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「明楽…よく眠ってるな」

夜中。眠っている明楽の頬をクロは優しく撫でた。すると、医務室の扉が開くとウルフが立っていた。

「クロ…」

その声に、クロは立ち上がり医務室を出た。

「準備できたよ」

「あぁ」

クロは珍しく手袋をはめた。

「そういえば、あんたの怪我どうなの?」

ウルフは心配そうにクロを見た。

「俺は大丈夫。痛いけど、これくらい大丈夫だ」

二人は地下へ歩いた。とても冷たく感じた。

「遅くなってごめんね。暴れ回って繋げるの大変だったの」

ウルフは重そうな扉の鍵を開け、扉を開けた。すると、鎖に繋がれた工藤が牢屋の中で唸っていた。

「さっきまで暴れてたのに、疲れちゃったのかな?まぁ、ここがどう言う場所かちゃんと教えないとね」

ウルフは鞭を持った。

「工藤…また会えたな」

その声に工藤は顔を上げた。

「クロ…なんで…」

「言っただろ。地獄以上の苦しみを味わってもらうと」

牢屋の鍵を開け、工藤に近づいた。そして、工藤を一発殴った。

「!?」

「これでも、気が済まないんだ!」

工藤の首を掴み、持ち上げた。

「あ…が…」

「お前はもう死んでいる。だがな、苦痛は永遠に続く。覚悟しておけ」

そのまま工藤を投げ飛ばした。

「ぐぁ!」

クロは冷めた目で工藤を睨んだ。

「汚ねえ声だすなよ。あ、忘れてた。ウルフ。あいつらまだおるだろ?こいつに見せてやれ。現実を知ってもらわないとな」

「あら。いい提案するじゃない?でも、かなりボロボロよ?」

「構わない。いいからここに入れろ」

「はーい」

ウルフはボタンを押した。すると、何かを巻きつく音が響いた。しばらくすると、以前クロが捕まえてきた三人が鎖で引っ張られてきた。

「うっ!」

あまりの光景に工藤は絶句した。なぜなら、腹が裂かれ何もない状態なのに生きているからだ。

「汚いの出しといたんだけどさ、こうやって引っ張られないと自力で移動もできないの。でも、死んでるから生き地獄?死に地獄?の様な状態よ」

ウルフは悪魔の様な笑みをしておた。顔をよく見ると、ボロボロで目ん玉がない者もいた。クロは三人のうちの一人の顔を持ち上げ、工藤に見せつけた。

「お前もこうなるんだよ。しかも永遠にこれが続くんだよ。楽しみだよな」

工藤は恐怖で失禁しそうになったが、出ないことに気づいた。

「あれ…なんで…」

「お前はもう死んでるんだ。だから、性別は無くなるんだ。でも、お前が生きている時にその汚いの切り裂いておけばよかったよ」

クロの顔は笑顔だが、目が笑っていない。

「クロ!謝る!もう許してくれ!俺は死んだんだろ!?」

涙と鼻水で工藤の顔はぐちゃぐちゃだった。

「俺に謝られてもな…そもそも、謝る相手が違うだろ!」

もう一発クロは工藤を殴った。

「お前のせいで一生消えない傷を負った人がおる。その人に謝るのが筋じゃないのか?まぁ、死んでるお前には一生会わせないが」

すると、クロの瞳がサファイア色になった。

「お前は…あいつ…三日月さんとまさか…」

「あぁ。そのまさかだ。俺はお前らみたいに明楽を悲しませる様なとはしない。お前は永遠に地獄以上の苦しみを味わえ。自分が犯した罪がどれほど大きいか考えてみるといいが…考える暇があるといいんだがな」

