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目を開けると、もう夜になっており、自分の部屋ではないベットに寝かされていた。

「…メガネ…」

体を動かそうとすると、激痛が走りメガネを探すのを諦めた。いつから気を失っていたのだろう。すると、ノックがして、ウルフと明楽が入ってきた。

「クロー。大丈夫ー?」

「あぁ。俺のメガネは?」

明楽はクロにメガネをかけてあげた。

「ありがとう」

「ご両親を…ごめんなさい…」

明楽はクロに謝った。

「いや。むしろこっちが謝る方だ。明楽を連れて行こうとしたんだから」

「一応、遺体安置所にご遺体持っていったわ。で、どうする。私は反対よ」

ウルフが言った。

「それはわかってる。おじさんと…うん。同じ所には埋葬しない。母さんの故郷の所で適当に埋葬しよう」

「そうね」

ウルフは納得した。

「今日は休むよ。ウルフ。明楽を頼むよ。それと、明楽」

「なに?」

「強かったぞ」

「…ありがとう」

「明楽ちゃん。行こうか」

ウルフに連れられ、ウルフの部屋へ入った。

「明楽ちゃん。何か飲まない?」

「え…お酒以外なら大丈夫ですよ」

ウルフは明楽に座るように促し、ジュースを出した。

「今日の明楽ちゃん。かっこよかったわ」

「ウルフさんも大丈夫ですか?」

「私は、クロみたいに油断はしないわ。でも、ほんと腹が立つわ」

ウルフはワインをボトルごと飲んだ。

「クロのご両親。特に母親が最低だったのよ。ライトさんの事が気に入らなくてね。親の敷かれたレールをひたすら走ってたの。でも、ライトさんが功績など残して優秀で。ライトさんが稼いだお金等をこっそり盗んで行ってたのよ。あいつ…」

「そんな、酷い人だったんですか」

「クロ自身もそういうの目にしてるの。父親も母親が悪事してる事放置だしさ。最悪の夫婦なんだよ。でも、クロはそういう親の背中見ずに、ライトさんの背中見て育ったからいいんだけどね」

ウルフはワインを飲み、机に置いてあったパンを食べた。

「ウルフさん。実は疑問があるんですが」

「なに?」

「ウルフさんって…人間?」

ウルフは舌を出した。

「えぇ。元だけどね」

「…どういう」

「私ね。生きていた頃、明楽ちゃんと一緒でいじめられてたの。もう何十年前の話かな」

「え…」

「一応、生きていた時はちゃんと性別は女だったのよ!学生でも、社会人になってもずっといじめられてた。二十四歳の時だった。仕事帰りに襲われたの。夜に人気のない所で複数人に…」

ウルフはワインボトルをテーブルに置き、足を組み直した。

「何も抵抗できなくて、やられるがまま。最後はズタズタに切り裂かれて死んだ。酷かったらしい。私の亡骸は、どうなったのかも知らない」

明楽は何も言えなかった。

「で、魂がなぜかここに来てね。そこにライトさんが現れた。ライトさんめっちゃイケメンでね。当時クロはまだ赤ちゃんで、ライトさんに抱っこされて現れたのよ。で、ライトさんと一緒に城を築き上げた」

「そうだったんですか」

「それで、ライトさんが私の秘書になって欲しいって言われて今に至るの」

「ウルフさん…すごいですね」

「慣れた頃に、ライトさんに聞いたの。どうして私は地獄へ行かなくてよかったんですかって。そしたらさ。『君達が辛い思いしか経験がないのに、地獄へ行くのは納得ができなくてね。少しでもそう言う魂を救いたかった。ここでいい思い出を作って生まれ変わって欲しい』てさ。それから、ライトさんの事は心から信頼してた。稽古も一から教えてもらってさ。私、死んでるんだけど生きていた頃よりずっと楽しくて、ライトさんには感謝してるのよ」

ウルフはまたワインを手に取った。

「今日はワイン進むわー」

またワインを飲んだ。

「ウルフさん。かっこいいですね」

「そう?まぁ、私はもう死んでる。死んで楽しい思いしてるの変態でしょ。でも、明楽ちゃんは生きてる間に楽しい思いしてほしいなって思う。死んでしまうと、何も残らなくなる。実際、見た目は女だけど性別がなくなっちゃうし」

「うん…」

明楽はジュースを一口飲んだ。

「おまけに、ウルフって名前。ライトさんがつけてくれたの。生きていた頃の名前はもう忘れたわ。狼のように強い存在でいて欲しい意味でだって」

「かっこいい…」

「でしょ!お気に入りなのよ」

「ライトさん…名前つけるセンスいいですよね」

「わかる〜」

ウルフと明楽は笑った。

「もう女子会じゃん!生きていた時もしてなかったし、初めてよ。ありがとう」

「私も初めてですよ。ウルフさん。ありがとう」

ウルフは窓を見た。

「やだ!遅くなったわ。もう寝ましょ。明楽ちゃんは自分の部屋に行く?」

「はい。そうします」

「じゃ!おやすみ〜」

「おやすみなさい」

明楽は自分の部屋へ行き、久々に部屋のベットに横になった。

「やっぱ…寂しいな…」

毎晩、クロの横で寝ていたので一人で寝ることに寂しさを覚えながらも、いつのまにか眠ってしまった。



「あれから、何か情報はあるかね」

真夜中の校長室で、谷川は工藤に聞いた。

「いえ…あの夫婦?あれから連絡は来ていません」

「そうかー」

ふと工藤は思い出した。

「そう言えば…あの夫婦。変なこと言ってたような」

「どんなことだね」

「灰色の…すみません。覚えていません」

「灰色…どこかで…」

考えていたが、うまく思い出せない。

「まぁ、わかりました」

「では、失礼します」

工藤が出て行った。

「レイ。魔法大学に行くぞ。抵抗する奴は、黙らせればいい」

レイは谷川を睨んだ。

「機嫌が悪いのはわかってる。でも、ヒントになることがあると思ってな」

谷川は背もたれに深くもたれた。



夢を見た。見たこともない満天の夜空が美しかった。

「ここは…」

明楽は草原に寝かされていた。起き上がりあたりを見渡すと、一面草原が広がっているだけ。明楽は月を探した。

「…行ってみるか」

月を頼りに、歩き始めた。どこまでも続く草原をひたすら歩いた。

「…あれは?」

どのくらい歩いただろう。奥の方に人が立っていた。遠すぎて顔が見えない。よくみると、人ではない何かもいた。明楽は近づいた。すると、奥にいた人の笑い声が聞こえた。

「あの…」

明楽は声を出そうとした時、明楽の方に振り向いた。男の人だった。男の横にいた何かも明楽の方を見た。

「えっ…」

明楽は驚いた。男の横にいた何かは、明楽と同じ三日月龍だった。男は明楽にニコッと笑うと、指を鳴らした。すると、明楽の視界が暗くなった。


2025.01.25

修正しました。

後に出た小説に話が合わなくなってしまったため、少し修正しました。

申し訳ありません。

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