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異界と魔物が現実世界へと転移した異界(ダンジョン)攻略物語  作者: 地雷原のちわわ
第二章 -三黒の刀編-
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-メリクリな探索員の日常1-おまけ-

 季節は冬。12月の下旬。1年も終わりを迎え皆走り出す忙しさがあると思われるクリスマスだ。けれど世間が言う忙しさはなくニートな生活を送っている自分には関係のない話だけれど異界探索員の試験に合格して、つい今朝がた異界探索員証明書というかカードのようなものが送られてきてクリスマスプレゼントにはぴったりだった。


 これで異界に入れるんだ。なんだか実感が湧かない。ネットにかいてあるような防具だとか持ってないし、武器は……家に飾ってあった刀があるけど本当にそれで大丈夫なのだろうか。


 まあ、大丈夫じゃないんだろうけどさ。普通に考えて……魔物を実際に倒すまではよく考えていなかったけど、家に飾ってあった刀でよく戦おうだなんて思ったなぁ。


 案外振り回すことのできる棒きれでもヒノキの棒でも何でもよかったのかもしれない。実際そんなことはなかったけど。


 でも異界探索員になったし、特典で買えたiFunを使っていろんな探索員とコミュニケーションをとったりとか、チームを組んで一緒に探索に出たりとか、自分達より大きな魔物と戦って報酬を山分けしたりとかさ。そんなファンタジーなリアルに足を踏み入れることになるんだ。


 クリスマスとかさ。皆で集まって何かしたりするんだろうかな。


 家族と過ごしたり、友達と集まったりが王道なんだったっけ。それと恋人と過ごしたり……とかだったかな? 


「っふ」


 そんな選択肢は端から無い。思わず乾いた笑いが出てきてしまった。友達と過ごせない人間が恋人と過ごすクリスマスを送れるなんて期待しちゃいけない。天涯孤独ボッチ歴も早4年。1月迎えりゃ5年だ。


「ん、違ったかな?」


 それに期待するも何も行動してないんだから期待すること自体、お門違いにも程がある。


  あぁ……考えるのもなんだか億劫になってきた。最近は裏手の山から黒い魔物も出なくなり見かけることも少なくなったし、白い柴犬は今日も元気にどこかへ行ってしまって多分年明けまで帰ってはこないだろう。


 つまり、一人だ。


 電気はかろうじてついている。水道も止められてはいない。使ってるしね。


 残されたお金がどんどん削られてまるでホームがあるのにホームレスになったような死んだ毎日。


「変わらなきゃな」


 いつまでも昔の思い出に浸って引きこもったり憎悪に振り回されて裏手の山の魔物殺しに行ったりとか、もう異常者だ。


 どれだけ後悔しても家族はいない。どれだけ伝えたい思いや感謝の言葉があっても伝えられない。だけど、生きている。死んではいないし。死んだような日々送ってるけどとりあえず心臓動いてるし、息してるし、転んだら血出たし……生きてるんだ。


 生きている限り、考えて前を見て、つらくてもとりあえず、その先を見続けて行かないとせっかく自分を生んでくれた親に申し訳が立たない。とりあえずそう、思おう。


 まあ、申し訳を立たせる必要があるのかって話だけどね。


 さて改めて……今日はクリスマスだ。気分を変えて装飾でもつけてみようかな。だれが見るわけでもないけど。


 表札とか電飾で囲んだらミッミーマウスで有名なランドのエレクトリカルパレードっぽくなるかな。でもさ、もうそろそろ20第後半の男がさ。単身、実家。しかも一人で家中に電飾飾りまくって「エレクトリカルパレードぉおお!」って騒いでたら周りから、あいつの頭の中がエレクトリカルパレードなんじゃねぇかな?なんて思われたりしないかな。


 いや、大丈夫。無駄にここ人通り少ないし。というか田舎だし、コンビニ近くにないし、駅遠いし。


 うん、問題ない。


 和室へと向かい布団を入れてた押入を開ける。思い出の品々があって目頭が熱くなる。


「全然エレクトリカルパレードできる気がしないや……」


 そして、なんだかランタンっぽいLEDライトがあったのでそれを持って玄関に行き門のちょうど表札のある塀の上にライトをつけて置いた。


「つつましいくらいがちょうどいいや。うん」


 納得して家へと入りごろりと横になる。探索員になった自分のこれからの活躍と湧き出る収益を予想して読めない古い書物を手に取った。


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