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異界と魔物が現実世界へと転移した異界(ダンジョン)攻略物語  作者: 地雷原のちわわ
第一章 -異界探索、上層編-
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第12.5話 -昼食の駆け引き-

 朗らかな光に包まれ二人の間に流れる風は優しく心地よい。


「いただきます!」


インベントリーバッグから取り出したおしゃれな包みから出てきたのはタマゴにきっとマヨネーズや塩コショウで味付けしたであろう具をはさんだサンドイッチとハムとレタスをはさんだハムサンドだ。


対してこちらはそんなおしゃれなものを見せられてしまっては、とてもじゃないが開けずらい。


おいしそうにサンドイッチを食べる夜空。


「あれ? お昼持ってきてないのですか?」


「あ、いや持ってきてるのですけど・・・」


そういいながら渋々と鞄の中を見る春人。


なんだかしっかりとしているお弁当を持参している夜空の前で昨日仕込んだ謎肉を焼いて持ってきて豪快にバンズに挟んで食べようというザ・オトコ飯を見せるのはなんだかとても恥ずかしい。


だそうか、ださないかと迷っている最中夜空が切り出す。


「私、イチゴジャムサンドももってきてるのでよかったらまだ手を付けてないハムサンドをあげてもいいですよ!」


ああ、なんという眩しい気づかいだろうか。

さっきまで謎肉をお見せするのが恥ずかしいなどと考えていた自分が恥ずかしい。


「あ、いや大丈夫です!」


「遠慮、しなくてもいいのですよ?」


「しっかり用意してるのですが昨日解体したイノシシ肉を豪快に持ってきてて、夜空さんのおしゃれなお弁当を見てたら謎肉が若干恥ずかしく・・・」


「んん?」

首をかしげる夜空。


「別に異界で採れたものを食べる人は、そんなに珍しくはないですが、あのイノシシ肉・・・調べても未確認生物ですけど食べれるのですか?」


「そりゃもうジューシーな黒毛和牛でした!」


ごくり、と気になる様子の夜空さん。

「お腹壊してません?」


「しっかり焼きましたし大丈夫ですよ!」


半信半疑の夜空、だが好奇心からか若干気になるようでこちらをうかがう。


リュックからイノシシ謎肉を取り出して夜空に見せる。


「あぁ、おいしそうですね・・・」


「うまくやけました!」

「チャーシュー風です」


ごくり、と興味を持ち始める夜空。


「昔、異界で採れた豚の魔物の肉でお腹を壊したっていう話あったじゃないですか?」


「ええ、ありましたね」


「きっとあれはしっかりと焼いてなかったからだめだったのだと思うのですよ」


「?」


「だから、この異界のイノシシもきっとしっかり火入れをすれば大丈夫なのです」

「現に私はぴんぴんしてますでしょう?」

「よかったら一切れどうぞ!」


にやりと興味津々の夜空に謎肉の一切れを差し出す。


「あれって確か豚の魔物の油が人の体内で分解と吸収ができないっていう話だったような・・・」


「え」


「え?」


あ、やばいしっかり火を通してるから大丈夫だという浅はかな考えが根底から覆されてしまった。

だが、もう食べてしまっているので後には引けない・・・


それに、あれだけのお肉をどう処理したものか。


とりあえず、差し出した一切れを焼き立てではないがあのジューシーなおいしさを夜空にも知ってもらいたいという悪魔的な考えが脳内を過った。


「どうです?」


悪魔的な微笑みで夜空に差し出す。


「噛んだ瞬間に肉汁が溢れ出してうまみとチャーシュー風の味付けがより肉そのもののおいしさを増させてる一品ですよ?」


ごくりとその一言に食いつく夜空。


「んーー!!」

「そんな言い方をされてしまったら食べないって言えないじゃないですか!!」


かかった。

変な仲間意識が芽生えかけたその心とは裏腹に後輩に一体なんてことをしているのだろうかという冷静な視点で見ている自分がいるため少し心苦しい。


だが、勧めて損はない。食べてみて損はない!そんな、少しだけ広めたい欲求が出てくるおいしさだったのだと。


自分を正当化して夜空が、その一切れを食べる瞬間を見届けた。


「んん!!」

「確かにおいしいです!」


「ですよね!」


「なんだか噛めば噛むほどにほろほろとお肉の繊維が崩れてうまみがじゅわっと染み出る感じがとてもいいですね」


「いやぁ、勧めたかいがありましたよ」


「ですけどこれでお腹壊したら白縫さんを呪います」


「ええ?!」


「ええ!っじゃないですよ!」

「あんなにおいしそうなお話をされたらよくわからないお肉でも食べてみたくなるのが探索員なんですからね!!」


一時は呪われる宣言をされたが、その後、1週間経ってもとくに問題がなく普通に食べれるお肉だとい発覚し実際に呪われることはなかった。


昼食の時間は談笑と供に過ぎ去り、ごちそうさまの合図をもってその場を後にした。

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