表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/22

07 野外戦闘実習

 蒼穹にくっきりと浮かび上がる、新緑の稜線。


 ……ばしゅぅぅぅぅぅぅーーーーーっ!


 時折、噴煙のようなしぶきとともに、もうもうとお湯が吹き上がる。

 陽の光を受けてキラキラと輝く雫に、いくつもの虹がかかる。


 ところどころにある穴から、定期的に吹き出すこの間欠泉。

 それこそがこの、『お漏らし山ピーイング・マウンテン』の名物であった。


 そんな、絶え間なく濡れ光る木々の山の麓には、20台ほどの魔導トレーラーが並んでいた。

 後部に寝かされる形で積まれたゴーレム、騎士(シュヴァ)たちが次々とジャッキアップしている。


 起立したゴーレムから順に地面に降り立ち、彼らは広場に会してそれぞれの武器を自慢しはじめた。



『見てくれよ、コレ! パパに頼んで買ってもらった、最新式のクロスボウだぞ!』



『そんなの、大した威力じゃないだろ! それよりもこっちの長弓のほうが凄いぜ! ぶっとい柱みたいな矢で、騎士(シュヴァ)でも一撃で串刺しにするだからな!』



『今日の相手は墓標(グレイヴ)なんだから、そんな装填に時間のかかる武器だと1匹も仕留められねぇぞ! 相手は亀みたいなものなんだから、飛び道具だっていらねぇよ!』



『そうそう! このナックルダスターが一番だぜ! 先っちょについたトゲトゲで、ゴミどもをギッタギタのミンチしてやるんだ!』



 この世界に流通しているゴーレムには、コクピット内で発した声が機体を通じて外部に拡声されるという、マイクとスピーカーのような機能が付いている。

 これを通称、『ボイス』という。


 さらに、搭乗しているパイロットの様子が、コクピット内のカメラのようなものを通じて、機体の頭部より上の空間に映し出される機能もある。

 これを通称、『フェイス』という。


 このふたつの機能のおかげで、彼らはゴーレムごしにテレビ電話のような会話ができるというわけだ。


 ちなみにではあるが、そのふたつ機能は墓標(グレイヴ)にはないものとされている。


 モーターショーのように、勢揃いした高級ゴーレムたち。

 それらは同じものはひとつとしてなかった。


 スポーツカーのように流線型のデザインだったり、戦車のように四角くゴツかったり、丸っこくてカラフルだったりと、形状もカラーもバリエーション豊富。


 しかしその頭部に映し出されている『フェイス』はどれも、年端もいかない子供たちであった。


 そう。彼らこそが今回、4PP(フォー・ピープル)第12隊を狩りにやってきた、『カルフール王国立第四 騎士(シュヴァ)中学校』の生徒たちである。


 みな貴族や軍人、豪商などの豊かな者たちなので、騎士(シュヴァ)も既製品ではなくてオーダーメイド。

 運搬用の魔導トレーラーや、整備士なども専属で雇っており、ゴーレム乗り(ドライバー)の環境としては、申し分ないものでる。


 彼らは何不自由なく、なんでも買い与えられ、親の七光にひれ伏す庶民たちに囲まれて育ったせいで、いかにもアンポンタンかつ傲慢な人間に育っていた。

 その中でもひときわ、愚かさに磨きをかけていたのは……。



『長弓もクロスボウもナックルダスターも、どれもたいしたことないたぬ。ボックンのこれを見るがいいたぬ』



 美食で肥えた丸顔が、映し出されたフェイス。

 関取のように、贅肉で詰まったボイス。


 それが彼にとってのコンプレックスなのか、搭乗している機体はやけにスリムでシャープ。



『すげえ! コダヌが持っているの、リピーターじゃねぇか!』



『そうたぬ。火薬(ひぐすり)の力で鉄の(つぶて)を連射して、あっという間に蜂の巣にするんたぬ』



『そんなすごい武器、どこで手に入れたんだよっ!?』



『ふふん、カルフール王国正規軍にいるパパンに、おねだりしたんたぬ』



『ってことは、軍用!?』



『ヤベぇ! そんなの一発でも食らったら墓標(グレイヴ)なんて蜂の巣どころか、粉々になっちまうだろ!?』



『そうたぬ。でも簡単には殺さないたぬ。まずは脚をバラバラにして、中の乗り(ドライバー)を引きずりだして、さんざんオモチャにしてやるんたぬ。どうせ死ぬ運命にあるのだから、せいぜい楽しませてもらうんたぬ』



『そっか! たったの20匹しかいないから、あっさり殺すのもつまんねぇよな! 中のゴミを弄ぶってのもいいな!』



『さすがコダヌ! 軍人の息子だけあって、ゴミどもの利用法を知ってるなぁ!』



 盛り上がる男子たちの輪の中心にいたのは、他でもない。

 4PP(フォー・ピープル)の小隊長、ダヌキのひとり息子、コダヌ……!


 彼は父親の復讐に燃えながらも、ちろりと女子たちのほうを伺っていた。


 花のように美しい騎士(シュヴァ)たちの中心にあったのは、ひときわ咲き誇る大輪の花。

 純白のウエディングドレスのような華やかな機体に、流星のようなレイピアを携えている。


 フェイスには、やさしさと強さを兼ね備えた、お嬢様の中のお嬢様といった少女がいた。

 周囲の女子たちに微笑み返す彼女に、コダヌは誓う。



 ――これから来る、ネクローとかいうパパンの仇をメチャクチャにしてやるたぬ。

 それどころか服までひん剥いて、泣き叫びながらお漏らしする様を、フルールルさんに晒してやるたぬ。


 そうすればボックンの圧倒的な強さに、フルールルさんも振り向いてくれるたぬ……!



『おっ! 今日俺たちにやられるゴミどもが、ドナドナされてきたぞ!』



 男子のひとりが気付いて指さすと、あぜ道を上ってくる魔導トレーラーが見えた。


 専属の魔導トレーラーに、ゴーレムと多数の整備士を積んだ、お坊ちゃんお嬢ちゃんたちとは大違い。


 1台の連結トレーラーの中には、20台もの墓標(グレイヴ)が檻の中でひしめき合い、振動のたびにぶつかり合って、今にも壊れそうなほどにカチャカチャと音を立てている。


 さながら、船で運ばれてくる奴隷たちのようであった。


 墓標(グレイヴ)には『フェイス』がないので、中にいる乗り(ドライバー)たちの表情はわからない。

 しかし機体はどれも、生きるのをあきらめたかのように、がっくりとうなだれている。


 その中で、例によって悪目立ちをしていたのは……。


 純白の、墓標(グレイヴ)っ……!

 葬列のような、ツヤひとつない墨黒のなかで、ピッカピカのエナメルホワイト……!


 遠足に向かうバスの中の子供のように、ワクワクテカテカと鉄格子につかまり、外の風景を見回している。

 射的であれば真っ先に撃たれそうなほどの、圧倒的な存在感であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★クリックして、この小説を応援していただけると助かります!
小説家になろう 勝手にランキング script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