クロは牢屋を出て鍵を閉めた。

「クロ…ここから出せ!」

最後に縋った光景がとても醜く見えた。

「俺はこれで失礼するが、ウルフと担当の者、こいつらを永遠に可愛がってやってくれ」

すると、ウルフの後ろに黒い影が五人立っていた。

「今回は人が増えたから、こっちも人増やしたわ」

ウルフは鞭を構えた。

「クロ。後はやっておくわ。楽しめそうだし」

「わかった。じゃぁ、頼むよ」

クロは地下を出ようとした。

「お前…一生後悔させてやる!」

工藤の最後の雄叫びが響いた。クロはゆっくりと扉を閉めた。

「後悔…お前以上に後悔してるよ」

すると、悲鳴が響き渡ったが構わずクロは地下を後にした。部屋に戻り、椅子に座った。深いため息ををつき、手袋を抜いた。

「…」

机に置かれているデザインを眺めた。

「…そうだ」

クロは思い浮かんだ物をそのまま描いた。

「これなら絶対に似合う。明楽も喜んでくれそう」

ふと窓を見ると、太陽の光が見えた。

「げ…もう朝か…寝てないが、いっか」

クロは朝食の準備をした。

「明楽。食べてくれるといいな」

淡々と作り、明楽の分を用意し医務室に向かった。扉を開けると、明楽は起きていた。

「おはよう。起きてたか。朝食を持って来たよ」

明楽はクロを見た。

「おはよう…」

何処か元気がなかった。朝食をテーブルに置いた。

「どうした?」

「夢に…お父さんが出て来た」

「そうか。何か言われたか?」

「…あまり言えない事情だけど、ライトさん?私に魔法をかけてたみたい。あの歌がお父さんから私を守ってたみたい」

クロは驚いた。

「え…全然知らなかった。歌を歌ったらレイが後退するのは気づいたが、魔法をかけてたのは知らなかった」

「うん…」

明楽は微妙な顔をした。

「まぁ、明楽とナイトの子守唄として叔父さんが歌ってたし。不思議な力はあるなとは思ってたが。そんな事があったんだな」

「そんなところかな。後はお母さんとの出会いだけど…ちょっと言えないかな」

「そうか。あ、朝食が冷めるから食べな?」

見ると、たまご粥だった。明楽はゆっくりと食べた。

「美味しい」

「よかった」

クロは椅子に座った。

「朝からきついな」

「うん…久しぶりに嫌な夢見た感じ。お父さん、ただ自由に生きていたかったって感じした。谷川に汚れ仕事命じられるしで、嫌な思いしてたそう」

「…」

しばらくして、明楽は朝食を食べ終えた。

「ごちそうさまでした」

「うん。よく食べた。そういえば、具合どうだ?」

「大丈夫そう。首も痛くないし」

「よかった」

「そういえばクロ。寝てないの?」

その発言にクロはギクっとした。

「え…な…なんでわかったかな?」

「いや…くま出来てるよ?大丈夫?」

「あ…うん。このあと寝るよ。そうそう。みんなが落ち着いたら宴会をしようと思ってるんだ。この戦いの勝利を祝ってだな」

「いいね!楽しみ!」

明楽は笑顔だった。

「よし。まずはみんなが落ち着いてからにしよう」

クロは食器を持った。

「今から寝てくるから、明楽もゆっくり休んで」

しかし明楽はどこか寂しい表情をした。クロはため息を吐いた。

「一緒に寝るか?」

「うん!」

クロに支えてもらいながら部屋へ行き、ベットに入った。

「食器洗ってくるから、先に休んでて」

そう言いクロは食器を片付けた。しかし明楽はまだ起きていた。クロが戻ると、明楽はじっとクロを見た。

「休まなくて大丈夫か?」

