隠れんぼで見つけたもの
もーいいかーい?
そう俺は目に手を当てながら言った。けど、返事がない。どうしたのだろうか。不思議に思って目から手をどけた。くるりと回って隠れているだろう友達に再び声をかけようとする。
不意に背筋が寒くなった。風が吹くが嫌に生ぬるい感じだ。その場から逃げ出したくなる。けどそれを我慢して俺は友達3人を探しに行った。
1人目の拓郎、2人目の芳雄、3人目の涼太を探すが。どこにもいない。後ろから「おーい」と呼ぶ声がした。
「……そこに誰かいるのか?」
「……いるよ。ぼくのあそびあいてをしてよ」
振り向くとそこには目がない男の子がいた。目だと思われる箇所には黒い穴が2つぽっかりと空いている。
「……お、お前。誰だよ?!」
「ははっ。君はぼくが見えるんだね」
「何を言ってやがる。拓郎に芳雄に涼太。あいつらをどこにやったんだ!」
俺は気がついたらそう叫んでいた。男の子は口角を上げてにたりと笑う。それがまた不気味で後じさる。
「……ああ。あの子達か。ぼくが食べちゃった」
「え。嘘だろ!?」
「ウソじゃないよ。ぼくは鬼の子だから。ヒトの子は大好物なんだ」
男の子の笑みが深くなる。俺は一気に怖くなった。震える足を無理に動かす。背中を向けて走り出した。はあはあと息を上げながら逃げる。
「逃げたってムダだよ。ここは根の国。ぼくのテリトリーだからね」
「拓郎、芳雄。涼太。どこにいるんだよ!」
走りながら叫んだ。鬼の子はさくさくと土を踏みしめてじわじわと追い詰めてくる。俺はとにかく走り続けた。
ゼイゼイと言いながら走る。いつの間にか河原にたどり着いていた。仕方ないので川の中にざぶざぶと入る。水は震え上がる程に冷たい。首元まで川の水に浸かる。
「……誰か。助けてくれ!」
『要一?』
ふと聞き覚えのある声がした。無我夢中で俺は目で声の主を探す。
『……お前。こんな所まで来ちまったか。その川の底まで潜れ。そうしたら戻れる。急げよ!』
俺は頷くと必死に川の底に潜った。息が続くか心配だったが。川の底は真っ暗闇だ。それでも鬼の子に捕まりたくなくてがむしゃらに泳ぎ続けた。
「……よう、要一!」
「……ん。あれ?」
俺は気がつくと自室のベッドの上にいた。服はちゃんと着ているし濡れていない。傍らには母さんが心配そうに見ていた。
「……良かったわ。目が覚めて。酷くうなされていたのよ」
「え。そうだったのか。俺、芳雄達と隠れんぼをしていたはずなんだけど」
「え。何を言っているの。芳雄君達はいないわよ」
母さんの言葉に驚く。どういう事だ。
「……芳雄君や拓郎君。涼太君の3人は昨日に亡くなったの。川で溺れたって聞いたわ」
「……な。そういえば、俺は川には行っていないな」
「そうよ。あんたが寝込んだのは芳雄君達があの世に連れて行こうとしていたのかもね」
母さんの言葉にぞわりと鳥肌が立つ。俺が震えていると母さんは「ゆっくり休んでなさいね」と言って部屋を出ていく。仕方なくベッドに再び横になった。
――終わり――