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崖っぷち貴族の生き残り戦略  作者: 月汰元
第7章 迷宮と宇宙編
258/313

scene:257 十六階層の野営

 デニスは十六階層の森にある密集した巨木を見上げた。十五メートルほど上に枝が密集した場所があり、そこでなら野営できそうだった。


 ロープの先端に石を結んで、それを投げる。二度失敗し三度目でロープを枝に掛けることに成功し、デニスとイザークは巨木の枝まで登った。


 デニスは枝が絡み合う様子を見て、ここになら野営できそうだと判断する。

「テントは張れそうにないけど、帆布を使えばなんとか野営できそうだな。野営装備を引き上げよう」

 下にいるフォルカに合図を送る。


 フォルカはライノサーヴァントから荷物を降ろして、ロープの端を結び付けた。デニスとイザークは協力して荷物を引き上げる。野営用のすべての荷物を引き上げると、フォルカはライノサーヴァントをボーンエッグに戻してから、ロープを使ってデニスたちのところまで登った。


「まずは帆布を枝の間に張って、寝床にしよう」

 ちゃんとしたテントを張るのは難しかったので、持ってきた帆布を使ってハンモックのような床と屋根を作った。


 寝るところが準備できたデニスたちは、食事の用意を始める。こんなところなので保存食を食べることになったが、お湯を沸かしてスープだけは作ることにした。


 枝の上に板を置き、その上に薄い鉄板で作られた焚き火台を置いて火を焚く。その火を使ってお湯を用意した。スープは固形ブイヨンを使って味付けして乾燥野菜を投入する。


 この固形ブイヨンは、野菜、特に豆類を大量に使って作ったもので、大量の素材を煮て出汁を取り、その出汁を濾したものを煮詰めて作ったものを瓶詰めした商品である。


 まだ売り出してはおらず、ベネショフ領だけで使っている。領民の評判を聞いてから売り出そうと考えているものだった。


「これは予想していた以上に旨いものです」

 フォルカが即席の野菜スープを飲んで感想を言った。デニスもスープを飲んで満足そうに頷く。二人はスープの出来に満足したようだ。


「これを売り出せば、人気が出ますよ。これは保存が効くのですか?」

「こいつは作ってから一ヶ月経ったものだ。たぶん二、三ヶ月は大丈夫だと思っている」


 フォルカがスープをグイッと飲んで尋ねる。

「味は一種類だけなんですか?」

「いや、これから肉などを使ったものを増やす予定だ」


 デニスはベネショフ領の産業の一つとして、様々な調味料を開発するのも良いと考えていた。その時、巨木が揺れる。


「また化け物か。気配を消して音を立てるな」

 デニスが指示した後、三人は木の上でジッとしていた。すると、森の奥の方から巨大なカマキリが現れた。その巨大カマキリは餌となるバッタを探しているらしい。


 地上で野営していたら、確実に戦いになっていた。デニスたちは巨大カマキリが遠くへ行くまでジッとしていた。


「ふうっ、ここには化け物が多数居るようだ」

 イザークがうんざりした顔で愚痴のように言う。

「今日は交代で見張りをしながら、早めに休みましょう」

 フォルカが提案した。デニスたちも賛成して、食事を片付けて寝る準備を始める。


 翌日、一つ目の森を抜けて、エリアの奥へと進む。二つ目の森に入ってすぐに全長三メートルほどの芋虫と遭遇した。


「嫌な予感がするな」

 デニスが苦い顔をして言う。

「そんなことを言わないでくださいよ。本当になりそうで怖いです」

 フォルカが言った瞬間、遠くで重たいものが地面に落ちたような音がした。デニスたちは急いで木の陰に隠れる。


 現れたのは巨大なカエルだった。巨大ガエルは大口を開けると舌を伸ばして芋虫を捕まえて、口の中に入れる。


 デニスは巨大ガエルの頭のところに剣が突き刺さっているのに気付いた。

「あの剣は何だろう?」

 デニスが小声で質問する。フォルカとイザークは分からないという顔をする。


「奇妙な剣ですね。柄の部分が変です」

 デニスは目を凝らして見る。柄の部分に古代文字が刻まれていた。一二〇〇年前にここ一帯に文明を築いたフェシル人が使っていた文字である。


「あのカエルを倒せると思うか?」

 デニスが二人に尋ねた。

「私とフォルカが【赤外線レーザー砲撃】で攻撃して、デニス様がルインセーバーで仕留めれば、なんとかなると思いますが、危険ですよ」


「分かっているが、どうしてもカエルの頭に突き刺さっている剣を調べてみたいんだ」

 デニスの勘があれを手に入れるべきだと騒いでいた。


「分かりました。トドメはお願いしますよ」

 フォルカとイザークが戦う準備を始めた。二人は周りから光を集め始める。そのせいで周囲が暗くなり、巨大ガエルが何事かとキョロキョロしている。


 フォルカとイザークの準備が完了し、デニスに目で合図を送ると【赤外線レーザー砲撃】で巨大ガエルの背中を攻撃した。超高温のレーザー光がカエルの背中に命中して、煙を上げる。


 激痛を感じたカエルが、空中に飛び上がった。その時、デニスと巨大ガエルの目が合う。両者が敵を確認したことになる。


 デニスは『装甲』『加速』『怪力』『頑強』『光子』『空間歪曲』の真名を解放し、『空間歪曲』の真名を使ってルインセーバーを形成する。


 飛び上がったカエルが落下を始めた時、デニスはその頭を目掛けて跳躍した。『怪力』と『加速』の真名を利用しての大跳躍だ。その大跳躍は見事に成功し、デニスは巨大ガエルの頭に着地。そのまま滅びの剣であるルインセーバーを巨大な頭に突き刺した。


 巨大ガエルが身を震わせ、デニスを頭から振り落とす。デニスは空中で体勢を整えて『怪力』の真名を使って着地。素早く逃げ出した。


 急所にダメージを受けた巨大ガエルは、藻掻き苦しんで近くの巨木に体当りする。そのカエルにフォルカとイザークから【赤外線レーザー砲撃】の攻撃が再び放たれた。


 首の辺りに赤外線レーザーが集中する。首を焼かれた巨大ガエルの動きは遅くなり、地響きを立てて地面に倒れる。デニスは素早く近付いて、もう一度ルインセーバーを巨大な頭に突き刺した。


 それがトドメとなり巨大ガエルが動かなくなり消えた。残ったのは頭に突き刺さっていた剣とチャクラムと呼ばれる武器だった。チャクラムは丸い輪っかの形をした刃物である。古代インドで用いられた投擲武器の一種だが、日本でも忍者が使った武器だと言われる。


 デニスは剣を拾い上げた。柄の部分に古代文字が刻まれており、刀身は蛇のように曲がっている。

「奇妙な剣ですね」

 イザークが近寄って声を掛ける。

「あまり切れそうな剣じゃないけど、あの巨大ガエルの頭に突き刺さっていたのだから、相当な武器だと思う」


 剣の刀身部分にも奇妙な模様が刻まれており、ただの武器とは思えなかった。



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【書籍化報告】

カクヨム連載中の『生活魔法使いの下剋上』が書籍販売中です

イラストはhimesuz様で、描き下ろし短編も付いています
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― 新着の感想 ―
矢ガモを思い出しました。剣ガエル。1000年前から刺さってる、なんてことだったら可哀想ながら、ちょっと笑ってしまうかも。
[一言] ペミカンとかもそのうちつくるのかな?、保存食は 気候にも左右されるから作るのも運ぶのも大変ですね。 迷宮主も静観してる訳じゃなさそうだし、前途は 多難そうですね。
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