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崖っぷち貴族の生き残り戦略  作者: 月汰元
第7章 迷宮と宇宙編
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scene:299 月の裏の発見

 マナテクノの研究用宇宙船ビフレスト号が、月の裏側に回り込んで接近した時、宇宙パイロットの室田が発見したものというのは、綺麗な円柱状の柱だった。もちろん、肉眼では見えないが、カメラの映像を拡大して発見したのである。


 直径が三メートルほどで高さが六メートルという大きさのものだ。中村研究部長は、その円柱の近くに着陸するように命じた。


 ビフレスト号が月面に着陸すると、中村研究部長はボーンエッグを使ってボーンサーヴァントを誕生させた。そのボーンサーヴァントに簡易宇宙服を着せて、カメラを持たせると外に出す。


「ボーンサーヴァントに、あの円柱を調べさせるのですか?」

 室田が尋ねた。

「ええ、もしかすると危険なものかもしれませんからね」


 ボーンサーヴァントは円柱に近付きカメラで撮影すると戻ってきた。船内に戻ってきたボーンサーヴァントを検査し、放射線量も計測する。


 その結果、異常なしと判断されてカメラからメモリが抜き取られ、モニターに映し出す。ボーンサーヴァントが円柱に近付くと、円柱の表面に刻まれている文字のようなものがモニターに映し出された。


「これはどういう事だ?」

「どこかの国が、作ったものでしょうか?」

 他国の宇宙船が、月の裏側のこのポイントに着陸したという記録はない。それに円柱に刻まれている文字は、地球の文字とは思えなかった。


 ビフレスト号はマナテクノの本社に報告した。


   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆


 雅也は円柱に刻まれた文字を見て、これを刻んだ者たちの正体が分かった。

「これはフェシル人の文字です」

 神原社長はフェシル人が何者か思い出せなかったようだ。


「デニスたちの世界で、千二百年ほど前に消えた種族ですよ」

「ああ、不思議な船を造って、居なくなったという種族か。しかし、なぜフェシル人が月の裏側に?」


「それは、この文章を解読しないと分からないでしょう」

「解読できるのかね?」

「必要な資料は、デニスが持っているので、それを借りて解読すれば可能です」


「いいだろう。マナテクノが資金を出すので、解読チームを作って解読させよう」


 その後、テストを終えたビフレスト号が戻ってきた。エンジンテストは問題なしだったようだ。


 雅也は言語学や古代文字の解読に関連する分野で優秀な人材を調べ、五人の学者をチームとして編成した。そして、そのリーダーに紺野(こんの)信幸(のぶゆき)という五十代の教授を指名した。


「聖谷常務、この文章が月の裏側で発見されたというのは、本当なのですか?」

「ええ、事実です。ですが、この事は口外しないでください」

「どうして? 歴史的な大発見ですよ」

「日本政府や世界各国と協議しないと、公表できるか分からないのです」


 日本政府に報告したのだが、政府は発表を待つように指示したのだ。その内容を解読してから、国民に公表しようという話だったが、本当に公表する気があるのか分からない。


「分かりました。全力で解読します」

 紺野教授は約束した通り、全力で解読作業を進め短期間で解読した。


【この衛星が公転する惑星に住む者に告げる。我々フェシル人の船が、この恒星系の第四惑星に不時着した。我々の風習で死んだ場所に墓を建設した。その墓を荒らすことを禁止する。もし墓を荒らした場合、我々は罰を下すために君たちの世界を訪れるだろう】


 これが月の裏側にあったフェシル人の文章の意味だった。それを知った雅也は、その墓を一度見てみたいと思った。荒らすつもりはなく、遠くから見るだけで良いのだ。


 マナテクノが解読した内容を政府に伝えると、国際会議を開き話し合う事になった。マナテクノからは、雅也が出席することになり、東京の会場へ向かう。


 その会場で外務省の松下課長と会った。

「松下課長が出席されるのですか?」

「ええ、そうなりました。ところで、今は部長です」

「それは、おめでとうございます」


 会場に参加者が集まり始め、全員が席に着くと会議が始まった。会議の進行は外務省の事務次官である氷神(ひかみ)が務めるようだ。


「まずは、マナテクノの聖谷常務から発見された経緯と、フェシル人の文章を説明してもらいます」


 雅也はエンジンテストの説明と発見した時の経緯を話した。それからボーンサーヴァントが撮影した映像を見せる。


「その解読文は、正確なのかね?」

 イギリス代表が確認した。

「私のバディが手に入れたフェシル人の言語に関する資料を基に、解読したものです。間違いないと考えています」


「君はクールドリーマーなのかね?」

「そうです。フェシル人は、バディが住む異世界で生まれた種族なのです」

「フェシル人の文明度は高いのかね?」

「我々以上でしょう」


 その言葉を聞いた各国代表がざわついた。

「それは確かなのか?」

 アメリカ代表が確認する。

「千二百年ほど前に、次元の壁を越えて別の世界へ行く方法を開発したそうです」


 地球の科学では不可能なことだ。

「信じられない。それが本当なら、フェシル人は驚異的な科学力を持っている事になる」

 各国はフェシル人の文明を知りたいと思ったようだ。


「マナテクノは、火星へ行く計画を立てていたはず。それはフェシル人と関係あるのかね?」

「関係はありません。純粋な科学的挑戦です」

「それなら、我がアメリカも協力しよう。その代わりに火星旅行に参加させて欲しい」


 そういう申し出があることは予期していた。神原社長と話し合って、外国人乗員枠を七人とすることを決めている。その事を伝えると、各国が次々に名乗り出た。



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イラストはhimesuz様で、描き下ろし短編も付いています
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 7人の外国人枠、とR国はそれどころじゃないにしてもC国k国は2枠よこせと言ってきそうですね。 [一言] これでなにかヤラカシタ日には国ごと、世界を敵に回しマナテクノからは一切相手にされ…
[気になる点] アメリカは簡単に人を送るが、7人も受け入れて大丈夫か絶対に問題を起こす気がしてたまらない。 アメリカが起こしたプロジェクトなら多分日本人の参加人数は一人だと思う。 絶対、銃とか隠し持っ…
[気になる点] ふと思ったんだが… 収納を利用して地球製の年月日時分秒表示できる時計をデニスに送り その時計の時間を元に同時に収納を開く様にしたら 収納空間を経由して直接言葉を交わせたりしないのだろう…
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