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焼かれていたのは

瑠唯の視線に気づいたのか3人の中の1人、隆也が瑠唯を見つけ声を上げた。

「あ!瑠唯来たみたいだよ!瑠唯ー!」

隆也は瑠唯に向かって元気よく手を振ってる。瑠唯もそれを見て軽く手を振り返した。

その後すぐに皆の元へ向かおうと思ったが、その前に瑠唯は紅羽に声をかけた。

「紅羽ー」

「はい、何でしょう?」

「皆にばれないように後から店に入ってきて。多分気にしちゃうと思うから」

「はい。畏まりました。皆様が個室に入られて少し経った後で、隣の部屋に入りますので安心してください」

「うん。ありがとう。じゃあ行ってくるね」

「はい。行ってらっしゃいませ」

瑠唯は紅羽との会話を終えた後、3人の元へ向かった。

「「「瑠唯久しぶり!」」」

そう言って瑠唯の周りに3人が一斉に集まった。

すると彼らは瑠唯の顔をじっと見つめ固まっている。

「久しぶりだね、あの…俺の顔になんかついてる?」

「え、あ、いや何も!久しぶりだからお前の美貌に見とれちゃってさ。なんつって」

そう言って隆也はふざけた様子でそう答えた。

「何言ってんの隆也ー。瑠唯が引いてるよー」

「瑠唯逃げた方がいいぞ」

「いや冗談だからな瑠唯?」

「あはは、わかってるよ」

店の前ではくだらない会話で笑う4人の声が響いていた。

正直俺は彼らに会うまで少し緊張していたが、昔と変わらない笑顔を見て一気に緊張が解けた。

「でも本当に久しぶりだね。待たせてごめんね」

「いや全然!俺たちが早く着きすぎただけだから気にしないで」

「ありがとう!」

「うん!じゃあさっそく焼肉行くか!」

「「「うん」」」

隆也の掛け声で瑠唯、陽向、優斗が元気に返事をした後、エレベーターで店に向かった。

エレベーターが開くとすぐにお店があり、瑠唯たちの元に店員さんがやってきた。

「いらっしゃいませ。お客様ご予約はされていますでしょうか?」

「はい。18時から4人で予約している、早乙女です」

「早乙女様ですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

綺麗な女性の店員さんが丁寧に俺たちを案内する。

案内された部屋 の扉を開けると、左側はソファー席、右側は椅子の席になっていた。

もうすでに瑠唯の分の椅子はなくなっており、スムーズに席に着くことができた。

「ではごゆっくりおくつろぎください。失礼いたします」

そう言って扉が閉まるとみんなの空気が一斉に緩んだ。

「ふぅー。やっぱり瑠唯が選ぶ店は違うな。高級そうで緊張するぜ」

「俺も毎回こういうところに来てるわけじゃないよ。でも皆大人になったし、せっかくなら少し違う雰囲気を味わいながらごはんを食べるのもいいかなって」

「確かに。それもいいかもね。なんだか大人になったって感じするはー」

「わかるー。でも中身は全く成長してない感じ満載だけど」

「それなー見た目だけ歳とっていってるよな」

「ほんとほんと。まあ話は後にしてとりあえず飲もうぜ!」

「だな!肉も沢山食うぞー!」

そしてお酒や沢山の肉がテーブルに運ばれてきた。

「ではお酒も来たことですし乾杯しますか」

「だな。じゃあ瑠唯音頭とって」

「え、俺?」

「当たり前だろー。瑠唯が予約した店なんだから」

「えー、いつもこういうの隆也がやるのに?」

「たまにはいいだろ?ほら早くー」

「う、うん。わかった。じゃあ皆さんグラスをお持ちください」

「いや、なんか固くね。会社の集まりじゃないんだからさー。あー、もういいや、やっぱ俺が言うは」

「結局お前がやるのね」

「まあいいんじゃね?」

「よし!じゃあみんなグラスもって。今日は久しぶりに集まれてうれしいぜー!沢山飲んで食って楽しむぞ!乾杯!」

「「「かんぱーい」」」

こうして結局隆也が乾杯の音頭を取ったところから飲み会はスタートした。

「やばいこの上タン。噛めば噛むほど味が出てきて最高にうまい」

「それな。やっぱ高級肉は全然違うは。瑠唯予約してくれてありがとう」

「全然。皆が喜んでくれたならよかった!」

「最高においしいぜ。あ、そう言えば全然話変わるけどさ。お前沙羅ちゃんとどうなの?そろそろ結婚か?」

「あ、いや。実はね。別れたんだよね」

「「「え!?」」」

「何で?あんなに仲良さそうだったのに…。」

隆也が悲しそうな表情でそう言った。

「まあ、簡単に言うと、俺の身体のことで振られた感じかな」

「そんなことずっと前からわかりきってたことじゃん。なんで今更」

「結婚ってなると話は違うんだろうな。子供にも俺の病気が遺伝したら怖いっていうのと、俺の苦しむ姿見るのしんどかったって言ってた。でも好きだから言い出せなかったって。まぁ仕方ないよ。こればっかりは気持ちじゃどうにもできないから。俺も沙羅が好きだから別れた。好きな人には幸せになってほしいしね」

