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崖っぷち貴族の生き残り戦略  作者: 月汰元
第7章 迷宮と宇宙編
312/313

scene:311 雅也たちの初陣

 一方、地球ではフェシル人のワープゲートが起こした事故により大騒ぎになっていた。ワープゲートのテストは動画撮影されていたので、その映像を各政府が分析を始める。


 共同でチームを作って調査するのが効率が良いと分かっているが、各国政府は独自の調査をしたいと主張した。反対する必要もないので、小惑星ディープロックを管理しているマナテクノは、動画データをコピーして各国に配った。


 もちろん、日本でも分析している。それにマナテクノでも独自に調査していた。その結果、雅也を含む五人がワープゲートに吸い込まれた事が判明した。


 その後、雅也の友人である斎藤から雅也が無事であり、別の惑星らしきところに居る事が知らされると、小雪や神原社長が安堵した。


   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆


 雅也たちは見知らぬ森の中をゲートマウンテンと名付けた一番高い山に向かった。武術で鍛えている雅也と宇宙飛行士だったカヴィルは別として、他の三人はすぐに疲れた様子を見せ始めた。


「少し休ませてくれ」

 フューゲル技師が最初にギブアップした。仕方ないので、大きな岩がある場所に座って休憩する。雅也は収納空間から、ペットボトルに入った水を取り出して配った。


 雅也も水を飲みながら、風を感じた。外気温は二十度ほどだろう。暗くなれば気温も低下するだろうから、焚き火が必要になるかもしれない。


 周りの景色を見ると、地球の森とは違っている。ここが地球ではないと感じるのは、オレンジ色や青色の巨大キノコが生えている光景だ。その巨大キノコは高さが一メートルを超えるものもある。


「改めて見ると、奇妙な植物が多いな」

 レーヴェン博士が言った。それには即座に全員が同意する。

「あれは何でしょう? 土から老人の顔のようなものが出ていますよ」

 清水が変わった植物を見付けて知らせた。


 雅也は清水が見ている先に目を向ける。本当に老人の顔のようなものが土から出ており、その頭部から青々とした葉っぱが伸びていた。その姿は何かで見た事がある。だが、それが何だったのか思い出せなかった。


 フューゲル技師が無防備に近付いていき、いきなり葉っぱを掴むと引き抜こうとする。雅也は嫌な感じを覚えて止めようとした。しかし、それは手遅れだった。フューゲル技師がその植物を引き抜いたのだ。


『ぎょぎぇえーー!』

 奇妙な植物の口から、魂を削るような破壊力がある叫びが発せられた。それを聞いたフューゲル技師たちは頭を抱えて昏倒する。


 雅也自身も頭に強烈な痛みを覚えて呻き声を上げた。引き抜かれた植物は赤ん坊のような形をしており、フューゲル技師の手から落ちると走って逃げて行った。


 雅也は人間のように走り去る植物を見て目を見開く。

「嘘だろ。あれはマンドレイクなのか?」

 野菜の一種であるマンドレイクは、ナス科マンドラゴラ属の植物だ。だが、同じ名前で伝説になっている植物がある。それは人のように動いて引き抜くと悲鳴を上げ、その悲鳴を聞いた人間は発狂すると言われているものだ。


 地球では迷信や伝説の類なのだが、ここには伝説通りの植物が存在するようだ。マンドレイクの姿が見えなくなると、苦しんでいる清水たちの姿が目に入る。たぶん放っておいても治ると思うが、『治癒』の真名術を使って治療する。


 すると、すぐに痛みが引いたようだ。

「助かったよ。君は治療ができる真名も持っているのだね」

 レーヴェン博士は驚いたようだ。


「今のは何だったのです?」

 清水が起き上がって質問する。

「マンドレイクみたいなものだった。但し、伝説の方だ」

「ファンタジーな映画の中に出て来るような植物ですか?」

「あれが植物かどうかは分からないが、そう考えていいと思う」


 レーヴェン博士が心配そうな顔をする。

「博士、どうかしたのですか?」

「マンドレイクが存在するという事は、魔物と呼ばれるような危険な野生動物も居るかもしれない、と思ったのだ」


「そうですね。居るかもしれません」

 雅也がそう言うと、フューゲル技師が青い顔になる。

「武器もないのに、移動するのは危険じゃないですか?」

 雅也は蒼鋼製の長巻が予備として収納空間に保管されているのを思い出して取り出した。それはデニスの世界で作られたものである。


 フューゲル技師たちに長巻を配る。清水も珍しそうに長巻を見ている。

「これは異世界の武器なのですか?」

「異世界で作られた武器だが、元は日本の長巻を真似て作ったものだ」

「長巻?」

 清水は長巻を知らないようだ。日本人でも知っている者は少数派だろう。雅也は日本刀に長い柄を付けた武器だと説明した。


 一応使い方を説明する。握り方や振り方を教えると四人は少し練習した。清水、フューゲル技師、レーヴェン博士の三人は長巻に振り回されているような感じだったが、さすがに鍛えているカヴィルは三人よりマシだった。


 それから二キロほど進んだ地点で、脅威となる野生動物と遭遇した。縞模様のハイエナのような生き物で、体格的には虎である。ただ顔がハイエナなので迫力に欠けている。


 だが、その縞模様ハイエナが牙を剥き出して唸り始めると、フューゲル技師たちの顔に恐怖が浮かび上がる。普通にしている時のハイエナは愛嬌があるのだが、威嚇している時のハイエナの顔は怖い。


 そのまま縞模様ハイエナが雅也たちに襲い掛かってきた。雅也は一歩前に出ると長巻を抜いて構える。虎ほどもあるハイエナが飛び掛かってきた瞬間、左に避けた雅也の長巻が振り下ろされた。蒼鋼製の刃がハイエナの首に食い込み切断する。


「ひえぇえー!」

 フューゲル技師が悲鳴を上げる。目の前でハイエナの首が飛んで、血が噴き出したのが衝撃的だったようだ。雅也の足元に死骸が残った。デニスの世界のダンジョンのように死骸が消えて真名が頭に飛び込んでくるような事はなさそうだ。



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【書籍化報告】

カクヨム連載中の『生活魔法使いの下剋上』が書籍販売中です

イラストはhimesuz様で、描き下ろし短編も付いています
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― 新着の感想 ―
[一言] 楽しみにしているのでそろそろ続編が知りたい 完結まで楽しみなので!
[一言] 現代人は刃物で獲物と対峙したりしないからねえ。そりゃ、ヒェッとなるわなw
[一言] 更新がない、悲しい。
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