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崖っぷち貴族の生き残り戦略  作者: 月汰元
第7章 迷宮と宇宙編
278/313

scene:277 岩山迷宮の十九階層

 影の森迷宮の迷宮主である白竜を倒したデニスたちは、岩山迷宮の攻略に全力を傾けた。おかげで十八階層まで攻略が進み、十九階層への階段を発見して下りた。


 十九階層は砂漠だった。礫砂漠(れきさばく)という種類の砂漠で、砂ではなく石粒と岩の破片で敷き詰められたような砂漠だ。


「デニス様、この階層を攻略すれば、いよいよ迷宮主が居る最終階層です。頑張りましょう」

 イザークが声を掛けた。

「そうだな。もう少しだ」


 フォルカが不安そうな顔をする。

「迷宮主に勝てるでしょうか?」

「分からない。だが、ここまで来たんだ。最後まで突き進むしかない」


 デニスたちが砂漠を進み始めると、乾いた風が三人の肌を痛め付ける。

「この風は、結構きついですね」

 フォルカが声を上げた。


「ここも大量の水が必要になる階層だな。イザークが『水撃』の真名で水を創り出せるので、助かる」

 デニスが言うと、イザークが苦笑いする。『水撃』は本来水を創り出す真名ではなく、水を使って攻撃する真名なのだ。


 二十分ほど歩いた頃、巨人ゴーレムと遭遇した。身長五メートルほどの巨大な岩石ゴーレムである。デニスたち三人は散開して構える。


 デニスはいくつかの真名を解放し、装甲膜を展開して戦いに備える。イザークとフォルカも同じように装甲膜を展開してから油断なく巨人ゴーレムを観察する。


 巨人ゴーレムは武器として長い鉄製の棒を持っていた。棒を振り上げた巨人ゴーレムが、デニスに向かって振り下ろす。デニスは横に跳んで避ける。


 ドガッと音がして地面に穴が開き、デニスのところにまで土が飛んできた。イザークが『水撃』の真名を使って出した水の刃を放った。水撃刃は巨人ゴーレムの胴体に大きな傷を付けるが、ほとんどダメージはないようだ。


 今度はフォルカが『爆砕』と『爆噴』の真名を使って爆噴爆砕球を巨人ゴーレムの顔に飛ばす。巨人ゴーレムは顔の前で両腕をクロスしてガードした。


 爆噴爆砕球は、岩石で出来た腕の一部を吹き飛ばしただけで終わる。

「予想以上に頑丈だな。二人はそのまま攻撃を続けてくれ。僕は背後に回り込む」


 フォルカとイザークは攻撃を続けて、巨人ゴーレムの注意を引き付けた。その間に、デニスが素早く巨人ゴーレムの背後に回り込む。


 背後から襲い掛かったデニスは、神剣で巨人ゴーレムの足を薙ぎ払う。頑丈なゴーレムの足が切断された。バランスを崩した巨人ゴーレムが地響きを立てて横倒しとなる。


 間を置かずに跳び込んだデニスの神剣がゴーレムの首を両断した。それでも巨人ゴーレムは仕留められなかった。デニスが神剣で細切りにして、ようやく胸の中心にある水晶球を切り刻んでトドメを刺した。


「ふうっ、こいつを仕留めるには、胸の水晶球を壊すしかない、ということか」

 デニスが疲れたように言うと、イザークが頷いた。

「そのようですな」


 その後も巨人ゴーレムと遭遇したが、胸を集中的に狙って攻撃して倒した。

「ん、何だ?」

 イザークが変な声を上げる。前方に(たけのこ)を高さ二十メートルほどに巨大化した建物があったのだ。


 その筍ビルの前で、巨大なモグラの化け物が入り口を守っていた。

「嫌な門番が居るな」

「迷宮主も守りを固めているのでしょう」


 巨大モグラもデニスたちを発見したようだ。二メートルも有りそうな長く凶暴な爪で地面を引っ掻きながら、迫って来る。


 戦闘準備をしてから、小手調べに三人同時に爆噴爆砕球を放った。爆噴爆砕球が巨大モグラの背中に命中して爆発する。体表にある毛を吹き飛ばしたが、大したダメージを与えられない。


「ダメか。散開して攻撃だ」

 デニスが指示を出し、イザークとフォルカがデニスから離れて行く。イザークは水撃刃で攻撃を始め、フォルカは『光子』の真名を使って【赤外線レーザー砲撃】を始めた。


 水撃刃や赤外線レーザーでも巨大モグラを仕留めることはできなかった。巨大モグラは、お返しとばかりに土を固めて作った槍を飛ばして攻撃してきた。


 デニスたちは慌てて避けることになる。その攻撃を躱しきった後、デニスが『空間歪曲』の真名を使ってルインセーバーを発動した。五メートルの長さがある禍々しい滅びの剣が出現する。


 巨大モグラはデニスのルインセーバーを見て、脅威に感じたようだ。突然地面に穴を掘り始め、姿を消した。とは言え、地面を掘っている音は聞こえている。


 地面の中を進んだ巨大モグラが、イザークの前に姿を現し襲い掛かる。イザークは叫び声を上げながら逃げ回り、攻撃を避けた。


 それを見たデニスは、影の森迷宮の迷宮主を倒して手に入れた『極冷』の真名を使って【ブリザード】を発動し、巨大モグラの背中にマイナス百六十度の冷気が吹き付ける。


 最初は攻撃されていることに気づかなかった。次第に寒さを感じ始めた巨大モグラは、おかしいと感じて地面の下に逃げようとする。


 だが、地面も凍りつき穴を掘るのに時間がかかるようになっていた。巨大モグラの動きが遅くなっている。それに気づいたイザークが巨大モグラに大量の水を掛けた。


 その水が瞬く間に凍り巨大モグラを包み込む。穴を掘るのを諦めた巨大モグラは、地面を転がり体に張り付いた氷を剥ぎ取ろうとした。


 だが、それは間違いだった。凍りついた体細胞の一部も粉々に砕け、地面に散らばった。怒り狂った巨大モグラは、凶悪な爪を振り回して、デニスを攻撃する。


 デニスは『怪力』の真名を使って強化された脚力で、飛び下がり爪の攻撃を避ける。そして、ルインセーバーをもう一度出して、巨大モグラの頭に叩き付けた。


 全てを滅する刃は、巨大な頭蓋骨も切り裂いて脳を傷つけた。イザークとフォルカも攻撃に加わり、最期はフォルカの【赤外線レーザー砲撃】が巨大モグラの脳を焼いてトドメを刺した。


 その時、フォルカの頭の中に『土槍』という真名が浮かび上がる。巨大モグラが最初に使った攻撃だろう。



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【書籍化報告】

カクヨム連載中の『生活魔法使いの下剋上』が書籍販売中です

イラストはhimesuz様で、描き下ろし短編も付いています
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― 新着の感想 ―
“「デニス様、この階層を攻略すれば、いよいよ迷宮主が居る最終階層です。頑張りましょう」” デニス君サイドは20階が最終階層というのは知らなかったのでは?
[一言] 誰も死なずに勝てればいいが、上位存在が迷惑料 として手を貸してくれるくらいには強い迷宮主、 簡単にはいかなさそうだ。
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