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ACT.03 初登校日

季節は秋から冬へ・・・そして新たなる春の4月の入学式の日。黒塗りのリムジンに揺られながら、明堂学園に向かっていた

いざ、入学式に向かおうとしたら、家の前で場違いのリムジンが待ち構えていたのだ。いたのは海王渉とその付き人の執事というべきだろうか


「しかし、倍率の高い入試をマジで主席で合格しちまうとはな・・・」

「おかげでに入学の挨拶をしろってさ、全く、お前はフォーミュラスクールに行くと思っていんだけどな、渉・・・」

「SGTから、フォーミュラレーサーになった人間もいるからな、どっち行くとしたら、お前と一緒の方が面白いに決まっている」


呆れながら、渉の言い分を聞く。入学入試自体は難しくないが、モータースポーツ部に入った後が大変なのだ


「お前はスカウトだから優遇されて、一軍確定だろうが・・・オレは二軍から這い上がってこいだからな・・・事情を知っている銀堂監督や槇乃コーチはともかく、他の教員や指導者は実績のないオレのことを知らないし、実力を証明するのは骨が折れる」

「だが、明堂学園のモータースポーツ部は自主性を重んじ、要求してくる。やり方次第じゃ、即日で一軍入りも出来るんじゃないねーか?というかこい」


渉の奴は笑いながら簡単に言ってくれる。コイツはオレを信じてくれるが、正直、オレの実力と戦術が通用するのか半信半疑だ。1on1の特化したドライビングスタイルは、極めて特殊すぎる。明堂学園や他の強豪名門チームのスカウトされる人間は、ジムカーナ、レーシングカートで実績を上げた経験者。実力判断は速さが基準だ。それ自体には間違いないのだが・・・


「まあ、最善は尽くすか・・・」


リムジンは明堂学園の敷地に入る。もはや広大の一言と言っていいだろう

明堂学園には、離れた場所に学校施設が主に2つある。進学コースやスポーツ課の本校、そしてモータースポーツ部門と電子課の校舎。ここがオレと渉が通うことになる。

基礎授業の校舎や体育館は当たり前にあるが、隣接する実習の工場設備や電子機器を扱う建物、そしてこの広大な敷地の大半が練習コース場であることだ。全長約3km程のコースが4つ。そして地下にはオーバルコースも完備されている


「やっぱデカイな・・・やはり自転車より、単車か原付で通ったほうが良さそうだな」

「なんなら、うちの車で毎日通うというのは?」

「やめろ、タダさえ場違いのリムジンがうちの家の前で止まってご近所の注目集めていただろうが。それに、そこまでしてもらうのも執事さんにも悪いだろうし」


黙々と運転していた執事さんの話題を出すと、運転しながら口を開く


「渉様のご友人で、恩人である徹也様の為なら、送り迎え程度、苦でございません。将来は海王グループの重役を担うお方だと、会長から直々にお話ししております」

「聞き捨てならないことが聞こえたんですか執事さん!?誰が海王グループに入社することになってんの?」

「優れた観察眼と洞察力、そして思考能力。そして大人でも言い負かす程の口が回り、相手の本質を見抜く。そんな将来有望な逸材を会長と私が逃すとでも?」


おっかないよこの海王グループの面々共


「これ以上貸しを作るとロクなことにならんから、明日からは単車で通います」

「それは残念」


運転席にいるから、表情は見えんが、この執事、明らかにからかっているのはわかった


「ですが、もしもの時は遠慮なく我々に頼ってください徹也様。昔よりマシになったとはいえ、未だに一族栄光主義に傾向のあると噂の明堂学園と明堂一族。海王グループのご子息である、渉様はともかく。権力で一族の栄光の邪魔になるものは容赦なく潰す」

「まあ、噂は聞いてますよ・・・しかも、オレたちより一つ上に明堂一族のご令嬢がいる」


一族栄光主義・・・明堂学園を経営する名門明堂一族は、一族の繁栄と栄光の為に、一族の生徒を積極的に活躍させる傾向があり、その為には手段を選ばない

学園内で一族の生徒と競争になれば、例え希代の天才であろうが潰される。それも将来すら絶たれるレベルまで

ただ、それは過去の話である。一時期それが表沙汰になってしまい、現在は一族栄光主義を廃した・・・されていたのだが、実際は一族内で一族栄光主義を反対派と参戦派で分裂している・・・複雑な事情が入り組んで弱まったとは言え、一族栄光主義は未だに健在であると言える

