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崖っぷち貴族の生き残り戦略  作者: 月汰元
第7章 迷宮と宇宙編
225/313

scene:224 新たな目標

 マナテクノは宇宙船を攻撃した衛星を日本政府に調べてもらった。日本政府が動き衛星の正体が判明する。驚いたことに、それはアメリカの軍事衛星だった。


 このことはアメリカでも大問題となった。大統領自身が調査を命じ、怪しい人物が浮かび上がる。ブランドン上級顧問が反政府組織と繋がっていることが判明したのだ。


 ブランドン上級顧問が逮捕され、背後にいる組織について尋問が始まった。そして、超越者教団という名前が出てきた。その教祖はサプーレムという名前で、アメリカ政府よりも早く真名能力者を集め始めたらしい。


 アメリカ大統領は、超越者教団をテロ組織と認定し壊滅することを命じた。


 それらの情報が日本政府にも報告された。アメリカの軍事衛星が日本の宇宙船を攻撃したということを重要視した大統領は、真実を伝えて謝罪したのだ。


 この情報はマナテクノの社長である神原にも伝えられ、雅也も聞いた。

「でも、どうやってアメリカの軍事衛星が攻撃を?」

 雅也が神原社長に確認すると、社長が顔をしかめた。

「ハッキングされて、乗っ取られたようだ」


 雅也はにわかに信じられなかった。アメリカの軍事衛星である。生半可なセキュリティーではなかったはずだ。

「軍事衛星でしょ。信じられないですね」

「日本側の専門家も、簡単に乗っ取られるはずがないと言っている。但し、軍事機密にアクセスできる人物がいない場合ならだ」


「そのブランドン上級顧問が軍事機密にアクセスできたということですか?」

「彼は軍事関係の顧問だったようだ」


 雅也は他にも上級顧問のような人間が、アメリカ政府の中にいるんじゃないかと危惧する。マナテクノや宇宙事業に反対する勢力があると推測し、少しアメリカと距離を置くことを考えた。


「社長、少しアメリカと距離を置いた方が良いんじゃないですか?」

「聖谷常務が心配することも理解できるが、アメリカはマナテクノを離したくないらしい。追加注文が来たよ」


「追加注文というと、救難翔空艇ですか?」

 アメリカは強化型基本構造の救難翔空艇を、さらに五〇〇〇機発注すると言い出した。


「アメリカは、お詫びのつもりで発注したんでしょうか?」

「まさか……そんな甘い考えは、あの国にはない。単に救難翔空艇B型を改造した武装翔空艇が、思っていた以上に高性能だったので、各州の空軍州兵に配備されることになったようだ」


 空軍州兵というのは、各州知事の指揮下にありアメリカ空軍の予備部隊にもなっている組織である。予備部隊だと言われているが、最新の戦闘機も配備されている立派な戦闘集団だ。


「その注文に刺激されたのかもしれないが、自衛隊から武装翔空艇五〇〇機の注文が入りそうだ」

「五〇〇〇機と五〇〇機か、一桁違いますね」


「防衛費の予算の規模が違うんだ仕方あるまい。ところで、宇宙船の中で見つけたというメルバ震だが、画期的なものだというのが分かった」


 メルバ震は様々なエネルギーを乗せて送受信できるらしい。雅也は電波と同じようなものかと思っていたが、全然違うもののようだ。雅也の頭に刻み込まれている情報なのだが、残念ながら理解できない。


 一度神原社長から説明してもらったが、最初の一分で爆睡しそうになった。ただ全てのエネルギーや素粒子をメルバ震に包み込んで送り出せるらしいことは理解した。

 但し、送れるのは素粒子レベルまでで、それ以上の物質を送ることは難しいようだ。


「俺も使えそうだと思ったんですが、社長はどういう風に使えると考えていますか?」

「送電だ。メルバ震に電気を乗せて、送電できるのではないかと考えている」


「宇宙太陽光発電システムに組み込めそうですか?」

「まだ分からん。だが、それが可能なら本命は、宇宙船のエネルギー源だ」


 起重船のエネルギー源は、水素燃料電池とバッテリーである。なので、起重船には大量の水素と酸素が必要となる。メルバ震で電気が送れるのなら、エネルギー源としての水素と酸素が不要になり、宇宙船には別のものを乗せられる。