「クロが来るまで待ってた」

クロもベットに入り、明楽の頭を撫でた。

「ありがとう。さ、休もう」

「うん。おやすみ」

「おやすみ」

明楽とクロは眠った。


気がつくともう夕方になっていた。

「もう、夕方か」

クロはメガネをかけた。横をみると、明楽は寝ていた。クロは優しく明楽を撫で、ベットをでた。デザインを出し、眺めた。

「寝てるな」

机に置き、呪文を唱えるとデザインが物になって出て来た。

「後は…サイズが…」

明楽を起こさないように、そっとサイズを合わせた。

「…うん。大丈夫そう」

小さなケースにしまった。すると明楽が目を覚ました。

「…クロ?」

「おはよう。調子はどうだ?」

「うん。大丈夫」

明楽はゆっくりと起きた。

「ご飯たべるか?」

「うん。食べる」

「よし。今作ってやるぞ。ちなみにリクエストあるか?」

明楽は少し考えた。

「うーん。ビーフシチュー食べたい」

「最近作ってなかったな。よし。今作るから待ってて」

クロは早速ビーフシチューを作った。明楽はゆっくりとベットからでて、椅子に座った。しばらくすると、クロは出来立てのビーフシチューを持って来た。

「お待たせ」

明楽の前にビーフシチューとパンを置いた。

「いただきます」

明楽はパンにビーフシチューをつけて食べた。

「うま…」

「よかったよ」

クロもビーフシチューを食べた。

「うん。うまい」

「クロのご飯いつも美味しい。ありがとう」

明楽は笑顔だった。

「そう言ってくれたら、俺も嬉しい。こうやって、明楽とご飯を食べれる事が幸せだよ。明楽。戻って来てくれてありがとう」

「もー。クロ固すぎる!」

クロをどついた。

「いやいや。俺、めっちゃ心配してたからな?」

「うん」

クロは明楽の頭を撫でた。

「さ、冷めないうちに食べよう」

「うん!」

冷めないうちに食べ終え、クロは食器を片付けた。明楽はのんびりとしていた。

「大丈夫か?」

クロが来た。

「うん。大丈夫。痛みもだいぶ引いてきた」

「よかったよ」

明楽の横に座った。

「明楽が元気になってよかった」

「私も、クロが大丈夫でよかった」

クロは深呼吸をした。

「さて。風呂に入るか?」

「そうだね。一緒に入りたい」

「いいぞ」

お風呂にお湯を張り、二人は湯に浸かった。

「気持ちいい…」

「だな」

クロは明楽の体を見た。

「傷…もうないな。回復が早いな」

「そう言うクロも傷とか無いじゃん」

その一言に、クロは自分の体を見た。

「…言われてみれば。明楽と仮契約の時よりも回復が早い。どうりで動けれると思ったよ」

蹴られた所も痛みが軽いのはそう言うことだったのかと思った。

「明楽。ありがとうな」

明楽は照れくさそうに答えた。

「いや…私は何もしてないよ。でも、ありがとう」

それから交互に洗い、体を拭き着替えた。

「ふぅ。気持ちかった」

「よかった」

二人はベットに座った。

「今日はゆっくりした日だったね」

「戦いが終わった。しばらくはゆっくりしよう」

「だね」

明楽はベットに横になった。クロはそっと明楽を抱きしめた。

「明楽。ありがとう」

「私の方こそ、ありがとう。クロ」

そのまま二人は眠った。


それから数日が過ぎ、城では戦いの勝利を祝っての宴会が行われた。大広間には兵士たちが集まり賑わっていた。明楽はクロに作ってもらった振袖を着ていた。クロは宴会の挨拶をした。