執事さんが心配しているのは、去年から明堂一族の本家の長女、明堂明音がモータースポーツ部に所属していることだ


「明堂明音、明堂一族本家当主の長女であり、後継者候補。ジュニアジムカーナ選手権で活躍。明堂学園入学後、SGT前期から一軍のレギュラー入りを果たし、全国ベスト4に貢献。正直、活躍を見れば忖度されてるようなタイプじゃないんですよね・・・実力は本物ですよ」

「・・・お前にしては、明堂明音をかなり高評価してるよな?」

「そうか渉?オレは基本的にいい所を探して、高評価する傾向があるのは認めるが・・・」


渉に指摘され、少し焦ったが、平然を装って答える。素敵な女性な方とか思っていることをバレたら、スゲェいじられそうで


「話を戻すが、今のモータースポーツ部の監督である銀堂監督が掲げている自主性を要求する実力主義は、一族栄光主義とは相反する思想だ。見かけは穏やかな中年紳士だが、話して思考を読んでみたら、中々腹黒いし、勝利の為に手段を選ばず、あらゆる可能性を模索する・・・」

「・・・薄々勘づいていたが、徹也に似ているな」

「渉の紹介があったとは言え、こんな得体の知れない実力の人間を欲するあたりな・・・まあ、そんな監督の元なら、安心だと思うぜ。まあ、用心に越したことはないだろうが・・・」

「・・・とは言え、誘ったオレに責任があるからな・・・じいやに親父・・・オレも、もしもの時は力になるからな、徹也」


リムジンは学園の玄関前に付く、海王渉と山岡徹也。二人の高校生活の始まりを一歩を踏んでいた



憂鬱だ、ため息をつきながらそう思ってしまう。編んだおさげに瓶底眼鏡のような度数が強いメガネ・・・華やかな姉に比べて、性格も根暗な私、明堂明里の高校生活の初めは憂鬱だった。一族の人達が多数来て、私が入学式主席の挨拶をするものだと思っているらしいのだが、実際入試の成績は2番目。こう言うのもあれだが、勉学には自身があった。唯一姉に勝る分野で、これまでもトップだったのに、負けるとは思ってもみなかった

入学式の後に親戚の一族になんて言われるか・・・幸い、お父さんやおじいちゃんは気にしていない所か


「はぁ・・・・」

「な~に辛気臭いため息付いてるのよ明里!」


背中を大きく叩かれる


「わあ!?お、驚いた・・・明音姐さんか・・・びっくりさせないでよ」

「ごめんごめん、でももっと堂々しなさいよ。貴方も一緒にこの学校に通う仲なんだからね」


明るく、眩しい存在・・・私の姉、明堂明音。華やかな功績と栄光、将来の明堂一族を引っ張っていくの相応しい人、陰気な私とは大違い


「今日も朝のトレーニングしてたの?」

「まあね、ドライバーは体が資本だし、それに今年はとんでもない新入生が来るからね」


明音姉さんが、視線で玄関先を見るように促すと黒いリムジンが止まって、そこから男子生徒が降りてきた


「随分派手な登校するわね・・・海王グループのご子息とやらは」

「海王渉・・・スーパーカートの全日本選手権を制した天才、ホントにうちに来るなんて」

「銀堂の叔父様も欲しがる理由はわかるけどね。まあ、もっとも、SGTの試合方式なら負ける気がしないけどね」


明音姉さんと海王渉の話をしていると、リムジンから同じ男子制服をきた人物が降りてきた。全く心当たりのない人物だ


「?なにアイツ?海王渉の知り合いか何かかしら?」


その人物の顔を、正確には瞳のほうに視線がいった。金色というべき瞳と、ルビーのような赤い宝石のような綺麗な瞳


「オッドアイなんて、めずらしい」

「オッドアイ?明理、なによそれ?」

「左右で瞳の色が違うのをオッドアイって言うんだよ。ヨーロッパ系の人とか稀にいるらしいけど、顔立ちから日本人だとすれば、相当珍しいんじゃないかな?」

「ふーん・・・」


明音姉さんにはあまり興味がないのか、聞き流しているような感じだったが。視線は海王渉ではなく、オッドアイの彼のほうに向いていた

彼は海王渉と随分親しげに話しているようだ


「もしかして、彼もモータースポーツ部に入るのかな?」

「だけど、海王渉の周囲の人間にこんな奴見たことも聞いたことないわね・・・一体何者かしら」


海王渉より、オッドアイの彼が気になってしまう。思えば、これが山岡徹也君との出会いであり、因縁の始まりだったのかもしれない

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