表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/50

06

夜中のグラウンドに工藤がきた。

「珍しいですね。外で話したいなんて」

「たまには、いいでしょう。痕跡があるか、探していたんですがね…」

谷川は報告書の収穫ゼロだったことに、気持ちがが下がっていた。

「急いで三日月を探さなくていいんですか?」

「しばらくは大丈夫ですが…」

谷川は月をみた。

「まだ、大丈夫そうですね…」

「校長。前から気になってたんですが」

工藤は切り出した。

「三日月さんをどうするんですか?」

谷川は工藤に向き直った。

「三日月さんには、莫大な力を持っている。この星を滅ぼす力があると私は思う」

工藤は驚いた。

「どう言うことですか」

「三日月さんは、三日月龍とレイの間にできた子だ。三日月龍自体、生態が不明だが、強大な力を持っていると言われている。そして、レイの血も入っている。あの晩…」

谷川は思い出した。十六年前、明楽が暴走した事を。

「校長?」

「いや。昔を思い出していた。私は、三日月さんの力が欲しいのです。無理矢理にでも、私が三日月さんのライダーとなって、この魔法を使える世界を変えていきたいと思う。工藤くんは、二年前の戦闘を覚えているかね?」

「はい。参加していたので」

「あの戦いは、はっきり言って相手がクズだったんだ。何が野生の龍を保護したいだ。龍は強い者が残り、弱い者は処分で当然の扱い。その方が、戦闘面でもいい戦力になるんだ」

