だいせくと
初投稿です。
続きを書くかもしれません。
『この検体は、倫理的に問題の無い方法で処理しています。』
ある小さな街の外れに立っている灰色の大きな建物の中でその猫は生まれた。兄弟は8匹いた。これが多いか少ないかは分からないが、彼の8か月の生涯で最も幸せな時間は、この最初の一週間であっただろう。みーみーと鳴きながら、暖かいものに包まれて、ミルクを飲み、寝て、起きる。同じようにみーみーと鳴いている自分の兄弟に囲まれていた。一週間後、堅く冷たい金属の檻に入れられる。柔らかくもなければ、兄弟も居ない。ツンとするような変な臭いがしている。
温度、湿度、光量、食事の時間、量を完全に管理され、何不自由しない生活を送っていたが、彼はひどく退屈していた。狭い檻で繰り返される同じ毎日。生まれてから一週間で親兄弟とは離された。兄弟は隣の檻で彼と同じように退屈に包まれて寝ている。彼が入った檻は、部屋の奥に置かれていた。一週間毎に檻は同じ部屋の中を少しずつ入口に向かって移動する。なんでも、一番入口に行くと、また暖かく柔らかい生活に戻ることができるのだとか。おぼろげながら覚えているいい匂いと包まれる安心感に再び会える時を夢見て、堅い時間を過ごす。
ついに今日は自由になれる日だ。隣の檻にいた彼の兄弟は一足先に母の元に行ったのだろう。いつもご飯をくれる人間が、今日は彼が住んでいる檻を運んでくれる。にゃあにゃあと他の檻の仲間も一緒に運ばれている。兄弟はここにはいないようだ。ひんやりとした部屋に入れられる。がちゃりという音とともに、天井から何かが差し込まれ、しゅーという音を聞く。そこで彼の意識は暗くなった。
彼は眠らされた後、動脈を赤に、静脈を青に塗り替える薬品を、心臓の働きを徐々に緩める毒とともに投与され、彼の体の機能は停止する。その亡骸は作業員の手により開腹され腐敗防止の保存液をしみ込ませるように入れられ、縫合される。彼と同様に処理された同族が漂う、保存液で満たされた水槽に丁寧に入れられる。細胞の一つ一つが完全に固定されるまで、彼の体は兄弟と同じ水槽の中で暫しの時を過ごす。ただ一つ、他の同族と彼が異なったことは、彼が意識を取り戻したということだった。とは言っても、彼は彼の「存在」としての意識を取り戻したに過ぎない。彼の肉体は依然としてその生を終えており、水槽の中を漂っている。生前、彼は退屈を感じる以外不満は持っていなかった。兄弟と離れ離れになった時も、寂しさを感じていたのかもしれないが、それを強制したモノに対して恨みを持つべくも無かった。最期も彼はただ眠らされただけであり、「殺された」意識もない。肉体が死んだ事にすら気付いていなかった。
意識を取り戻した彼は、自分の体だったものが自分であることに気付かなかった。ちょっとお腹に傷がある沢山の毛むくじゃらが水の中で寝ているのだと思っていた。中々起きないな、なんて考えながら、その内の一匹の毛むくじゃらが漂うのに合わせて自分も移動していることに気づく。ちょっと周りを見て回りたいと思っても、体は動かない。動かないものを嘆いても仕方がないので、自分が繋がっている毛むくじゃらを見ながら無為な時を過ごした。
数週間後、人間が水槽から彼らを引き上げる。一体一体検品し、真空にパックされた。彼の体も例外ではなく、検品され、真空パックの対象となった。彼の意識はその時点でもそこにあったが、意識は真空パックされなかった。
そうして梱包された十数匹分のネコだったものと、その内の一匹分の魂は、箱に詰められ、配送された。
