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ACT.01 天才最速の少年とオッドアイの少年

大企業海王グループ。そんな莫大な資産を持った家柄の息子の一人として生まれ、将来も約束されたも当然の海王渉は、戯れでレーシングカートに触れたが、才能があり、同時にツーリングレースというのに興味を持ち、幼少からその世界にどっぷりハマっていった

父親は「息子の好きなことをやらせるべき、ただ半端許さない」という教育方針

レーシングカートの大会に出れば、優勝なんて当たり前、連戦連勝・・・いや、何度か負けたか・・・中学に年齢が上がれば、フォーミュラカートのハンドルを握り、フォーミュラカートでも敵はいなかった。栄光の実績を重ねたが・・・強すぎる才能と実力は他のライバルの関係を引き離した。戦わず、走らずとも、オレを見た瞬間に戦意を喪失する光景を見せつけられた

「あんなのに勝てない」「強すぎる」「もう無理だ」「諦めるしかない」聞き飽きるぐらい、そんな言葉を聞いてきた

レースで優勝して栄光の台に乗っても、なにも嬉しくない、車に乗っていてなにも楽しくない、最初の頃感じた、心躍るような快感なんていつから感じなくなったのか・・・車に対して、なにも感じなくなり、好敵手のいない競技は、苦痛だった

そんな思いとは裏腹に、自分の所属するチームや父の経営関係者等は期待を寄せて、板挟み状態だった

「天才」周りはオレをそう呼ぶが、こんなに苦しいのなら、「天才」なんて力なんていらない・・・


そんな、抜け殻のような日々を感じてた頃の中学二年の春頃だったか・・・練習の日付を間違えて、レース場に来てしまった

レース場は貸し切りで、市販のスポーツモデルのチューニングカーの催しが行われいたが、レース自体が変則的なものだと気づいた。暇を持て余してしたので、誰もいない観客席でそれを眺めていた


「これ・・・1on1方式のバトルか?SGTとかで採用されるルールだったような」


1on1で赤と青の86同士のバトルが繰り広げていた。後ろにいた青い86が仕掛け、あっという間にオーバーテイクを成功させていた。その走りに覚えがあった・・・以前、似たようなことをやられた覚えが

久々に、体から熱い何かを感じながら、その勝負を見届けた。その1on1バトルは青い86が制した

自分で言うのはアレなんだが、なまじ動体視力と反応能力が優れているから、青い86に乗っているドライバーのある程度の姿見えていた。自分と同い年か近い世代だろうというのはわかった。見届けたのはそういう興味があったからだ

バトルが終わった86の2台は、ピットレーンに入り、ドライバーが降りてきた。赤い86は大学生・・・20代だろうか?青い86はやはり自分と同い年ぐらいの中学生だ・・・そして、その顔は見覚えがあった・・・いや、あまりにも特徴のある瞳の方に覚えがあった、片方が金色、もう片方が赤色のオッドアイの瞳


「山岡徹也!!?」


思わず、名前を叫んだ。ピットレーンにいる彼に聞こえるように、オレの存在を知らせるように・・・彼と周囲の人間はコチラを振り返り、話しているに気づいた


「おいおいおい!?アレって海王渉じゃないか!?」

「あのフォーミュラカート、全日本選手権優勝者の!?」


ピットレーンにいる周囲ザワつくが、名前を言われた当人は驚きつつも、コチラをじっと見ていて、かける言葉が見つかったのか、コチラに答える


「降りてきたらどうだ!!」


山岡徹也、出会ったのは10歳の頃だったか。レーシングカートの催し物で、彼に完膚なきまで敗北させられたことがあり、特に会話を交わしたことはなかったが、意識はしていた。それ以降もカートの大会で何度か苦渋を舐めさせられたこともあったし、競り勝った時もあった・・・しかし、12歳の頃に彼はパッタリ、レーシングカートの大会に出ることがなくなり、オレはそのままフォーミュラカートの世界へ・・・今日出会うまで存在を忘れていた