「みんな。先日の戦いは本当によく頑張った。おかげで明楽を救う事ができた。ありがとう!」

その声に兵士は拍手を送った。

「今日は勝利を祝っての宴会だ。みんな楽しんでほしい」

そして、宴会がスタートした。

「明楽ちゃん綺麗ね」

ウルフは明楽の振袖姿に目が輝いていた。

「ありがとうございます。クロが作ってくれたんです」

「似合ってるわよ」

一方でクロは兵士一人一人に挨拶をして回っていた。

「クロって、本当に仲間思いですよね」

「まぁね。そこが良いところよ。さ、明楽ちゃんも飲もうよ!」

ウルフはお酒をとった。

「私はジュースでいいですよ」

明楽とウルフは乾杯をした。

「明楽ちゃん。戻って来てくれてありがとう」

「こちらこそ、助けてくれてありがとうございます」

ウルフは一気飲みした。

「プハー。今日は飲むわ!」

ウルフはお酒を足した。

「ウルフさん。飲みすぎないでね…」

明楽は少し引いていた。皆でしばらく飲み食いをしていき、楽しい時間が過ぎていった。

「もっと飲むわよ!」

ウルフの掛け声に兵士たちが歓迎した。

「あれ…クロ?」

明楽は辺りを見回したが、クロの姿がなかった。ふとベランダに繋がる窓を見ると開いていた。明楽は窓の方へ向かった。


「…」

月明かりに照らされながらクロは手すりにもたれていた。ポケットからある物を出し見つめていた。すると、誰かの気配を感じた。

「明楽か?」

ある物をポケットにしまい、後ろを振り向いた。

「クロ。こんな所にいたのね」

「悪いな。ちょっと外の空気吸いに来ただけだ。ウルフはもう仕上がってるだろ?」

「う…うん」

明楽は苦笑いした。

「まぁ、いい。みんなが楽しんでいればそれで良い。今まで頑張ってたんだ。今日は羽目を外しても許す」

クロは明楽に近づいた。

「明楽。この世へ行って、空の散歩に行かないか?」

「え?いいけど…」

二人で宴会の様子を覗くと、誰も二人がいない事に気づいていなかった。

「行けそうですね…」

「今のうちに行こうか」

明楽の手を取り、クロは指を鳴らした。

「ついたぞ」

一瞬でこの世へ来た。草原が広がる場所。

「クロ。離れててね」

明楽から距離を取ると、明楽は青白い光に包まれながら三日月龍の姿になった。

「よし。鞍つけ…」

「今日は鞍いらないわよ」

「え…?」

その声に、クロを抱きかかえ明楽は空を飛んだ。

「ちょっ!明楽!」

「大丈夫。ゆっくり飛ぶから」

明楽はゆっくりと飛行した。風が心地よかった。

「明楽。急なお願いで悪いな」

「ううん。私も、クロと散歩したいと思ってたから、大丈夫」

しばらく飛んでいると、山々に入り明楽とナイトが住んでいた洞窟が見えた。しかし、草木で生い茂り住んでいた痕跡はなく、自然に帰っていた。

「懐かしいわ…」

明楽は寂しそうに呟いた。しばらく飛んでいると、断崖が見えた。明楽は地面に着地し、クロを下ろした。断崖からの景色はよく、月の光で辺りが明るく見えた。

「ここでナイトを返した…」

「そうだったのか」

寂しそうにしている明楽をクロは優しく撫でた。

「明楽。人の姿になってくれないか?話したい事がある」

明楽は不思議に思いながらも、人の姿に戻った。

「明楽。前にも聞いたが、これからどう生きたい?」

クロは真剣な表情で明楽を見つけた。

「もちろん。クロと一緒にいるよ。私にはクロしかいない。クロと別々の道を歩んでも、こんな幸せを味わうことはできないと思う」

明楽の表情に迷いはなかった。すると、クロは明楽の前で膝をついた。

「え!クロ!?」

明楽は驚いた。

「明楽。俺は弱い人間だ。これから後悔をする事があると思う」

「クロ…」

「だけど俺は、これから先全力でお前を守って生きたい。三日月明楽のライダーとして。そして…」

ポケットから小さなケースを取り出した。蓋を開けると、三日月の指輪が入っていた。埋め込まれている宝石が、月明かりで輝いていた。

「…!」

明楽は驚いた。

「三日月明楽のパートナーとして共に歩いていきたい」

クロが言い切った後、静寂が走った。

「クロ」

明楽は勢いよくクロに抱きついた。

「もちろんよ。もちろんに決まってるじゃない。こんな…素敵な贈り物…」

明楽は嬉しくて、涙が流れた。クロは優しく明楽を抱きしめた。

「受け取ってくれるか?」

明楽は深く頷いた。

「クロ。ありがとう」

明楽が泣き止むのを待ち、クロはそっと明楽の指に指輪をはめた。

「クロ…綺麗…」

「明楽に似合うのを作ってたんだ。気に入ってくれてよかった」

クロはどこか安心していた。

「クロ。これからよろしくね」

明楽は嬉しそうだった。

「あぁ。こちらこそ、よろしくな」

月明かりに照らされながら、二人は唇を重ねた。

「さぁ、帰ろうか」

「うん」

クロは指を鳴らすと、断崖には誰もいなくなった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

次で最後になる予定です。

楽しみにしてください。

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