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異界と魔物が現実世界へと転移した異界(ダンジョン)攻略物語  作者: 地雷原のちわわ
序章 ー駆け出しの異界探索員ー
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第10話 -異界攻略-

「探索に行ってくる!」


 そう言って一週間、または数週間帰ってこない探索員もいる。


世間では「死んだんじゃないか?」などと噂されたりもするがひょっこりと元気に帰ってくる者もいれば、そのまま帰らぬ人となる者もいた。


それは、探索に出る。と言っても異界に出てしまえば以前探索した階層まで向かうのにそれなりの時間がかかる。


そのため、より深く潜るとなるとなると、装備と物資がより必要になるのだ。


これらの理由により最前線など深いところへ行く探索員は、自然と大きな団体になる事が多い。




 太陽は、ほぼ真上なのに冷たい日差しが降り注ぐ1月の寒さ。


毒蜘蛛との戦いで得た素材を売り、今まで買えずにいた防具を買って店を出た。


そして再度大宮異界へ行こうか迷う。


前回は4階層まで攻略するのに1日費やしたからこれから行ったとしても5階層をマッピングするので精一杯だろう。


それに今日はイレギュラーな事態に巻き込まれた。


こういう勝負事とかで勢いの良くない日は、深入りしない事に越したことはないからな。


今日のところは……


ん~。


行こうか。


せっかく甲殻装備を一式買ったんだ、しっかり防具を着用してても動けるかどうか試して素材を採って帰ろう。


「よ~し! 今日の目標は7階層だ!!」


1人なんてディスアドバンテージにびびっていては始まらない! 自身を鍛えぬいてこそ探索員だ。


いろいろ考えたところで装備を買ってしまった以上お金が無くなった。つまり今日の稼ぎは今のところほぼ0なのだ。


大宮異界へと再突入する。この時間帯は午前中の早い時間と違いチラホラと探索員が行き来するのが見える。


ここまで人がいると魔物は出てこないだろうな。

人の多い異界にわくわくと残念さを感じながら凸凹とした道を歩く。


先程探索したルートとは別の道を通り難なく2層へと降りた。

1階層と2階層での風景は対して変わらず1層と同じくアラネアが出現する。


けれど、1階層と2階層とで比べて違うところといえば広さだ。

1階層から2階層まで最短で降りようとすれば15分くらい歩けばすぐに降りることができる。


それに対して2階層は、急いで3階層に降りようとしても少なくとも30分はかかる。


ここのマッピングも2時間くらいかかったからなぁ……


異界のマップは公式ホームページで全国の異界の踏破された階層をあらかた配布している。


それでもマッピングする理由が、過去に家の近くに出現した異界へと入り、そのまま迷って大変な目にあった経験からしっかりと練習がてらやるようになった。


マッピングと言ってもコンパスが効かないので方角はわからない。


それで、やり方は単純に通った道を線で描きメモをするというような独自の方法で行っている。


参考にならない場合もあるが、思い出す分にはそれなりに役に立っているので今でもこの方法でマッピングをしている。


大宮異界は、出現した時期も早く最前線は、51階層とそれなりに踏破されている。

