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崖っぷち貴族の生き残り戦略  作者: 月汰元
第7章 迷宮と宇宙編
236/313

scene:235 メルダ迷宮

 他国の迷宮であるメルダ迷宮の情報は、王都の白鳥城でも少なかった。デニスがメルダ迷宮についての情報を求めたことで、コンラート軍務卿も興味を持ったようだ。


 デニスたちがメルダ迷宮へ行くのなら、ヌオラ共和国と貿易している商人を紹介しようと提案された。デニスは、その提案を受けることにする。


 紹介されたのは、イアン・ダニングという商人だった。メルダ迷宮があるフォルバダ地方で生産される銅製品を輸入して商売にしている男だ。


 ベネショフ領を訪れたダニングとデニスは会った。

「デニス様、貿易商のダニングと申します。何卒よろしくお願いいたします」

「軍務卿から聞いている。フォルバダ地方とメルダ迷宮について、教えて欲しい」


「畏まりました。フォルバダ地方は、ヌオラ共和国の首都トレグラから西へ行った地方で、銅鉱山と銅製品の他は、迷宮探索で得られる産物を売買する産業しか目立つものはありません」


「首都に近いのだから、農業が盛んなのではないか?」

「いえ、土地が痩せているせいで、小規模な農業を行っているだけです。やはり銅関係で生計を立てている者が多いようです」


 フォルバダ地方は住みやすい土地ではないようだ。デニスはメルダ迷宮について尋ねた。

「あの地方には、三つの迷宮があり、その中で一番不人気な迷宮だと聞いております」


「なぜ不人気なのだ?」

「遭遇する魔物がアンデッドが多いこと、それに鉱床が少ないのが原因でございます」


「鉱床が少ない、それは嫌だな。ところで巨人のスケルトンが出ると聞いたが」

「はい、九階層にある滅亡した巨人エリアです。巨大な廃墟エリアで、巨人の種族が滅んだ場所だと言われております」


 デニスはメルダ迷宮まで案内して欲しいと頼んだ。

「こんな時に、他国の迷宮に行くなど、大丈夫なのでございますか?」

 ダニングは国をあげて行っている迷宮主討伐の件を言っているのだ。


「メルダ迷宮のことは、迷宮主討伐に役立つものだ」

「分かりました。案内させていただきます」


 デニスはベネショフ領の船を用意して、ダニングとヌオラ共和国へ向かった。同行したのは、イザークとフォルカ、それに護衛の兵士が数人である。


 ダニングの案内でフォルバダ地方へ進み、メルダ迷宮の近くにある町に宿泊した。この町は真鍮細工が盛んな町で、ダニングは何度も商売で来ているという。


 メルダ迷宮は町の役人が管理している迷宮である。人気にんきのない迷宮なので、迷宮を訪れる探索者は年に三十人もいないそうだ。


 なので、迷宮は放置されている。誰でも入れる状態になっているのだ。デニスたちはメルダ迷宮へ行って中に入った。


「デニス様、この迷宮は活気がないと言いますか。不気味な感じのする迷宮ですね」

 他の迷宮だと様々な魔物がうろついていて遭遇すると戦いになるのだが、魔物が少ない感じがする。五階層までは、数回小物と戦っただけで、通過した。


 六階層になって、スケルトンの集団と遭遇した。十数体のスケルトンが押し寄せてきたので、デニスたちは宝剣と長巻で戦い壊滅させた。


 その時、ボーンエッグ二個を手に入れる。

「ここまでは普通ですね」

 フォルカが声を上げた。


 デニスは頷いて周りを見回す。六階層は墓地のような場所で、まだまだスケルトンが出てきそうだ。

「急いで七階層へ向かおう」


 デニスたちは階段を探して墓地を探し回った。二十体ほどのスケルトンを倒した後、階段を発見して七階層へ下りる。そこは動物の墓場だった。


 狼や鹿、ゾウや熊、馬や牛などのスケルトンがさまよっていたのだ。

「やっと賑やかになったと思ったら、スケルトンばかりじゃないか」

 デニスが不満そうに言うと、フォルカとイザークが笑う。


「仕方ないですよ。そういう迷宮なんですから」

 イザークが言い、フォルカも頷いた。

「ここが不人気な理由が分かるな。それにスケルトンから手に入る真名なんて、大したものじゃない」


 それでも遭遇すれば倒すしかなかった。デニスは狼と熊のスケルトンを倒し、スケルトン熊のボーンエッグを手に入れた。イザークはスケルトン馬、フォルカはスケルトン狼のボーンエッグを手に入れたようだ。


