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KTO日蝕号  作者: RAMネコ
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8/12

番外編「間違っていても」

正直、今でも僕の判断が正しかったのかはわからない。親は確実に泣くだろうけど。でも……いられてよかったのかなぁ、少しは。


「奈緒子!」

「あっ、はい」

「班長なんだからシャキッとしなさいな」

「ご、ごめん……」

「謝るまえに!消耗品の申請を主計課に提出する!もう纏めた?」

「しまった、まだだ!」

「吾妻さん怒るわよ。あの人、数字担当の笹葉君と火花散らしているんだから。データ報告が無くて遅れて負けたなんて、何を言いつけてくるか」


ごもっともです……。


「日蝕号は巨大な武器庫で、それをどう使うか、何を使ったかはとても大事だよ。本当にしっかりしてね。ーーそうだ、疲れてるなら、何か飲み物を持ってきて」

「あっ……」


言い終わるまえに行ってしまった。報告書纏めないと。えっと、


「……」


どうやって?


報告書の形式は?書体は?必要なデータはどこで確認できるの?僕は何をすればいいの?わからない、わからないよ。何もわからない。え?何を、どうするの?誰かやってくれる?待ってればきっと誰か


「ッ!」


ぺちん、と両頬をサンドイッチみたいに挟んで叩いた。ちょっと、ひりつくけど、よし、落ち着いた。僕がやらないとね。駄目だよ。


「あっ、なんだ、ちゃんとデータあるじゃん」


大宮班ーー僕の名前がつくって恥ずかしいよーーのグループネットの中に、戦闘で消耗したものが報告としてあがってる。このデータを纏めて、主計課に転送すればいいんだよね?


「数字を足していくだけだから簡単、簡単」


と思ってたんだけど。


「うん?」


個人宛のメールだ。差出人は山中祐樹……怒られ案件かな?戦々恐々と開封した。


〈本日の戦いぶり、見事なり〉


それだけ。……なにかのジョークなのかな……笑えばいいんだろうけど、失笑でごめんなさい……。山中さんて変な人だよね。


色々と悩んだけど、クローンとか、お金をかけて調整してるのに能力が低いとか、新しいクローンの私とか。色々あったけど、前の私は死んだて考えよう。


ーーということを七篠さんに背中叩かれながら言われた。


「あんた何考えてんの」

「え!?わ、私……何か?」

「辛気臭いのよねぇ。一回くたばったんだから前向きに生きなさいよ」

「くたばったて……」

「クローン仲間だからさ、代わりなんて幾らでもいるくらい知ってるわよ」

「はぁ」

「はい!でしょ!!」

「は、はい!」

「いいじゃん。私なんて素体が悪いのに、失敗作だって姉妹が一〇人いるわよ」

「お、お沢山で」

「そんなことより、あんた、大宮奈緒子として生きようって考えがバレバレなのよ」

「はぁ」

「天才なんてなれないんだから、おどおどしてるなりにがんばりなさい!」


七篠さんて、ちょっと変わってる。山中さんもその影響を受けたのかな?


変と言えばそう、山中さんはやっぱり変。


「ずるくね?」

「え?」

「ハンデつけて、ハンデ」

「シミュレーターは訓練なので、あまり都合が良い状況にこだわるのは……」

「大丈夫、大丈夫、遊びだけ」

「でも駄目です。七篠さんに禁止されたんです。山中さんを甘やかせないでね、て」

「あいつ、そんな口調だった?」

「正確に再現すると、あの馬鹿の肉を取り上げるために足腰砕いて半殺しにしてくれ。て言われました」

「あの女ぁッ!」


七篠さんと山中さんは仲がいい。羨ましい。でも七篠さん、最近の山中さんと距離を感じてると思う。気になるな。


「マラソンキツイ……」

「ほらほら、軟弱モヤシ、お尻蹴られる前に走った、走った!」

「鬼だ……」

「あら。角を生やして、食べちゃうわよ」

「七篠は化け物てわかったけど、大宮まで俺より体力あるとは思わなかった。オタクでモヤシだと信じてたのに」

「あはは……」


日蝕号は広くて、時々体力維持というか訓練で走り込みがある。山中さんはいつも最後列で、七篠さんに背負われて完走している。七篠さん、背が小さいから山中さんの足を引きずるけど。


奇妙な縁で、私は日蝕号に乗り込んだ。KTOが募集した乗員に、勢いだけで応募した。家出して、どこにも行けないから、お腹が空かなくて、家がある場所をと流れ着いただけ、なんだけど。


「大きいフネだもんね」


部屋は大きい。個室でも、家よりも大きいかも。足を伸ばして寝られるし、部屋に本棚も


「あ゛!!」


忘れてた。本棚からプリントされた教本を取り出す。本当は、記憶を焼いたほうが早いけど、そうでなくてもデータ管理すればいい話なんだけど、私は紙束をめくるのが好きだから印刷した。


面倒なのは、本を開かなくちゃだけど、そこは好き好きだから。


ニューカーマインの『対抗ミサイル戦におけるアタックアンドディフェンス理論』て論文だ。従来は、エネルギーシールドを維持しつつ接近するのにプロトンビームを控えてE消費を抑えるのがセオリーだけど、この理論だと相手と倍するなら、あるいはミサイルの効率的運用を列記しつつ、プロトンビームの積極的な利用を書き込んでいる。


面白いな、と思った。


数字の機微に詳しい笹葉さんとも相談して、プロトンビームを拡散させて掃討する技を使うには、なかなか大変だ。


あっ、あとで謝っておかないと。


拡散にはシールド整流装置を利用してたから、たぶん、いくつかは溶けたかも。


「ミサイルの弾頭にももっと詳しくならないと」


対艦ミサイルと言っても、色々なのだ。分厚い装甲を侵食して分解する弾頭、衝撃波で結合を破壊する弾頭、シールドに過負荷を与えやすい弾頭……素早く、相手を見て切り替えないと。それでも遅い、もっと早く予測して、先手を打ち続ければ敵も管理できる。迎撃しか考えられないなら、勝つのは簡単だ。


先手ーー先手には、知ること。知っていれば、勝てる。


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