一部階層は迷わないように王道の探索ルートも決まっている。


探索に不慣れな初級の探索員や開拓しなれてないチームにとっては良い練習場所にもなっているのも開拓された異界の利点だ。


その反面、決まったルートでは、他の人が魔物を退治しており魔物が全く出てこない。


これは、探索は学べるが魔物を倒すすべは学びづらい上に初級探索員の懐事情を悩ますデメリットがある。


大宮異界の場合は、入る探索員が多いというのもあり1~3階層は早朝でもないとなかなか魔物と戦うことはできない。


黙々と歩き続け2階層を難なく抜ける。


そして3階層へと降りることのできる石階段を下り、3階層の探索を開始した



3階層も2階層と同様の広さと迷路のような洞窟で構成されているのだが足場がゴツゴツとしており歩きにくくなっている。


この道を最初に歩いたときは、途中で息を切らしながら休憩したものなのだが不思議と疲れは感じてない。


探索員になる前は、普通の店員として働いていたのだが大して運動ができるわけでもなく日々を楽しく過ごしていた自分にとって過酷な労働環境だった。


しかし、2度しか来ていないはずなのに体が妙に慣れている。

慣れているというより、この体が自分のものであるのか? という疑問を付けたくなるくらいに成長しているのだ。


異界の不思議な感覚に少しだけ背筋がひんやりとしたが、体が丈夫になると心も丈夫になったような気がするため今はあまり気にしていない。


4階層へと降りる道に向かって歩き続けた。


すると、白く照らされた洞窟の奥から カタカタカタ と複数のアラネアの歩く音が聞こえた。


さっと右手を刀へとおくり、しっかりと握って自身の足音を消しながらゆっくりと近づいて行く。


広さは申し分ない。

だが、目視でアラネアは確認できない。


数歩、また数歩と音源へと近づいていく。

ちょうどいびつな十字路となっている場所に突き当たった。


ゆっくりと右方向の通路を見るとアラネアが3匹いるのが確認できた。


それらが通路の反対方向へと行ったり戻ったりを繰り返しながらその場に留まっている。


呼吸を整える。


アラネアの弱点は頭部と裏の腹部だ。

弱点というより必要な甲殻を傷つけずにアラネアを絶命させることができる利点がある。


さあ、狙うなら後者はあまり現実的じゃない。

だとすると、頭胸部の先端を斬る。


ゆっくりと刀を抜く。

魔物とはいえ命を狩り取る重さを感じ、鼓動が速くなる。


準備はできた。

やつらはこちらの存在を気づいてない。


例え勝利が確約されたような弱い敵であろうと侮るなかれ。

この教えを胸に、3つ心で数え前へ出ることを決めた。


1つ。


2つ。


3つ!!


地面を強く蹴り、飛び出して走りながら刃先をまっすぐ手前の蜘蛛に向かってたてる。

アラネアたちは気づき戦闘態勢に入るが遅い。


手前にいた1匹目の頭部に向かって刀を突き立て串刺しにした。


まずは、1匹!


串刺しにしたアラネアが絶命した感触をわずかに感じながら右へと振り払い刀を抜く。


その際も左ななめ、1歩先にいる2匹目を見つめながら振り払った刀を踏み込みの動作とともに脇で構え右から左へと一閃。

斬り払った。


2匹目のアラネアは避ける暇もなく地面と平行の線を描きながら真っ二つになる。


2匹目!