 それからも様々なアニマルスケルトンと遭遇して倒し、雑多なボーンエッグを手に入れた。

「何でだろう? ボーンエッグを残すスケルトンが多い」

 フォルカが疑問を口にする。


「この迷宮に入る探索者が少ないことが関係しているんじゃないか。スケルトンの内部に何かが蓄積していて、長年倒されずに溜まった何かがボーンエッグという形になるんだ」

 デニスは可能性の一つを提示した。


「そうすると、九階層の巨人スケルトンを倒せば、大量のボーンエッグを手に入れられるかもしれませんね」

 イザークの言葉を聞いてデニスが頷いた、

「期待できそうだな」


 八階層は普通にハイ・オークや鎧トカゲと遭遇する森林エリアだった。デニスたちは魔物を蹴散らして、階段を探し九階層に下りた。


 目の前に広大な廃墟が広がっていた。壊れた巨大な建物や石像などがある。建物の扉は六メートルほどの高さがあった。この建物を使っていた人々が巨人なのだと分かる証拠だ。


 ちなみに城などの扉が巨大なことはあるが、デニスが見ているのは民家である。

「巨人の国に来たみたいだな」

「フォルカ、実際に巨人の国だぞ。見てみろ」

 イザークが指差した先に、巨人スケルトンが歩いてくる姿があった。


 その巨人スケルトンの身長は、五メートルほどありそうだ。

「デニス様、手強そうです」

 フォルカが弱音を吐いた。そう思うのも無理はない。骨だけとは言え、身長五メートルの巨人が手に大剣を持って迫ってくるのだ。


 イザークが爆裂球を巨人スケルトンに放った。巨人スケルトンが大剣で爆裂球を弾き、大剣の表面で爆裂球が爆ぜる。


 デニスも巨人スケルトンに向けて爆砕球を撃ち出した。これもまた大剣に弾かれて無駄になる。近付いた巨人スケルトンが大剣を振り回す。


 デニスたちは必死で躱した。

「二人は爆裂球で足を狙ってくれ。僕は爆砕球で頭を狙う」

 一斉攻撃を仕掛けることになった三人は、呼吸を合わせて爆砕球と爆裂球を放った。デニスの爆砕球は大剣によって弾かれたが、爆裂球は巨人スケルトンの膝関節に命中して爆発する。


 巨人スケルトンがガクリと両膝を突き隙を見せた。イザークが走り寄り、『水撃』の真名を使って生み出した水の刃を放った。水撃刃は巨大な頭蓋骨を断ち割る。


 巨人スケルトンが消え、大きなボーンエッグが残った。ライノサーヴァントになる骨鬼牛のボーンエッグとほとんど同じ大きさがある。


「ライノサーヴァント並みのボーンサーヴァントとなると、身長が二メートルになるな」

「それに『怪力』とかの真名の力を注いだら、凄いことになります」

 イザークとフォルカは喜んだ。


 デニスたちは廃墟を周り、巨人スケルトンを全滅させる勢いで倒した。そのおかげで二十一個のボーンエッグを手に入れた。メルダ迷宮へ来た目的を果たしたのである。


「さて、残っているのは、廃墟の中央にある大きな屋敷だ」

 普通なら城かと思うほどの建物だが、巨人の体格からすると大きな屋敷というのが正解なのだろう。


 屋根もあるし壁も壊れていない。その屋敷は他の建物に比べると損傷が少ないようだ。デニスたちは慎重に中に入った。


 部屋の中には巨大なテーブルや椅子などが残っている。但し、身長五メートルの巨人が使うものなので、デニスたちには大きすぎた。


 その時、ギシッギシッという音が上から聞こえる。二階に魔物がいるようだ。デニスたちは階段を上り、二階に向かった。


 二階には五つの部屋があるようだ。階段に一番近い部屋のドアを開ける。寝台と机、椅子があるだけだ。魔物はいない。


 あの音は一番奥の部屋から聞こえてくるようだ。イザークが先頭に立って、先に進み奥の部屋のドアを開けた。中には大きなロッキングチェアがあり、それが揺れて音を出しているだけだった。


「ふうっ、魔物はいないようだな」

 デニスたちはロッキングチェアへ向かって進んだ。その時、デニスたちの足元の床がなくなり穴に落ちた。途中で穴が斜めになり、すべり台のように滑って投げ出された。


 デニスたちの落ちた場所は、地下室のようだ。壊れた一階の床から光が差しており、その光で何かが動くのが分かった。


 デニスは『発光』の真名を使って、光の玉を作り宙に浮かべた。その光で地下室の化け物が浮かび上がった。巨大な狼のスケルトンだ。



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イラストはhimesuz様で、描き下ろし短編も付いています
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― 新着の感想 ―
[一言] 存外、あっさりでしたな。ここで国との戦いに なっても面倒ですから良かったです。 いきなり現れたこのスケルトン狼は迷宮主? 楽しみですね。
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