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出場準備(2)

「さて、ルールを説明するぞ。っても、今季(こんき)のコロシアムのルールは、そう難しいもんじゃない」


「今季の?」


「あぁ、コロシアムの出し物ってのは、季節ごとに変わるんだ。エンタメだからな。同じことばっかやってても、客はそのうち()きちまうだろ?」


「なるほど。コロシアムの運営も楽じゃ無さそうですね」


「で……今季のルールを簡単に説明すると、チームトーナメントだ」


「チームトーナメント? チーム戦なんですか」


「あぁ。普段は剣闘士がそれぞれに戦ってトーナメントを勝ち上がっていくんだが、今季は違うんだ。剣闘士がブルーチームとレッドチームに分かれて複数人で戦う」


「ふむふむ……自分が勝ち残っていくの目指すんじゃなくて、チームの勝利に貢献しないといけないってことですか」


「そういうことだな。普通、コロシアムでは対戦相手を倒せばそれで良しなんだが、今回はいろいろとギミックや仕掛(しか)けが入るらしいぜ」


「仕掛けって、例えばどんなのです?」


「具体的にどういうネタなのかはわからん。俺はただの門番だしな。ま、単純に戦って終わりっていう試合じゃないのは確かだろう」


「ムゥン。どんな小細工が来ようと踏み潰すまでよ!」


(ハシムさんの場合、わりとできそうなんだよなぁ……)


「ま、まぁ、チーム戦でギミックありとなると、これは僕らにとってチャンスかも知れませんね」


「どういうことですトート様?」


「ええと、単純な実力勝負じゃないってことです。普通のトーナメントなら、いずれチャンピオンの実力がある人とぶつかるわけですが、チーム戦ならこちらのチームにいるチャンピオン候補にまかせればいいじゃないですか」


「あっ、なるほど」


「こすい考えだけど……さすがダンナにゃ」


「それに仕掛けがあるってのもいいわね。戦いで負けても勝負で勝つ。そうやって、番狂わせが起きるのを主催者は狙ってるんじゃない?」


「コニーの言う通りだ。強いものが勝つだけの試合運びでは、観客も白けてしまう」


「にゃにゃ! それにコロシアムでは、どっちの剣闘士が勝つかの賭けもやってるにゃ。普段と違うチーム戦となれば、賭けも盛り上がりそうにゃ」


「マルコさん……剣闘士になる目的は、お金を儲けることじゃなくて、恩赦とスルタンとの面会ですからね?」


「シシッ! わかってるにゃ、言ってみただけにゃ!」


「ま、ルールの概要についてはこんな感じだな」


「門番さん、僕らのチームはどっちで、どういう人たちと一緒になるんですか?」


「おぉ、それそれ! それが気になるにゃ!」


「マルコさん、もうすでに賭ける気でいません?」


「お前さんたちはレッドチームだ。それとランクは……《《運と実力があれば》》、ウォードッグから始まる」


「ランク? 剣闘士のランクってことですか?」


「あぁ。剣闘士のランクは5段階あってな……コロシアムを血で飾る小道具扱いのウォードッグから、お貴族扱いのチャンピオンまである。お前さんたちは初参加だから、当然最低ランクから始まるってわけだ」


 そういって門番は剣闘士の5つのランクをエルの蝋板に書き記した。


1.チャンピオン

2.ヒーロー

3.ウォリアー

4.ブロウラー

5.ウォードッグ


「ま、これは無理に覚えなくていい。勝ち抜いていったら自然と上がっていくもんだからな」


「ムゥン。御柱様の寵愛を受ける我を犬コロ扱いとは……」


「まぁまぁハシムさん。これはただの称号ですから」


「そんでまぁ、最初の試合だが……お前たちにはまだリングマスターがついてないからな。最初は予選から始まると思うぜ」


「リングマスター? 予選? チームトーナメントじゃないんですか?」


「おいおい、忘れてるかも知れんが、お前たちは囚人なんだぜ? それも戦えるかどうかもわからん馬の骨だ。剣闘士になる前にまず、『選別』をするんだよ」


「う、なんかイヤな予感……」


「ハッ、その予感は正しいぜ。囚人から剣闘士を選別する試合は、賭けの発生しない……いや、賭けの成立しない、試合ですらない興行だからな」


「いきなり不穏になってきた」


「コロシアムの中に囚人を何人か入れて、モンスターと戦わせるのさ。それで制限時間まで生きてたら、晴れて剣闘士として採用ってわけだ」


「おぉぅ……ちなみに10人中何人くらい生き残るものなんです?」


「2、3人てとこだ。元から戦いを商売にしてない囚人は、ほとんどが死ぬな」


「OH……ヤバすぎないですか」


「おいおい、囚人が自由を得るのに代償がないとでも?」


「そ、そう言われると……」


(なんだかいきなりブラックになってきたぞ?! 人権とか……存在しないよなぁ)


「剣闘士として拾い上げられたら、お前さんたちの身柄を引き受けるリングマスターがつく。リングマスターはいってみればあれだな、プロデューサーみたいなもんだ」


「なるほど。今はまだ、剣闘士ですらないと……」


「そういうことだ」


「こりゃ前途多難そうだなぁ……」


「でもまぁ、あんたらなら大丈夫だと思うぜ。ま、ただの勘だけどよ」


「ありがとうございます。それで最初の試合……選別はいつはじまるんです?」


「あぁ、それなんだが……今日だ」


「――?!」



いきなり少年漫画みたいな展開になってきた

次話はスルタン&背教者視点です。

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