「こうやって面と向かって話すのは初めてか。Yガレージのアルバイトの山岡徹也・・・そっちはもう紹介しなくてもわかるけど、確認するぞ。海王渉でいいんだな?」

「ああ・・・」

「マジで本物だ・・・んで、つまらなさそうな顔してるな・・・あんなに活躍してんのにな」


初めて話すのに、結構ズケズケ話すなコイツ・・・確かに、傍から見ればオレはレーサーとして成功する道を歩んでる人間だろう。だが、コイツにオレの何がわかるって言うんだ。コイツに何か期待をしていたかもしれないが、そんなことはなかったか・・・


「うーん・・・お前、この手の自動車に乗ったことは?」

「・・・一応あるが?」


徹也が親指で指す方向を見ながら、ぶっきらぼうに答えると


「なら、オレと勝負してみないか?ZN6 86同士で1on1を」

「1on1?」


急にそんなことを言われて、答えに困ってしまった


「1on1のルールを知らないか?」

「いや、流石に知ってるには知ってるがな・・・」

「やるのは初めてか?大丈夫だ、手加減はしてやるからよ」


徹也の手加減という言葉にムッとしてしまった。オレを一体誰だと思ってそんなことを言ったんだと


「いらねぇよ。オレが先行してやるから、お前が後追いだ。早速やるぞ」

「おいおい、練習とかいらないのか?」

「いらないな」


こっちは真剣勝負の世界で走っているんだ、こんな戯れの走りなんかに負ける気はしなかった・・・そう思っていた

結果は、こっちがノックダウンで敗北した。しかも一周で決着をつけさせられるという


「やっぱ慣れない車と慣れてない競技で、いくらお前でも・・・」


徹也がコチラを慰めの言葉をかけようとしていたが、それを遮り


「もう一度勝負しやがれぇ!!」


結局、その後10セット程走り続け、あたりは日が沈みかけて、オレンジ色の背景になっていた。10戦中2勝8敗の戦績

連続で1on1をやりつづけて疲弊したのか、10セット目には徹也は車から降りず、シートにもたれ掛かっていた。

そんな様子を見て、試合には負けたが、勝負に勝った気になり


「よしゃ!!」


っと、ガッツポーズを決めて見せつけた


「いや、よしゃ!!じゃねーよ!お前の方が負け越してるのに、何勝った気になってんだ!」

「いやいや、こっちはビギナーで2勝もしてるんだからな?逆にお前はビギナー相手に2敗してるんだぜ?」

「物は言いようだなオイ!」


こんな車って楽しいものだった・・・久しぶりに思い出したこのワクワクする高揚感


「・・・シケた顔から、随分生き生きした顔になったな。安心したよ、車が嫌いなんじゃないかって思ってたからな」

「そう思っていたのかよ」

「ああ、一応アンタのファンだからな。フォーミュラカートでのレースを研究材料してよく見ていたし・・・それで走ってる姿を見るだけでわかったよ。コイツ、つまらなそうにレースしてんなって」


・・・もしかして、コイツかなり頭が良いのか?走り合ってみて薄々感じていたが、話をしてみるとそれが余計にわかる。こちらの心理や心情を読み取る観察眼と洞察力・・・


「ついでに言えば、お前の周囲にいるドライバーも原因だろ?表彰台に上がってる姿で、2位と3位が一番嬉しいそうな顔してたからな。どうせ1位の海王渉に勝てないって、最初から諦めているのが見え見え・・・気持ちはわからんでもないが」


