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1話


むかしむかしあるお寺に3人の修行中の小僧がいました。


3人のお坊さんはとにかく修行が大嫌いで和尚さんの目を盗んでしょっちゅう修行をサボっておりました。


おや? 今日も朝から修行をサボって仏様の前でライブを行なっているようですね。彼らはどうも最近ロックミュージックにハマっているようで


 

 ちょっと覗いてみましょうか……

 


「OH〜 ユーラブミー♪」


 大部屋の真ん中で熱唱をしている白い袈裟を着たボーカル担当は『ちんねん』。じゃがいもみたいなまん丸の頭、太っちょな体型が特徴な小僧さんです。能天気で食いしん坊、悪戯好きな性格、それ故いつも和尚さんの頭を悩ませている元気な10歳の男の子です。今日も心を揺さぶる歌声を仏様の前で披露しています。


 あと後ろで熱心に音楽に合わせ木魚をバチで殴っている男の子、そして箒をギターのようにかき鳴らしている男の子…… まぁ、こいつらはモブなので『小僧A』、『小僧B』としておきましょうか。小僧ABはちんねんの歌声に合わせて楽器を弾き鳴らしながら、頭を揺らしておりました。



「ふぅ〜 最高だ!」


 本編20曲が終了し、アンコールへ突入する時でした。察しの良い小僧Aがあたりを見渡しながら恐る恐るちんねんの肩をたたきます。


「そろそろ和尚さんが起きちゃうよ。掃除をしているフリをしないと怒られちゃう」

「ボルテージが最高潮の中やめられるものか! 無理な話だよ小僧A、最後までライブをしないとファンに申し訳ないだろう?」


 ビビリな小僧Aとは違いちんねんは度胸があります。


 でもこの発言を聞いた小僧Bが目を泳がせました。


「でもちんねん……和尚さんに見つかるとまたどやされちゃうぞ。この前だって『オールナイトライブ』がバレて大変だったじゃないか……。俺はもう嫌だぞ、34時間も座禅組まされるの」


 生意気にも小僧Bの分際でちんねんの志を阻止しようと試みます。だが、ちんねんのソウルはこの程度では強請ゆすられません。強固な意志を持っているちんねんは他モブ共とはハートが違うのです、ハートが。


「座禅が怖くて歌が歌えるか!! そうだろ、小僧A B! おいらのロックンロールは何者にも負けやしないっ!」


「やめてよぉ、僕らの名前を一緒にしながら省略しないで……」

「そうだぞちんねん! ちんねんの気持ちもわかるけど、俺らをABで括るな。ちゃんと一人一人名前で呼べよ!」


 ABのいうことなんて全く無視して、アンコール一曲目「The Last Buddhism」に突入したその時でした。ごそ……っと廊下から物音が聞こえてきました。


「しっ! ちんねん、和尚さんが来たよ!」


小僧Aがちんねんの肩を叩き、静止させます。ほんの暫くすれば、人影が現れました。ツルツル頭(自然)をした和尚様の登場です!



「「「アザーっす、和尚さん。アザーっす!!」」」


 3人が整列し、和尚さんに挨拶を飛ばしました。和尚さんはそれを見て満足気な表情を浮かべ


「熱心に修行しているようで何より」


 と一言。なんとか、3人がサボっていたことはバレていないようです。3人は和尚さんに気づかれないようふっと肩をなでおろしました。


 和尚さんはちんねんに目をやり「ところでちんねん」と声をかけます。ちんねんは背筋を伸ばし「はいっ!」と元気の良い返事を返しました。


「はっ、なんでしょうボス! 仰せのままに!」


「先日お願いした『アレ』はちゃんと準備ができているか?」


「はっ、もちろんでございます! この前、私めが発注いたしました! 今日のお昼過ぎには届くかと思われます」


 得意げな表情のちんねんに、和尚さんは「そうかそうか」と頷き。


「なら良い」


 と言い残して、部屋を出て行きました。


 和尚さんの姿が完全に見えなくなったのを確認した3人は「ふぅー」っと息を吐きました。


「危なかったねえ、ちんねん。危うくサボってたのバレるところだったよ」


 とAが言うと、ちんねんは分が悪そうに「お陰様でアンコールが台無しだぜ」とこぼしました。その様相を見ていたBが何かに気づきちんねんに声をかけます。


「そういえば、ちんねん。和尚さんが言ってた『アレ』って一体何のことなんだ?」

「あー確かに。何か頼まれたの? 僕もちょっと気になるかも」


 怪訝なABに対しちんねんは「大したことねーよ」と言いました。


「和尚さんからこの前『お札』の注文を頼まれたんだよ」


「お札?」とAが首を傾げます。


「あれ? もうお札の在庫が切れてたっけ?」


「いや、普通のお札じゃねえ。あの『念じれば全ての願いが叶う』と言われる『あのお札』だ」


「「ええー!?」」


 ちんねんの発言にABは驚き目を合わせました。驚き桃の木山椒の木という感じです。


「理由はわからねえけど、この前和尚さんに頼まれたんだ」


「でも『あのお札』って、そんな簡単に手に入るものなの?」

「そうだぞ、ちんねん。願いが叶うお札なんて、注文して手に入るものなのか?」



「俺もよくわからねえから、下町にある魚屋に発注してきた」


「「えぇ……」」

 

 ドン引きするABを傍目に「んなことどうでもいいだろ」と肩を揺らすちんねん。魚屋はちんねんの無茶な注文になんとか対応しているようです。


「さぁーって、お札よりもライブだライブ! まだまだ歌って踊りまくるぞー!!」



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