「お前やっぱいい奴だな。よし今日は沢山飲め!お前のおごりだけどな」

「ふつうそこはお前のおごりじゃないのか?」

そう言ってみんなでくすくすと笑った。

「でもまあ、ありがとうね」

「おう」

そう言ってしんみりした空気は一気に消え去り、皆の仕事の話や彼女の話、昔の話なので盛り上がっていた。

そしてちょうど1時間くらいが経った後、瑠唯はトイレに行きたくなり席を立った。

「ごめん。ちょっとトイレ行ってくるわ」

「おう、いってらー」

そして車椅子でトイレに向かおうとしたが、途中でタオルと携帯を置いてきてしまったことに気づき個室に戻った。瑠唯は個室に着き扉を開けようとしたが、3人の会話から自分の名前が聞こえてきたので開けずに立ち止まった。

「ねぇ、瑠唯のこと、どう思う?」

最初に口を開いたのは優斗だった。

「別に、昔のままだなって」

「うん。変わってないよね」

隆也と陽向はそう言った。

「そう。昔のまんまなんだよ」

「それが、どうしたんだよ」

「とぼけても無駄だよ隆也。お前瑠唯に会った瞬間思いっきり動揺してただろ」

「まああれじゃあからさまか。でもさ、あんなの動揺するだろ!なんか気味悪いし。陽向はどうなんだよ」

「俺だって気味悪かったよ。でもまだ瑠唯はここにいるし、今こんな話したら瑠唯が帰ってきた後どんな顔して合えばいいかわからないからあえて触れなかったんだよ」

「でもやっぱりみんな気味悪く感じたってことだよな」

「そうだな」

「いくら童顔でもあんなに容姿が綺麗なままなのはきもちわりぃーよ」

「うん。高2に一回集まった時と何にも変わってなかった。ていうかむしろ若返ってるようにも見えた」

「だよな。まるで人形みたいに綺麗だったよな」

「やめろよ気味悪い」

この会話を聞いた時、瑠唯の時間は止まり屍のようになっていた。

「陽向の言った通り今すべき話じゃなかっただろ優斗。あいつが帰ってきたときどんな顔したらいいんだよ。こえーよ」

「よし、ならこの話は一旦忘れよう」

「いや、無理に決まってんだろ」

「でもさ、瑠唯がもし女だったら最高だったのにな」

「容姿が綺麗だから?」

「うん。それもそうだし、もし瑠唯が若いまま年取らないとしたら、ずっと綺麗で金持ちでおまけに人もいいときた。彼女だったら最高物件じゃん」

「まあ確かに。でもまあ男のままでも十分綺麗だし俺わんちゃんあいつとならやれるかもー」

「隆也きもー。そんな目であいつのこと見てたのかよ」

「バカちげーよ。ネタに決まってんだろ。気色悪くて無理だっつーの。それに俺あいつのこと友達とすら思ってねーし」

「うわー。隆也相変わらずひでぇー」

「お前らもそうだろ」

「まあそうだね」

「うん」

「ただうまいもの食べれるから円切らないでいただけで、あいつはただの金蔓」

「にしても瑠唯可哀想。俺たちがこんな事思ってるなんて1ミリも疑ってないぞたぶん」

「まあそうだろーな。でも一生気づかないまま生きていった方が逆に幸せなんじゃね」

「一理あるかも。あいつ友達いなさそうだし」

「付き合ってあげてる俺ら逆に優しいんじゃね?」

「だな。感謝してほしいぜ」

「ほんとお前らクズだな」

「お前もな」

そう言って個室の中から3人の笑い声が聞こえた。

この3人の会話を聞きながら瑠唯は個室の前で拳を固く握りしめ、静かに涙を流し続けていた。

その場にいるのがしんどくなった瑠唯は個室に戻らずまたトイレに向かおうとしたその時だった。

ガタンという大きな音が店内に響き渡る。

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