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崖っぷち貴族の生き残り戦略  作者: 月汰元
第7章 迷宮と宇宙編
259/313

scene:258 フェシル人の遺跡

 十六階層で奇妙な剣を手に入れたデニスたちは、そのまま探索を続けた。すると、古代文明の残骸のようなものが、所々で見付かった。


「デニス様、この十六階層まで来たのは、私たちが初めてではなかったのですね」

 イザークが言った。


「残骸の件ですか。あの古代文明を築いたのはフェシル人です。迷宮の中に建物を建てるなんて、フェシル人は変わっていますね」

 イザークの言葉を聞いて、フォルカも意見を述べた。


「フェシル人も、迷宮探索をしたのでしょうか?」

 イザークの質問に、デニスが首を傾げた。

「どうだろう。ここが迷宮化したのは、千二百年くらい前の頃だという言い伝えもある。フェシル人が歴史から消えた頃だ」


 フェシル人は奇妙な人々だったらしい。世界各地にフェシル人の遺跡が残っているのだが、何に使ったのか分からない道具が数多くあるらしい。


 それらの道具は各国で国宝として宝物庫に仕舞われているが、調査が進んでいないようだ。デニスも見た事がないので何とも言えないが、もしかしたら進んだ科学技術が創り出した装置なのかもしれない。


「迷宮になる前に、ここにはフェシル人の施設があって、それが迷宮化により、岩山迷宮に取り込まれたと、デニス様は思っておられるのですか?」


 フォルカの言葉にデニスが頷いた。

「まあ、その可能性もあるというだけだ。他の迷宮でもフェシル人の遺物が発見された例もあるからな」

 イザークが頷いた。

「各国はフェシル人の遺物なら、ちょっとした道具でも国宝にしていますから、本当に施設が存在して発見したら大騒ぎになります」


 それを聞いたデニスは考えてから口を開く。

「少し時間を掛けて、フェシル人の遺物か施設を探そうと思うのだけど、どう思う?」

「迷宮主が交代するまで、後二年と少し時間がありますから、私はいいと思います」


 イザークとフォルカも賛成した。デニスたちは時間を掛けて十六階層を探索し、エリアの奥にある巨木の森の中に奇妙な塔を発見する。


 高さは二階建ての家ほどで、入り口がない。

「何だろう?」

 フォルカが首を傾げる。デニスは塔の周囲を回りながら観察した。


「これは……大きな建物が地面の中に埋まっているのではないか?」

「そう言われてみると……」

 イザークが地面を少し掘り返した。


 すると、地面の中に埋まっている建物の一部が顔を出す。フォルカとデニスも掘り始め、一時間ほど経った頃にイザークが大声を上げる。


「ここに何かあります」

 デニスとフォルカが近付いて協力して掘り進める。それは塔に組み込まれた窓だった。無理やり窓を開け、そこからデニスたちは中に入る。


 塔の中は少し埃っぽい感じがして、デニスは咳き込んだ。デニスは『発光』の真名を使って光球を作り出した。塔の内部は薄暗かったのだ。


「普通の建物のようだな」

 デニスは光球に照らし出された内部を確認して言った。

「階段があります」

 イザークが階段を見付けて声を上げる。


 デニスたちは階下に下りた。そこは通路があり、その通路の先にはドアがある。デニスたちはそのドアを一つずつ確認して回った。


 ほとんどのドアは開かなかった。たぶん部屋が崩壊し土砂で埋もれているのだろう。だが奥にあるドアの一つが開いた。


 その部屋は書斎のようだった。多くの本棚が並び本棚の中には様々な本が収納されている。デニスは本棚から一冊の本を選んで手に取り、中身を読んだ。


「これは古代文字か、フェシル人の本だな」

 この書斎にある本は千冊を超えるだろう。しかも、この書斎の所有者は技術者か、何かの研究者だったらしく専門書が多いようだ。


 デニスたちは古代文字は読めないのだが、挿絵などを見ると様々な設計図や原理を説明するような絵があったので推測できたのだ。


「デニス様、ここの本は保存状態が良いように思えますが、なぜでしょう?」

 フェシル人が消えてから千二百年が経過している。普通の書籍ならボロボロになっていてもおかしくない。だが、この書斎にある本は傷んでいなかった。それをイザークは疑問に思ったようだ。


「迷宮の自動修復機能のような力が働いたのではないか」

 デニスが自信なさそうに言う。

「そうだとすると、迷宮から本を外に持ち出したら、ボロボロになるという事もありますか?」


「分からない。その恐れもあるかな」

 デニスたちは建物内部を探し回り、金庫室のようなものを発見した。その金庫室の鍵になっているのが、巨大ガエルの頭に刺さっていた剣だったらしい。


 その剣型の鍵で金庫室を開けると、中は小さな部屋だった。そこには水晶のようなもので作られた椅子が置かれている。


「この椅子は何でしょう?」

 フォルカとイザークが首を傾げた。

「座ってみれば、何か分かるのかな」

 デニスが椅子に座ろうとする。


「お待ちください。何か危険があるかもしれません」

 イザークが先に試すことになった。


 用心しながら水晶で出来た椅子に座った瞬間、イザークの顔が歪み崩れ落ちるように椅子から離れた。

「どうしたんだ?」

 デニスが尋ねると、

「私の頭の中に、何かが話し掛けてきて、いきなり攻撃を始めたのです」


 イザークは頭に猛烈な痛みを感じて椅子から離れたのだという。痛みを感じた以外は、大丈夫そうだったのでデニスも試すことにした。


「デニス様、やめた方がいいと思いますよ」

 イザークが苦い顔で言う。

「少し試してみるだけだ。危険を感じたら椅子から離れる」


 デニスはゆっくりと椅子に座った。その瞬間、頭に中を検査しているような感じを覚える。その検査が終わった後、デニスの精神に何かが流れ込んできた。


 それはデニスの中にある『転写』の真名と呼応して、何かを精神に刻みつけた。



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イラストはhimesuz様で、描き下ろし短編も付いています
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