢でも怖いのは嫌だしな。
「こんにちは」
少し離れたところから声を掛けながら近づく。
こっちに背中を向けて話していた三人は突然の声に驚いたのか凄い勢いで振り向いた。
「□□※△※△△!!」
ん? 何言ってるか全然分からない。言葉が通じないのか?
もう一度、にこやかな笑顔で話しかけてみよう。
「こんにちは。ここは一体どういう場所な……ん?」
右の腹に熱さを感じて見てみると、細い棒が刺さっていた。
「いっ、、痛ってーー!!!」
痛みに耐えられずしゃがみ込んで、棒を抜こうと握った瞬間に気付いた。刺さっている棒の反対側に羽根が付いていることに。
「…これ……矢か?」
顔を上げて正面を見ると、一人が片手に弓を持っていた。反対の手で次の矢を取り出している。
他の二人はオレの左右に立って──
剣を振りかぶっていた。
人か人ではないものかは関係なく、『意思疎通が出来ない』なら怖い存在かもしれない。
そして、言葉が通じないだけならまだしも、話しかけた『友好的な言葉』がその世界では『攻撃的な意味の言葉』だったりしたら……
そんなことを考えてしまいました。
外国語でも違う意味になる言葉はありますし、日本語でも方言で違う意味になる言葉があります。
転生物の作品で『言葉が通じる』って、説明文を加えたらクドくなるかもですけど大事な要素ですね。
逆に『ただの挨拶』が『熱烈な愛の言葉』だったパターンも考えましたが、都合の良すぎる物語に思えたので書くのやめました。




