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Gとの闘い

7月も半ばになり、連日猛暑のニュースが流れるようになった。

ある日の夕方彼がソファーでうたた寝をしていると、突然机に置いてあったスマホが鳴った。確認してみると、それは親友の園田からの

「至急来てくれ!ヤバいんだ!」というメッセージだった。


彼と園田は、世間一般で言う所のいわゆる腐れ縁だった。高校と大学が同じ上に住んでいるアパートも同じという間柄で、休みになると彼はよく暇つぶしに園田の部屋に行ってゲームをしていた。

普段はお調子者の園田がこれだけ焦っているのは何かがあったのだろう、と彼は思った。何故かは分からないが、少し嫌な予感がした。


彼は寝ぼけた頭のまま階段で一つ下の階へ降りた。アパートの近くの木では、昼間からずっと蝉が合唱を続けていた。

園田の部屋の呼び鈴をならすと奥の方でドタバタという足音が聞こえて、目の前のドアが勢い良く開いた。


園田の焦りようはどう見ても明らかだった。額には油汗が浮かび、トレードマークの黒縁メガネは鼻の頭から落ちかかっていた。

彼が何か言う間もなく、園田は

「早く、早く!」と彼を強引に部屋の中へ引っ張っていった。

「何?どうしたんだよ?」と彼が聞くと、園田はキッチンの壁のタイルを、震える手で指さした。


それは、とても立派な大きさのGだった。しかも、2匹。


彼は思わず「うわっ」と言って目を背けた。

懇願するような目をしている園田を見て、彼はようやく全てを理解した。要するに、自分では退治できないから代わりにやってくれという事なのだろう。


「ふざけんなよ!自分で何とかしろ。」と言って彼は部屋を出ようとした。

しかし園田は、

「頼む藤本!アイス奢るから!」と言ってすがりついて来た。

何故アイスで釣れると思ったのかはかなり謎だったが、必死な様子の園田を見て、彼は思わず笑ってしまった。園田にGと闘う勇気が無いことは、考えてみれば容易に想像が付く事だった。


彼は机に置いてあったからのペットボトルを手に取って2匹のGを見つめた。

彼がペットボトルを振りかぶっても2匹のGはタイルに貼りついたまま動かず、その触覚だけをゆさゆさと動かしていた。


しかし彼がペットボトルを壁に向かって振り下ろした瞬間、2匹のGはその大きさからは想像も付かないスピードで動き出した。園田の「うぎゃー!」という絶叫が、部屋の中、そして恐らくアパート中へと響き渡った。


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