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電脳アーカイブ・メイカー』・ ω・つ #AI小説

電脳アーカイブ・メイカー』・ ω・

**舞台設定:**

2185年、垂直都市ネオ・サッポロ。廃棄されたデータの山から価値あるメモリーを発掘・修復する職業「デジタルアーキビスト」が台頭している時代。


**主人公:**

名前: 霧島コト (25歳)

職業: 見習いデジタルアーキビスト

特徴:

- 古いデータを「触れる」特殊な感覚を持つ

- サイバネティック義手を使用

- アナログな紙の日記を書く変わり者


**重要な設定:**

- 人々の記憶はクラウドに保存されるのが当たり前の時代

- 廃棄されたデータの中には、時として危険な真実が眠っている

- データ修復には「感情」の理解が必要


**ストーリーの核となる要素:**

- デジタルとアナログの境界

- 失われた記憶の価値

- 技術の進歩と人間性の相克


**キーアイテム:**

「メモリー・レストアラー」- 壊れたデータを修復する特殊装置。使用者の感情を同調させる必要がある。

データ墓場の空気は、いつも金属と埃の匂いが混ざっていた。コトは息を吸うたびに、その独特な空気が肺の奥まで染み渡るのを感じる。頭上では無数のデータケーブルが蠢き、その青白い光が彼女の顔に揺らめく影を落としていた。まるで深海を泳いでいるような感覚。


左手の義手が微かに震え始めた時、コトの心拍が一瞬早くなった。これはもう身体の一部となった感覚器官が、何かを見つけた合図だった。義手の中を流れる生体電流が、彼女の神経を細かく刺激する。


「ここ...」


積み上げられたデータキューブの山に手を伸ばした瞬間、鮮烈なイメージが意識を貫いた。満開の桜の下で笑う少女。風に舞う花びら。母親らしき人物の温もり。そして突然の暗転—。コトは思わず目を見開いた。データの中に潜む違和感が、彼女の直感を刺激する。まるで完璧すぎる絵画のような、どこか人工的な温かさ。


「また変わったものを見つけたね」


突然の声に振り返ると、先輩アーキビストの榊原が立っていた。完璧に整えられた身なりと無機質な表情。彼はコトの手元の紙のノートを眺め、微かに眉を寄せる。


「デジタル時代に紙とペン。君の非効率的な趣味は相変わらずだね」


その言葉にコトは微笑んだ。確かに非効率的かもしれない。でも、万年筆の先から滲む黒いインクには、デジタルデータには無い温かみがある。紙の繊維に染み込んでいく様子は、まるで記憶が心に刻まれていくようだった。


「感覚を信じているんです」コトは答える。「データは完璧すぎる。でも人の心は、もっと曖昧で不完全。その不完全さにこそ、私たちの本質があると思うんです」


修復室に戻ったコトは、深いため息をつきながら「メモリー・レストアラー」- 壊れたデータを修復する特殊装置の前に座った。装置から放たれる青白い光が、彼女の疲れた表情を照らす。発掘したデータキューブを接続すると、ディスプレイに映像が流れ始めた。


少女の笑顔。満開の桜。幸せそうな家族の団欒。

しかし、その度に違和感が増していく。


コトは目を閉じ、義手をコンソールに置いた。生体電流が装置と同期し、彼女の意識がデータの海へと沈んでいく。そこで感じたのは、表層の幸せとは裏腹な、どす黒い感情の渦だった。


「嘘...」


彼女の喉から小さな声が漏れる。データの深層で見つけたのは、明らかな改ざんの痕跡。幸せな記憶の下には、誰かが必死に消そうとした悲しみや怒りが潜んでいた。その生々しい感情の欠片が、コトの心を掻き乱す。


窓の外では、人工雨が降り始めていた。ガラス越しに見える雨粒は、まるでバグったデータのように不規則に落ちている。ネオ・サッポロの夜景が、無数のデータラインの光で彩られていく。


コトは自分の義手を見つめた。事故で失った左手の代わりに得たこの感覚器官。時として呪いのように感じられる能力。でも、だからこそ見つけられる真実がある。


紙のノートを開き、万年筆を走らせる。インクが紙に染み込む音が、静かな部屋に響く。


「記憶の改ざん...家族ID:2185-KR47。表層データに人工的な幸福記憶の上書き。深層に抑圧された感情コードを確認」


書き終えると、コトは天井を見上げた。目の前には長い夜が待っている。改ざんされた記憶の真相を追う夜。しかし、それは彼女にとって使命のように感じられた。


雨音を聞きながら、コトは考える。デジタルの海に溺れそうになる人々の記憶を救い出すこと。それは時として孤独な作業だ。でも、この左手が震える限り、彼女は記憶の海を泳ぎ続けるだろう。


そう、明日もまた、失われた真実を求めて—。


部屋の明かりが微かに揺れる中、コトの瞳には決意の光が宿っていた。

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