161-165
161階段を降る
プラットフォームの
階段を降る
足を並べて
降りれはしない
手を並べて
降りる不格好な
シュールレアリスム
首を傾げて
降りる
不安な予告手紙
階段を急ぎ足で降りる
日常
と
隣り合う
非日常
162錆びた釘
クッションに
ハックションして
河童の頭に
カッパーの皿を置いて
カエルに
変える魔法を唱えて
ハックションに
クッションして
カッパーの皿を
河童が清流で洗って
変える魔法を
カエルが唱える
オタマジャクシのような
音符のような
呪文に錆びた釘を打つ
針金人形が恋をする夏
163ガラスの瞳
緑の瞳が考え込んでいる
青い瞳が泣いている
赤い瞳が笑っている
黒い瞳が白い瞳になりかけている
透明なガラスの瞳が病んでいる
混沌とした明白に
カラスの空の成り立ちを
ステンドグラスのような瞳で
語るのは年老いた小人の絵
164聖痕
柔らかな川の水
溶けて落ちる太陽
空は幕を下ろし
見渡す限りの灰色の大地
汚れた少女の胸にある小さな聖痕
少女は川の水を飲む
神は怒りてぼくは祝福を
165目薬
逆さまの現実
鉄棒に足をかけて見える
空想
隣り合う星と地べた
雲が水の中で漂う
金魚鉢から竹が生え
会社や学校がどこまでも
遠くて辿り着くことはない
口に吸い込む声の色
耳から出る気持ち
夏が汗を出す
涙から目薬