こう言ってくれる人間は今までいなかった。周囲はただオレに期待や賛辞の言葉ばかり


「戦争なら、勝てる気がなくなるぐらい強くあるべきだが、勝負事の試合なら、強大な相手に立ち向かえばいいのにな・・・」


徹也は少し考え、何か閃いたようだ


「よし!海王渉!お前を車嫌いにさせない!今決めた!週末ならうちの叔父が毎回こんな催しをやってるから、いつでもこいよ!存分に楽しませてやる」

「おいおい何を急に・・・確かに面白そうだが、今日はたまたま暇を持て余しただけだし・・・オレにはカートでの活動が・・・」


そもそも、今日はほとんど偶然のようなものだしな・・・徹也は意地悪い表情になる


「ほう、海王渉は負けっぱなしでいいということか。まあ、1on1でオレ程度に勝てないなら、将来、フォーミュラカートやフォーミュラーで自分より強い奴に負けて、期待ハズレの天才とか言われるんだろうなー」

「なんだとこの野郎?」


流石にムッと来てしまい、徹也の胸ぐらを掴むが、意地悪い表情から真剣な眼差しでコチラ見る


「海王渉、安心しろ。いずれお前より強くて歯が立たないような相手は現れる。というか、現に現れただろ?それまでの暇つぶし程度なら、いつでも相手になるぜ?」


彼は臆することはなく、堂々とした言葉に、彼を離す


「それに、フォーミュラカート以外に、いろんな車に乗るのもいい経験だと思うし、なにより面白いぜ?オレがいる限り、車でつまらないと言わせないし、思わせない。絶対楽しいと思わせてやる、海王渉」

「・・・人の名前を言うなら、渉でいい」


徹也との再会して以降は、刺激的で、愉快の日々だった。スーパーカートで活躍しつつ、Yガレージに顔を出して徹也と1on1の勝負は勿論、ドリフトなど、様々な車の技をやったり、車についてメカニック的な話や戦術等を話し合ったり、実際にエンジンをバラしてみたりと・・・車に対して苦痛という名前の灰色の光景から、色彩溢れる光景になった

徹也がいる限り、車でつまらないない事はない。今、戦う相手がいなくなっても必ず徹也は追いついてくる



後日談になるが、なぜ練習の日付をオレが間違えたのか、全部親父に仕組まれていたことが後日判明した。


「お前の親父さん。真っ先にお前の異常に気づいていたらしいけど、仕事が多忙で話し合う暇がなさすぎてどうしたものかって・・・それで、オレに白羽の矢に立った。なんとか息子をどうにか出来ないか的な感じで」

「というか徹也、オレのオヤジと知り合いだったのか?」

「レーシングカート時代にお前を何度か負けしているだろ?その時に、オレに興味を持ったらしく、色々話していたり、連絡先を交換してたんだよ」


徹也の言う通り、親父は基本的に多忙だ。大企業グループのトップであるから、話すことも最小限だ・・・実の息子を差し置いて、徹也と話すとは・・・


「それでも、オレのことを気にかけていたんだなオヤジ・・・道理で半端は許さないって言ってる割に、フォーミュラカート以外に、チューニングカーとかで遊んでいるのを咎めない訳か・・・」

「まあ、お前の親父さんは、オレの口の上手さと頭の回転の良さを買ったって所だな。実際、あの日お前が来ることをわかった上で設定して、86もお前仕様に合わせたセッティングにしてたんだよ」


道理で乗りやすい思ったわけだが・・・徹也の分析能力がバケモノ気味って少し引いてる。ここまでドライバーの好みにドンピシャにセッティングを合わせるとなると、相当な時間のドライバーとの打ち合わせが必要だ。でも、徹也は過去のデータからセッティングを算出したんだから


「うーん・・・しかし徹也。上手く行かなかったどうするつもりだったんだ?」

「全然考えてないや、何十時間も考えたことに自信があったし、上手くいくことしか考えてなかったし・・・」


成功することしか考えてないのか・・・いや、それが徹也の強みなんだろうな。金色と赤色の強い意思のオッドアイを持ち、誰よりも車を心底愛してる徹也に、車好きとして、惹かれる

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