そして3匹目へと目を向けようとしたその時、最後のアラネアが飛びかかってくる。


その飛びつきの数倍速い魔物を知っている。


即座というより反射的に反応し、左へと振り払った刀を反対方向へと持ち直し、飛びかかってきたアラネアを先ほどとは逆に斬り払って腹を切り裂いた。


だが、構えも握り方も甘かったためか当たりが浅い。


飛びかかってきたアラネアは春人の後方へと転がり落ち腹を上に向けながらもがく。


そこへ、右手で脇差を抜きアラネアの腹部へと止めの一撃をいれた。


次第にもがいていたアラネアが動かなくなり命が消えゆくのを感じつつ周りに敵対する他のアラネアがいないかを確認した。


刀がアラネアの緑色の体液でドロドロしているのをさっと雑巾で拭き取り鞘へと収める。


「勝った」


小さな勝利の余韻に浸りながらアラネアの解体に早速取り掛かった。


初めてアラネアと対峙したときは、飛びかかる攻撃にあたったり、刀が思うように当たらず噛まれたりと散々な目にあったが、何回も戦ってると慣れるものだ。


だが、慣れたとはいえ解体作業はあまり良いものではない。


アラネアの売り物になるのは頭胸部と腹部を覆っている甲殻だ。

今回、解体できた甲殻は合計6枚、それ以外は売れないため、まとめて隅においておく。


しっかりと穴を掘って埋めてやりたいところではあるが生憎ここは洞窟だ。


解体を一通り済ませ、甲殻をリュックに入れた。


十字路に戻り4階層へと降りる道を目指す。


歩き続けて、3人組のチームと擦れ違い挨拶を済ませたりと探索は順調だ。

地図様のメモを開き、それに書き込みながら進んでいるのが見えた。


自分も前回はあんな感じだったのだろうな、と少し親近感をいだきながら歩く。先程の戦いで高ぶった心を落ち着け、ようやく4階層へと降りる道にだどりついた。


坂のような道で階段ではない。


ここが異界の不思議なところだ。


下の階層へと至るための道は何も舗装されてない場合と舗装されてる場合とがある。


先人の誰かが整えたわけではない。


それにもかかわらず階段などの人が降りやすいように調整された道がある場所とない場所があるのだ。


自然にできるような産物ではないため、異界の先駆者がおり探索しやすいように過去に加工されたのではないかとう説もあるが確かめるすべなどない。


これではどこが次の階層なのかわからないではないかとも思うのだが、異界は、階層ごとに違う創りであることが多い。


それに言葉では言い表し難いのだが、雰囲気が違うのだ。

景色は似たようなものなのだがはっきりと違う階層であると認識させられる。


その不思議な感覚を降りた先で感じるため自分でも理解ができない。


坂道を下り続け、4階層にたどり着いた。


光源などが整備されているのは3階層までで、ここから先は人工の光を頼りに動くことはできない。


つまり、用意されたレールの上を走ることを許されず自身の好奇心と冒険心のままに探索することを余儀なくされたということでもある。


LEDランプを取り出しスイッチを入れ白い光で周りを照らした。


滴る水の音が反響し、どこかで武器を振り回すような音がする。

4階層は、今までの階層と違いとても大きな空間を有する洞窟なのだ。


今もチラホラと他の探索者の光源が見える。


その大きな空間は部屋というべきなのか、そのような単位でつながっており、迷路のような構造ではなくただ広く、暗い空間の中下の下層へと降りる道を探さなくてはならない。


前回攻略した場所までを記したマップを取り出す。

こう広くてはいまいち自分の位置を掴みづらい。


だが、訪れた広い空間を部屋単位で記録しているため、なんとなくだがわかる。


暗く全体像はいまいち掴めないが段々畑のような構造の床を斜めに抜け目的の場所へと目指す。


この大きな階段のような床がとても体力を奪うのだ。


疲れながらも次の大きな空間へと至る道にたどりつく。


次の場所へと抜ける道は2、3階層でみた洞窟の広さと同じような大きさで代わり映えのないような大きな空間に出る。


多少の景色は違えど大差ない洞窟のためすこし道を間違えたり方向感覚を失ったら迷ってしまいそうになる。


こういう時にコンパスがしっかりと機能してくれてたらなぁ……


そして大きな空間を6部屋程通り抜ける道中、アラネア4匹と遭遇するも難なく切り抜け甲殻8枚の戦果を得た。


ようやく、前回探索を切り上げたところである5階層へと降りる階段の手前までたどり着く。


自身が未開拓の領域へと足を踏み入れるため、武器や防具を再度チェックした。


さて、今は15時か……

1時間くらいを目安に探索して帰るとしよう。


心の準備を整え5階層へと降りる。

春人メモ

 異界探索は、閉鎖されてるせいかインターネットもつかえず携帯端末での通信は行えない。

だが、同一異界での無線やインターネット環境を地上から引っ張ってくれば使えるため一部異界では整備されているが何分お金がかかるため何もしていない異界の方が大多数だ。


それに加えて魔物による破損も少なくないため地上からインターネット環境を異界に引っ張ってくるというのは成功例もあるが現実的ではない。


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