「いいですね。夢が膨らみます」

「我社の目標は、月旅行だったが、いっそ火星に変更するか?」

「火星だといつ行けるようになるか分かりませんよ」


「その方がいいじゃないか。月はもう少しで行けそうだからな」

「でも、月旅行を快適にするには、人工重力の存在が重要だと思うんですよ」

「真名術で、重力とか操れたりせんのか?」


 雅也は苦笑いした。

「無茶言わないでください」


   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆


 雅也が初めての宇宙旅行から帰還した頃、デニスは一〇階層の砂漠エリアを攻略する準備をしていた。

「デニス様、あの砂漠は特別な装備がないと攻略できそうにありませんでした。どうしますか?」


 イザークの質問に、デニスは頷いた。

「あの暑さに耐えるには、氷雪ボアのドロップアイテムである皮で作った防暑服が必要だろうな」

「えっ、氷雪ボアは中々ドロップしない魔物ですよ」


「あのドロップアイテムである皮には、熱を遮り一定の温度を保つ効果がある。しかも丈夫だ」

「そうですね。仕方ない、兵士たちに指示して氷雪ボア狩りをやらせましょう」


 デニスが領主屋敷に戻ると、アメリアとテレーザ王女が楽しそうに話していた。

「デニス兄さん」

 テレーザ王女がデニスを見て、ニコッと微笑んだ。


「二人で何を話していたんだい?」

 そう尋ねたデニスは、テレーザ王女の横に座った。


「サンジュの実を集める話よ」

 最近、デニスは参加しないが、サンジュの実を絞って油を取る事業は続けていた。母親のエリーゼが責任者になって、人を集めたりしているようだ。


「そう言えば、テレーザ王女も迷宮に挑戦しているそうですね。どこまで行ったのです?」

「アメリアたちの力を借りて、六階層まで下りました」

「それは凄い。頑張りましたね」

「いえ、まだまだです」


 話が習った料理や装飾品作りとなり、テレーザ王女は楽しそうに語り始めた。

 その時、ハイネス王子が戻って来た。

「テレーザ、やったぞ。ついに『爆裂』の真名を手に入れた」


「まあ、おめでとうございます、お兄様」

「殿下、おめでとうございます」

 テレーザ王女やデニスが祝いの言葉を贈ると、ハイネス王子は嬉しそうな顔をする。


 近衛精鋭チームのリーダーであるギュンターも『爆裂』の真名を手に入れたらしい。目的であった『雷撃』の真名と『爆裂』を手に入れたので、そろそろ王都へ戻ることになるだろう。


「名残惜しいが、王都へ戻る時が来たようだ。ブリオネス家の者には世話になった。感謝する」

「王家の臣として当然のことをしたまでです。ギュンター殿には、キザク迷宮の迷宮主を倒してもらい、結果を知らせて欲しいですから、頑張ってもらいたいのです」


 ハイネス王子が頷いた。テレーザ王女は不満そうな顔をする。

「お兄様、私はもう少しベネショフ領へ残りたいです」


 デニスと王女は、一緒に過ごす時間をそれほど作れなかった。だが、夜などに紅茶を飲みながらゆっくり話す日もあり、お互いの理解を深めることができた。


 なので、テレーザ王女にとってベネショフ領での時間は、非常に楽しかったのだ。もう少しベネショフ領で過ごしたいというのは本心からの言葉だった。


「我儘を言うな。それに母上が待っているのだぞ」

 王妃のことを言われたテレーザ王女は、渋々帰ることに同意した。


 王子と王女、それにギュンターたちがベネショフ領を去り、ブリオネス家に普通の日々が戻った。そして、ベネショフ領の兵士たちが、氷雪ボア狩りをしている間に、ギュンターが率いる近衛精鋭チームがキザク迷宮の迷宮主を倒した。


 その結果、分かったことは、迷宮で出現する魔物の数が減ったことと、迷宮で産出する鉱物などが減少したことだ。


 ゼロにはならなかったのだが、三割ほどになった。

「デニス、迷宮主を倒した影響というのは大きいが、二、三年なら我慢できる」

「そうですね、父上。全力で迷宮主を倒すことにします」


 デニスは岩山迷宮の迷宮主を倒すことを誓った。

 そして、兵士たちが氷雪ボアのドロップアイテムを集め、防暑ローブ四着が完成した。一着は予備である。


 その間に、デニスは紫外線硬化樹脂を使って、紫外線を遮る遮光ゴーグルを製作した。簡単なものだが、あの砂漠では必要なものだった。


 準備が終わり、デニスたちは岩山迷宮へ潜った。魔物を倒しながら、一〇階層の砂漠エリアに到着。

「デニス様、暑くてたまりませんね。早く防暑ローブを」

 イザークに促されて、防暑ローブを羽織った。これにはフードが付いており、頭もフードを被る。これに遮光ゴーグルを付ければ、砂漠エリアを探索する準備完了である。



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【書籍化報告】

カクヨム連載中の『生活魔法使いの下剋上』が書籍販売中です

イラストはhimesuz様で、描き下ろし短編も付いています
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― 新着の感想 ―
[良い点] メルバ震を利用すれば、無限の滞空時間を持つ航空機とか作れますね。 [一言] 充電の要らない電気自動車や携帯、コードの無い充電不要な家電製品とか 色々と利用価値が大きそうですね。
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] おー、C国やR国ではありませんでしたか。 意外と言えば意外。アリと言えばアリの国ですね。 外交に友好国は存在しない。
[一言] えっ、口先で謝罪しただけでこれほどの案件なのに詫びは支払ってないのか、アメリカw
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