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古塔の中へ

「うん? でもこれって……逆に好都合なんじゃ」


「どういうことです、トート様?」


「考えても見てください。皇帝は街の機能を停止させたんですよね?」


「そうですね。有力者をかたっぱしから投獄したわけですから……」


「ってことは、監獄の警備もテキトーなんじゃ?」


「あっ、なるほど」


「指揮官がいなければ、警備も組織的な動きは望めない。トート様がいうように、今って閣下を助け出すチャンスなんじゃない?」


「皇帝の策略の穴をつくとは、さすがトート様ですね」


「穴しか無いんだよなぁ……」


「まぁ、それはそうなんですけど……」


「それなら、さっそく古塔に行きましょうか」


「古塔ってたしか、フンバルドルフの町外れにあるんですよね?」


「えぇ。フンバルドルフは旧市街から年輪を重ねるように大きくなった都市ですが、塔は新市街の端にあります。ここからだと、ちょうど街の反対側ですね」


「ふーん……」


 エルの話を聞いた東都は、何か訝しむような素振りを見せた。

 その態度にエルは引っ掛かりを覚えた。

 しかし、それをほどく前に彼らの間に兵士が割って入ってきた。


「あんたら、あそこに行くつもりなのかにゃー?」


「え、えぇ」


「それなら、いいことを教えてやるわん」


「いいこと?」


「伯爵たちが入れられた古塔は、入口がいくつもあるわん」


「主門は見張りがいて、許可がないと入れないぴょん」


「あら、一応見張りがいるんですね」


「真正面から入るのは愚策ですね。むむむ……」


「けど、古塔は古いせいであちこち穴があいてるわん。少し高いところにあるけど、西の壁に空いた穴は、ちょうど人が入れる大きさになってるわん」


「なるほど。正門が無理なら、そこから入れそうですね」


「修理のために石工(せっこう)を呼んだけど……」


「たぶん、まだ壊れたままだと思うぴょん」


「この街の状況をみるに、直ってないだろなぁ~……」


「ですね。我々にとっては好都合ですが」


「あんたたち、頑張ってくれだわん」


「みんなを監獄から出して、ベンデルドルフを元に戻して欲しいぴょん」


「兵士の皆さん、ありがとうございます。」


「伯爵には獣人が攻めてきたときに世話になったからにゃー」


「これぐらいじゃあ、恩返しにもならないわん」


 伯爵への感謝の言葉が兵士たちの口にのぼる。

 もっとも、語尾のせいで台無しだったが。


「それじゃあ行ってきます」


「うまいことやれだにゃー」


 東都たちは広場を離れ、町外れの古塔に向かった。

 古塔が建つ場所はそこまで遠くなかった。

 ほんの10数分歩くと、黒ずんだ石の塔が見えてきた。


 古塔を見た東都は、首をかしげてつぶやいた。


「さっきも思ったんですが、やっぱり妙ですね」


「妙……とは?」


「旧市街の中に無いところです」


「それが何か?」


「旧市街は丘の上にあるんですよね? 塔なら小高い丘の上に作ったほうが眺めが良くて良いじゃないですか。なんでこんな外れに作ったのかなって」


「あっ……言われてみると、たしかに奇妙ですね」


 東都の言うことはもっともだった。

 塔なら丘の上に作るべきだ。

 しかし、目の前の塔はなぜか平地にある。


 それはまるで、「ここ以外では駄目だ」と言っているようだった。


「まぁ……気にしても仕方ないか。兵士が言ってた穴を探しましょう」

「はいっ!」


 この塔が建てられてから、どれだけの時間が経っているのだろう。

 石で作られた古塔の表面は、長年の風雨と汚れで黒ずんだ色をしている。


 東都は建物の影から古塔の主門をみる。

 苔むした石の門には、広場にいた兵士と似た格好をした門番がいた。


「門番……か。広場の兵士さんが言っていた通りですね」


「できるだけ強行突破は避けたいですね」


「冤罪だったならまだしも、本当の犯罪者になったら世話ないものね」


「回り込んで穴を探しましょう」


 東都たちは町にある樽、箱、テントやひさし、あらゆる物陰を使って身を隠し、塔の正面から横に回り込んだ。


 塔の側面につくと、東都は塔の壁の少し高い所に穴が空いているのを見つけた。


「あ、あれかな?」


「意外と大きいですね……よく塞がずにほうっておくものだ」


「それだけ使ってなかったんでしょ。この塔に囚人が入るってめったにないもの」


 東都は穴の下にいって見上げる。

 穴の大きさは、ちょうど人間の胴回りくらいはあるだろうか。


 高さは両手を上げたら指の先がつくかつかないか、という程度だ。

 彼の身長は160センチ強だが、背伸びすればギリギリ登れるかもしれない。


「すいません、お願いします」


「おまかせを」


 東都はエルに乗って穴の中に潜り込んだ。

 彼のいる場所の周りは、穴から光が入ってくる光で多少明るい。

 だが、塔の中はぽつぽつとある松明の他に照明はなく、ほとんど真っ暗だった。


「わ、ホラーゲームに出てきそう……」


 立ち上がった東都は、不注意で足元にあった石ころを蹴飛ばした。


<コン、コンー……コンーー………>


 石が闇の中を転がり、音が塔の中を反響する。

 音の間延びの仕方からすると、中は思ったよりも広いようだ。


「……結構大きいみたいだけど、だめだ……何も見えない」


 自分の周り以外は真っ黒で、空間が抜け落ちてしまったようだ。

 闇は根源的な不安と恐怖を東都の心に掻き立てる。


(あー、こういうタイプのホラーはダメだなぁ。 暗いのはまだいいけど、夜の海の中を潜るとか、「広い」までプラスされるとヤバイんだって!!)


 東都が体をこわばらせていると、背後でずさっという音がした。

 エルとコニーたちが中に入ってきたのだ。

 見慣れた顔が近くにあると、すこし安心した。


「おっと、思った以上に暗いな」


「エル、あそこにある松明をもらっていきましょう」


「僕が行きますよ」


 東都は松明を求め、闇の中を手探りで進む。

 真っ暗な空間を一歩進むごとに、黒い油の中に沈んでいくような錯覚を覚えた。


「……?!」


 踏み出した先に床がない。

 それに気づいた時には、すでに彼の体は宙に(おど)っていた。




SOMAみたいな深海とか、夜の海中探索があるゲームはマジで無理。

Fallout4とか3でも、海中の探索は無理だったわ。

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