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崖っぷち貴族の生き残り戦略  作者: 月汰元
第7章 迷宮と宇宙編
237/313

scene:236 巨狼スケルトン

「イザーク、フォルカ、大丈夫か?」

「大丈夫です」「目の前の化け物以外は、問題ありません」

 二人に怪我はないようだ。


 九層の廃墟で大きな屋敷を探索していたデニスたちは、罠に嵌まって巨狼のスケルトンが待ち受ける地下に落とされてしまった。


 デニスたちの前にいる化け物は、三メートルほどの高さから見下ろしていた。そいつは鋭い牙が並んでいる口を開けてデニスたちを噛み千切ろうとする。


 デニスたちは逃げた。巨狼スケルトンが追い駆けてきて骨だけの前足で薙ぎ払おうとした。デニスたちは転げ回って避ける。空振りした前足が、壁にぶつかり爆発したような轟音を発した。壁の一部が粉々になって床に散らばる。


 デニスたちは逃げ回りながら爆砕球と爆裂球を使って反撃。巨狼スケルトンは呆れるほど頑丈だった。爆砕球も爆裂球もあまりダメージを与えられない。


 爆噴爆砕球だけが、それなりにダメージを与えたが、仕留められるほどではない。爆噴爆砕球で仕留めようとすると、一〇発ほどを命中させる必要があるだろう。


 デニスはどうやって倒そうかと考えた。部屋の中は薄暗いので『光子』の真名は使えそうにない。残るは『空間歪曲』の滅空を使うしかないと考える。


 デニスは『空間歪曲』の真名を使い長さ五メートル、直径一〇センチの長い棒状の滅空を形成する。使い難い滅空について考えていたデニスだったが、球形より長い棒状にした方がまだ使いやすいと思ったのだ。


 本当は爆砕球のように撃ち出したいのだが、滅空を維持するためには真名の力を常に注入しなければならないらしいので、撃ち出すということはできなかった。


 デニスはこの棒状の滅空を『ルインセーバー』と名付けた。滅びのサーベルという意味だ。サーベルというにはごつすぎるのだが、相手が化け物なのだ。これくらいの太さがないとダメージを与えられない。


 ルインセーバーは、デニスの右手人差し指の先から伸びている。これにはちょっと違和感がある。普段は宝剣緋爪を使っているので、武器の柄を持たずに戦うのが違和感を持つ原因である。何か真名の力を通しやすい棒状のようなものがあれば、柄にするのだが。


 巨狼スケルトンは、デニスが持つルインセーバーに何らかの脅威を感じたらしい。イザークやフォルカを無視して、デニスを集中的に攻撃するようになった。それも噛み付き攻撃ではなく、前足の爪で引き裂こうとする攻撃である。


 フォルカがトロルガンを構え巨狼スケルトンを狙って引き金を引いた。頭蓋骨に小さな穴が開いた。トロルガンは有効だが、威力が小さすぎた。


 しかし、巨狼スケルトンの注意を引くことには成功する。デニスばかりを追い掛けていた巨狼スケルトンがフォルカを攻撃する。


 デニスは隙ができたと感じ、巨狼スケルトンの足元に跳び込んだ。巨狼スケルトンの首の骨にルインセーバーを叩き付ける。


 呆れるほど頑丈だったのに、あまりにも簡単に巨大な頭が飛んだ。その頭蓋骨がフォルカの前に飛んできた。頭蓋骨だけになっても歯をカチカチと鳴らして生きている? アンデッドなので生きているのかどうかは疑問だが、活動を止めていないことを示している。


「フォルカ、トドメを刺せ」

 デニスの指示で、フォルカは頭蓋骨の額を中心にトロルガンを撃ち込んだ。トロルガンから撃ち出されるビームは、物質を崩壊または分解する力があるのだとデニスは考えている。


 その分解ビームを五発撃ち込んだ頭蓋骨は脆くなった。そこに爆裂球を叩き込むと、頭蓋骨がヒビ割ればらばらとなる。


 フォルカの顔が強張った。イザークがその顔に気付いて尋ねた。

「どうした? もしかして真名を手に入れたのか?」

 フォルカが頷いた。


「『爆速』です」

「ほう、もしかするとデニス様の『爆噴』と同じような効果があるのかもしれんな」


 デニスは巨狼スケルトンが消えた跡で、大きなボーンエッグを発見した。巨人スケルトンから手に入れたボーンエッグより二倍以上大きい。


 それを見たイザークが、

「そのボーンエッグは、どれほど大きなボーンサーヴァントになるのでしょう?」

「ライノサーヴァントより大きくなるのは確かだ」


「それだけ大きいのであれば、迷宮での戦力になるのではないですか?」

「しかし、広い場所でないと使えないというのは、弱点だな」

 罠があることが分かったので、デニスたちは引き上げることにした。別の罠に掛かったら、まずいと判断したのだ。


 地下室から出る道を探すと奥に扉を見つけた。その扉を開けると、武器庫だった。槍や剣、戦棍などが並べられている。それらの武器は、どれも大きく普通の人間が使えるものではなかった。


 その中に魔物の角を使った短剣があった。巨人にとっては短剣でも、デニスたちにとっては長剣だ。デニスは手に取って調べた。


 それは一本の角を加工して剣にしたものらしい。柄の部分も角で出来ていた。デニスが角の剣に惹かれたのは、角や牙などのドロップアイテムが、真名の力を通しやすいことがあったからだ。


 手に持った角の剣を持ち帰ることにした。武器庫を通り抜けると階段があり、屋敷の一階に続いていた。


 屋敷の外へ出たデニスたちは、地上に向けて戻り始めた。地上に戻ったデニスたちは、ダニングが待つ宿へ行く。


「どうでございました。お求めのものは手に入りましたか?」

 ダニングが笑顔で迎えてくれた。

「ああ、手に入った」

「それはようございました」


 デニスたちは、ダニングの取引が終わるまで町に滞在していた。それから船が停泊している港へ戻り、船でベネショフ領へと戻る。


 ダニングと別れたデニスは、無事に帰ったことをエグモントに報告した。

「それで、巨人スケルトンのボーンエッグは手に入ったのか?」

「はい、これです」


 デニスは持ち帰った巨人スケルトンのボーンエッグを見せた。エグモントはその大きさに驚いたようだ。


「ライノサーヴァントのボーンエッグと同等となると、こいつから生まれてくるボーンサーヴァントは大男並みとなるだろうな」


 エグモントはデニスが迷宮で使える兵士を求めていたのを知っているので、逞しい兵士が誕生しそうなので喜んだ。


「何個、手に入れたのだ?」

「二十一個です。父上も試してみてください」

「では、最初の一個を試してみよう」


 デニスはベネショフ領の新戦力を誕生させることにした。

 大きなボーンエッグに『魔源素』『頑強』『怪力』『加速』『爆砕』の真名の力を流し込もうとして、もう一つくらいなら追加できると感じた。そこで『光子』も追加する。


 そのボーンエッグからボーンサーヴァントを誕生させるのに、普通の倍以上の真名の力が必要だった。


 誕生したボーンサーヴァントは、身長一九〇センチほどもあるスケルトンとなった。



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【書籍化報告】

カクヨム連載中の『生活魔法使いの下剋上』が書籍販売中です

イラストはhimesuz様で、描き下ろし短編も付いています
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