「確かに、おっしゃるとおりです。野生の弱い龍がいても、邪魔なだけですし。強い龍が我々に手を貸してくれたら、戦闘なんてあっという間ですもんね」

「その強い龍のトップに、三日月さんがいたら支配ができます。たった一匹で支配ができるのは効率がいいでしょう。もし、そうなれば工藤くんは私の横にいてもらおう」

工藤は驚いた。

「本当ですか?」

「君は、三日月さんの担任だからな。三日月さんに教育をするのも君の仕事だからな」

谷川はニヤついた。

「だが、三日月さんは一体どこへ行ったんだろうか…」

「私にもわかりません。こうなれば、情報提供なり、裏でやりますか?」

谷川は悩んでいた。

「三日月さんの情報が知られてしまう可能性も出てしまうんですが、仕方がないですね。見つけた者には、懸賞をかけることにしましょう」

「私もできる範囲で探せれるように頑張ります」

「今日は遅くまですまなかったね」

「では」

工藤は帰って行った。



「明楽ちゃん!おはよー」

あれから数日がたち、明楽も体が動けれるようになった。

「おはようございます」

自分で体を起こした。

「朝食持ってきたよ。今日から食べてみようね」

見ると、すごく美味しそうに盛り付けがされていた。

「クロの手作りよ。朝からお腹に優しい物にしてあるから」

「この、白いのは?」

「白米よ?食べたことないの?」

「はい…」

明楽は箸で白米を一口食べた。

「おいしい…」

次に汁物にも明楽は興味を持ち、飲んでみた。

「ウルフさん。これは?」

「味噌汁よ。で、小鉢に入ってるのはおひたしよ」

あまりの美味しさに、明楽は涙が溢れた。

「明楽ちゃん。普段…何食べてたの?」

「鹿や猪。魚も取っていました。たまに山を散策して、山菜も取っていた程度です…」

明楽はあっという間に平らげた。

「美味しかった…」

「よかったね。そうそう、今日の夜ね?楽しみにしててね」

ウルフは食器を下げ、部屋を出て行った。

「夜…?何があるんだろ…」

そう考えていると、クロが入ってきた。

「おはよう」

「おはようございます」

「朝食、完食したんだって?」

「とても美味しかったです。ありがとうございます」

明楽の笑顔に、クロも嬉しかった。

「今日は、城を歩かせようと思うが」

明楽はベットに座り直した。

「自分一人で立ってみてもいいですか?」

「あぁ。倒れそうになったら支えるから大丈夫」

明楽は柵を握り、ゆっくり下半身に力を入れ、立ち上がった。一歩ずつゆっくり歩いた。

「足に力が入る…」

スラスラ歩けるわけではなかったが、部屋を一周歩くことができた。

「順調だな。あまり無理はするなよ。と言っても明楽の怪我、ほぼ治ってるんだよな」

「え?」

「三日月龍は怪我を負っても回復が早い言われているんだが、ここまで早いとは思ってもなかった」

クロは驚いていた。

「そうなんですか。だから、いじめられても次の日に傷がなかったんだ」

「自覚なかったの?」

「これが普通かと…」

明楽のノー天気にクロはポカーンとしてた。

「明楽…こんな重傷を、半月ほどである程度回復することが異常なんだ」

クロは扉を開けた。

「とりあえず、散策に行こうか」

明楽はゆっくりと廊下を歩いた。

「久しぶりに歩くの、なんだか変だな…」

「たくさん歩こう」

廊下を往復するだけでも、明楽は疲れた。

「体力落ちてる…」

「寝たきりだったからな。これじゃー勝負にならないよ」

クロはニヤニヤした。

「早く元の体力に戻りたい…」

「大丈夫。明楽の回復力は異常だ。心配いらない」

しばらく歩き続け、明楽とクロは部屋に戻った。

「今の所、痛みはないか?」

「大丈夫です」

明楽はベットに座った。

「俺、これからやる事があるから失礼するよ。そうそう。今日の夜、楽しみにしてて」

そう言うとクロは出て行った。

今日の夜、何があるのだろう。そう思っていると明楽は眠気に襲われ、眠ってしまった。

気がつくと、夜になっていた。

「もう夜なの…」

時間が早く経っている事に驚いた。すると、ノックがした。

「どうぞ…」

ウルフが入ってきた。

「明楽ちゃん!いいもの見せてあげる!」

ウルフは明楽の手を引っ張り、部屋を出た。

「ウルフさん。どこ行くんですか?」

日中の疲れもあったが、なんとかついて行った。ウルフはクロの部屋へ連れて行った。

「明楽ちゃんも、きっと喜ぶよ!」

扉を開けると部屋でクロが待っていた。

「いらっしゃい」

クロは本を閉じ、立ち上がった。

「明楽。今日は何の日かわかるか?」

「…もしかして」

クロは部屋のダイニングに明楽とウルフを座らせた。

「まぁ、みてな」

クロは大きな皿を置き、大きな籠を被せた。そして、クロは籠に火をつけると、籠は一瞬で燃えてしまった。すると、皿の上にはなかった大きなケーキが乗っていた。

「これ…」

ケーキにはこう書かれてあった。

『誕生日おめでとう!明楽!ナイト!』

「こう言うお祝い、今までなかっただろ?」

クロは蝋燭を立て、手をかざすと蝋燭に火がついた。

「朝から作ってたんだ。ナイトが亡くなった事が残念だが、今日は二人の誕生日を祝いたい」

「明楽ちゃん。願い事を頭に思い浮かんで、蝋燭の火を消して」

明楽は少し考え、蝋燭の火を消した。

「おめでとう」

クロとウルフは拍手をした。

「クロ…ウルフさん。ありがとう…」

明楽は泣きそうになった。

「主役が泣いちゃダメよ。ケーキ切るから、食べよ?明楽ちゃん」

ウルフはケーキをカットし、明楽に渡した。

「ケーキ食べるのも、初めてです…」

明楽は一口食べた。あまりのおいしさに、どんどん口に入っていく。

「良かった〜」

クロはホッとした。

「すごく美味しい!」

食べてる姿がとても幼く感じた。

「明楽ちゃん。おかわりあるから、食べてね!」

「うん!」

明楽は幸せでいっぱいになった。この幸せが続くことを明楽は願った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