表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/50

09

明楽は呆然としていた。

「その赤ちゃんが、お前だ」

クロはまたお茶を飲んだ。

「あの時、叔父さんが帰ってきたタイミングでちょうど俺もいたんだ。今でも覚えてるよ。赤ちゃんとちっちゃい龍連れてきた時は驚いたよ。それで、叔父さんは明るく楽しい子に育って欲しい。そういう意味で明楽。ナイトは、騎士のように強くなって欲しい意味でつけたそうだ」

「そんなことがあったんだ…」

「それと、明楽が持ってる刀で、一本特殊なのがあるだろ?」

ウルフは明楽の刀を持ってきた。

「ここに連れてきた時に、預かってたの」

明楽は一本の刀を抜いた。シルビアと彫られた刀を。

「叔父さんは、シルビアの事を忘れないため。明楽が大きくなったら、使って欲しい。そういう意味で、時間をかけて魔法で鍛えた刀なんだ」

明楽は思い出した。

「この刀…不思議なんです。一度、頭の中で映像が流れたんです。多分…お母さんだったのかな。産まれたばかりの一部の映像が流れたんです」

クロは考えた。

「もしかしたら、シルビアの力の一部が少し入ったんだろう。そこら辺は俺もわからない」

窓をみるともう暗くなっていた。

「話が長くなったな。夕飯作るよ」

クロは立ち上がった。

「クロ〜何作るの?」

ウルフはニヤニヤしていた。

「明楽は何食べたい」

「さっきの話を聞いてたら、久しぶりに鹿食べたいです」

クロは部屋のキッチンに向かい、食材の本を開いた。

「鹿肉あるぞ。それで美味しいもの作るよ」

そう言うと、クロは鹿肉のページに手を当て何か唱えた。すると、皿に盛った生の鹿肉がでてきた。

「どうなってるんですか!?」

明楽は驚いた。

「魔法使いは、なんでもできるから本当便利」

次々と食材を出し、食べやすいサイズにカットして煮込んでいった。

「クロって、なんでもできるんだ…」

「クロの料理は本当に美味しいの!」

ウルフが笑顔でそう答えた。しばらくすると、料理が出来上がった。

「鹿肉をワインで煮込んでみた」

出された皿には、美しく盛り付けされていた。明楽は一口食べた。

「美味しい…」

「よかった」

クロは胸を撫で下ろした。明楽はスプーンが止まらなかった。

「明楽ちゃん。いい食いっぷりだね」

「いつも、焼くか干してしか食べたことがなかったので。こんなに美味しい鹿肉初めてです」

あっという間に食べ終わった。

「おいしかったです。ご馳走様」

「どういたしまして」

食器を片付け、クロとウルフは明楽の部屋を案内した。

「ここが、明楽の部屋だ」

ベットと机と椅子とクローゼットがあり、シャワー室もあった。

「ありがとうございます…」

「何かあったら遠慮なく来ていいからね。私の部屋は隣だから」

ウルフがそう言った。

「俺の部屋でもいいぞ。ウルフはイビキがうるさいから…」

「なんですって!?」

ウルフはムスッとした。明楽はクスッと笑った。

「ありがとうございます」

初めて一人っきりの空間になった。だが、とても寂しく感じた。

「ナイトがいてくれたらな…」

そう言いながら、明楽はクローゼットを開けた。何着か服が用意されていた。どれも明楽にぴったりのサイズだった。明楽は寝巻きを出し、シャワーを浴びて着替えた。窓を見ると、もう外は暗くなっていた。

「もう寝よう」

明楽は灯りを消し、ベットに入った。しかしなかなか寝付けれなかった。


クロはシャワーを浴び、寝巻きに着替えて本を読んでいた。

「ふむ…」

机の灯りだけがついており、部屋は真っ暗だった。

「今度、明楽に食べさせてあげようかな」

すると、ノックが聞こえた。

「入れ…」

すると、明楽が申し訳なさそうに入ってきた。

「どうした?もう夜は遅いぞ」

「ごめんなさい。どうしても眠れなくて。ウルフさんの部屋に行ったんですが、廊下からイビキが響いて、とても入れる感じがしなくて…」

クロは呆れた。

「ごめんな」

「それで、一緒に寝てもいいですか?」

クロはドキッとした。

「え?俺と?」

「うん…」

「まぁ、いいよ」

クロのベットに明楽は横になった。

「もう少し、本を読みたいから。安心して眠っていいぞ」

クロはまた本を読んだ。明楽はクロがいる事に安心したのか、眠ってしまった。しばらくして、本を読み終わると、クロはベットに向かった。

「あの方に似てるな…明楽さん…」

明楽の寝顔を見るなりつぶやいた。クロもベットに横になり、明楽見た。

「よく寝てるな。よかった」

メガネを外し、眠りについた。

朝日が明楽を照らした。目を開け、体を起こすとクロはもう起きており、朝食の準備をしていた。

「おはよう。明楽」

「おはようございます」

席に着くと、卵料理が皿に盛られていた。横には、パンもあった。

「こういう朝食、食べた事ないだろ?」

クロも席に着いた。

「いただきます…」

明楽は食べ始めた。

「美味しい…」

「それはよかった」

クロはコーヒーを飲んだ。

「私、あまり朝食は食べないんですけど。クロの作ってくれる料理、すごく気に入りました!」

明楽は嬉しそうに言った。

「照れるな…」

クロの顔が赤くなった。すると、部屋の扉が開いた。

「おっはよー。て、クロ!何明楽ちゃんを寝取ってるの!」

明楽は頭の中がハテナだらけだった。クロは呆れながら答えた。

「襲ってもないし。そもそも明楽から聞いたぞ。廊下までイビキが響いてたとか」

「ちょっ…クロ…」

明楽は止めたが。

「仕方がないじゃない!自分で直せれないもん!」

ウルフは開き直っていた。

「まぁ、襲ってないならいいわ」

クロと明楽は同時に思った。

 まさか、襲うつもりなのか!と。

「俺は、同意なしはしない主義なので」

「あ…ははは…」

明楽はどう答えればいいのかわからなかった。

「でさ、今日はどうする?明楽ちゃんの稽古」

ウルフがそう問いかけた。

「しばらくは身体を作ってから基礎を開始する。まぁ、明楽ならすぐに身体作りは終わりそうだ」

クロは食器を片付けた。明楽はウルフに問いかけた。

「あの…服って、どれを着たらいいですか?」

「一緒に部屋行こうか」

ウルフは明楽と部屋に行き、クローゼットを開いた。

「これが、稽古でも動きやすい服よ。明楽ちゃんが、いつも着てた着物でもいいならそれでもいいよ」

「着物の方が締まってくるので、着物にします」

「うん!その方がいいわ」

明楽は着物に着替え、稽古場へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