表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崖っぷち貴族の生き残り戦略  作者: 月汰元
第7章 迷宮と宇宙編
289/313

scene:288 地震を起こすカエル

 巨大ガエルが暴れている。ジャンプして上空から家を押し潰すように着地。その衝撃で両隣の家も崩壊した。


「派手に暴れているな」

 デニスは遠くから元迷宮主を観察していた。その間に戦っていた兵士たちが退却していく。

「あれなら簡単に倒せそうに見えるんですが、そんなに凄い化け物なんですか?」

 イザークがデニスに質問した。


「爆噴爆砕球や赤外線レーザー砲撃でも、倒せなかったそうだ」

「そうなると、倒せるのはデニス様だけでは?」

「そうかもしれない。あいつを倒すには、ルインセーバーか、新しい真名で倒すしかないかも」


 デニスたち三人が巨大ガエルの前に進み出る。イザークとフォルカに赤外線レーザー砲撃で牽制するように命じたデニスは、『空間歪曲』の真名を使ってルインセーバーを発動する。


 長さ五メートルほどの破滅の剣が形成されると、何かを感じたのか巨大ガエルが後退る。デニスは巨大ガエルに向かって走り出す。


 その時、巨大ガエルが意外な攻撃を仕掛けてきた。巨大な舌をゴムのように伸ばして、デニスを攻撃したのである。


 デニスは跳ね飛ばされたが、装甲膜を展開していたので怪我はなかった。

「うっ、手強いな」

「デニス様、大丈夫ですか?」

 イザークが駆け寄って、デニスの身を心配する。


 デニスは起き上がって巨大ガエルを睨む。次の瞬間、また巨大な舌を伸ばして攻撃してきた。デニスは神剣を抜いて、舌を斬り飛ばす。


 巨大ガエルが舌から体液を噴き出しながら『ゲゴーッ』という鳴き声を上げる。デニスが追撃しようとすると、ジャンプした。上空からの押し潰し攻撃である。


「逃げろ!」

 デニスたちは散り散りになって逃げる。そこに上空から巨大ガエルが降って来て、地震のように地面を揺らす。


「うわーっ!」

 着地した巨大ガエルが、動きを止めたのをデニスは見逃さなかった。その瞬間攻撃すれば、大ダメージを与えられると考えた。


 但し、地面の揺れをどうするかである。ジャンプ攻撃で巨大ガエルが着地する瞬間に、デニス自身が跳躍して地面の揺れを回避することを考えた。タイミングを間違えると非常に危険だ。


 だが、他にアイデアが浮かばなかった。

 デニスが考えている間も戦いは続いており、突然巨大ガエルが口を開けた。火を吹く前触れである。


 デニスたちは逃げ回ることになった。激しい炎が短時間だが、デニスたちの身体に当たった。しかし、装甲膜が炎を拒絶して、デニスたちの肉体を守った。


 チャンスを待っていられないようだと思ったデニスは、『天撃』を使うことにした。周りの建物に被害が及ぶが、倒すためには仕方ないと決断する。


 巨大ガエルから五十メートルほど離れ、デニスは『天撃』の準備を始める。『天撃』は六段階に強さが分かれているが、その上から二番目の強さで『天撃』の真名術を発動することにした。デニスが『天撃』を発動するまでの時間をイザークとフォルカが作ることになる。


 巨大ガエルの上空に大気が集まり始め、厚い層を成す。その大気が一瞬だけ強烈に圧縮され、その圧縮されたものに激しい振動が加えられた。


 上空で爆発が起こり、発生した衝撃波が巨大ガエルを襲う。凄まじい力で巨大ガエルが押し潰され、その肉体を支える骨が砕けた。


 その後に猛烈な爆風が発生し、デニスたちを吹き飛ばす。三人は地面を転がることになり、目が回る。地面に倒れたデニスがふらふらと起き上がる。


「イザーク、フォルカ、大丈夫か?」

 デニスの後ろの方で音がした。デニスが振り返るとイザークが崩壊した家の下から這い出してくるのが見えた。


「全然、大丈夫じゃないです」

 イザークは大丈夫そうだ。フォルカを探すと二十メートルほど離れたところで倒れていた。だが、死んだ訳ではない。


「フォルカの手当を頼む。僕はトドメを刺してくるよ」

「あいつは死んでいるんじゃないんですか?」

「いや、たぶん生きている。あいつが持つ真名を、手に入れていないからな」


「分かりました。気を付けてください」

 デニスはイザークたちと分かれて、ぺしゃんこになっている巨大ガエルへ向かう。その化け物は体中から体液を噴き出しながらも生きていた。


 瀕死の巨大ガエルがデニスに気付いて炎を吹き出そうとしたが、炎が上手く吹き出せないようだった。


 デニスはもう一度『空間歪曲』の真名を使ってルインセーバーを発動する。近付いたデニスは、破滅の剣を元迷宮主の頭に振り下ろした。


 滅空の刃が巨大な頭を斬り裂いた。元迷宮主の巨体が粉々に砕け、光の粒となって消える。その瞬間、デニスの頭の中に三つの真名が飛び込んできた。


 一つは『豪火炎』の真名、もう一つは『耐火』の真名、そして最後は『次元隙泡(げきほう)』の真名だった。『次元隙泡』を調べてみると、面白いことが分かった。


 この次元隙泡というのは、宇宙と宇宙の狭間にある気泡のような小さな空間らしい。小さな空間と言っても、宇宙的な尺度である。


 実際の広さは大小様々で、太陽ほどの大きさがあるものから、本当に泡のようなものまで有るという。但し、あまり小さいとすぐに消滅するようだ。


 最小でも東京ドームほどないと安定しないらしい。『次元隙泡』の真名は、それらの次元隙泡を制御する真名である。


 次元隙泡を捕まえ、それと自分たちの宇宙とを繋ぐパイプを作り出す。そうすることで、自分だけの収納空間を手に入れることができる。但し、その次元隙泡の広さが大きいほど制御が難しくなるようなので、丁度良い大きさの次元隙泡を見つけるのが大変そうだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
【書籍化報告】

カクヨム連載中の『生活魔法使いの下剋上』が書籍販売中です

イラストはhimesuz様で、描き下ろし短編も付いています
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
― 新着の感想 ―
[一言] これは、デニスの世界と正也の世界で空間を通じた物のやり取りが出来るということでは! デニスの世界では、加工が難しい物や手に入らないものも簡単に送れるようになれば更に技術が発展するはず。夢が広…
[一言] 真名が手に入ってないからまだ敵は生きているってわかるの便利だ。
[一言] おぉ!ついにマジックバッグが…!? ていうか、耐火でレーザーも防げるのってかなりチートでは?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