解剖学という学問分野がある。生物の形態や構造を研究することを指すものであるが、特殊な学問分野ともいわれている。僕は学校で「人体解剖学」という授業を履修しているが、医学学校ではないので、人体の解剖はできない。では、どうするのか。ヒトに近い動物、哺乳類を解剖することで大凡の形態、構造を学び、足りない分は図解で補うのだ。本格的に医学の道に進む学生は、大学卒業後に医学学校に通うことになる。僕が通う学校でも、哺乳類を解剖するという。しかし、いきなり解剖するというのは、心を含め準備が足りないだろう。まずは手慣らしに、羊の眼球、脳、そしてマウスを解剖し、そして最後に中型の哺乳類をグループ4人で解剖するのだとか。生き物の体の仕組みには興味があったが、実際に自分が手を動かして解剖するということの実感が湧かない。さんまの塩焼きを解すのとは勝手が違うのだろう。
羊の眼球や脳の解剖はなんということもなかった。保存液の臭いが気になりはしたが。今日はジェリーと(僕が勝手に)名付けたマウスの解剖を行った。お腹を開いたときにムッとした強い匂いを感じた。皮膚にはさみを入れるときの感触や、ろっ骨の硬さが生き物を傷つけている忌避感に拍車をかける。小さいながらも心臓や消化管などの仕組みが一目でわかる。ゴム手袋に付着し、メスを持つ手を滑らせる脂肪組織の厄介さを実感する。臓器の形状や名前を図解で見ながら頭に叩き込む。
一段落したところで、マウスを保存液に戻し、片づけをして実験室を出た。実験室のカギを返しに教授室に顔をだす。
「高嶋先生、部屋使い終わりました。カギをお返しします」
「お疲れ様。あ、そうだ、ちょっと次の実験の準備を手伝ってくれないか?」
教授がチョコレートバーを差し出しながら、僕に話しかけてきた。チョコレートにハチミツ、ナッツがコーティングされている凶悪なまでに甘いやつだ。冬山登山者も重宝するといううわさがある、高エネルギーの賄賂を受け取る。解剖学担当の高嶋教授は、人当たりも良く、気さくで、人遣いが荒い。手伝ったお礼はチョコレートバーなのだが、お礼が無くても、今みたいに課外で解剖をさせてくれるなど、授業以外でもお世話になっているので、彼の役に立ちたいとは思う。
「勿論いいですよ、何をすればいいんです?」
「この段ボールを実験室まで運んでほしいんだ」
見ると、一辺が30センチメートル程度の大きさの段ボールが6個ほどある。少し重そうだ。
「この台車使っていいですか?・・・重いですね。中には何が?」
「次の実験で使う試料だよ。箱はそこにおいて・・・そう、ありがとう。3個ずつ重ねてほしい。開封も手伝ってくれるかい?」
「これ、ネコですね…もしかして僕らの解剖に使う検体ですか?開けたら実験台に置けばいいですか?」
「そうだね、パックは開けないでね。あー、注文間違えたな。毛皮つきか・・・最初の時間は毛皮剥ぎからか…時間を食ってしまうな」
教授に言われるがまま、猫の真空パックを実験台の上に1体ずつ配る。倫理的に問題の無い方法で処理されたとされるその検体は、毛皮つきだ。今僕が持っているのは黒猫だ。丁度自分の実験台に置くことになる。心の中でトムと名前を付ける。ネコ一匹から三味線何本分の皮がとれるのだろうと、くだらないことを考えてしまう。
パックの中のネコは保存液に浸かっていた。よく見るとお腹に縫いあとがある。目は半開きで濁った白目が印象的だった。次の実験から数か月間は彼と一緒に過ごすことになるのだ。すべての検体を並べ終え、実験室の電気を消そうとスイッチに手をかけながら振り返り、電気を消した。仰向けで並んだネコが一瞬で闇に包まれる。僕が解剖するネコの方を見やると、幸せそうに丸まって眠る黒猫が見えた気がした。
倫理的に問題の無い方法って、どんな方法なのだろう。あのネコ達は苦しまなかったのだろうか。果たして、彼の命の分だけ価値のある知識・経験を僕は得られるのだろうか。思考の螺旋に入り込んだことを自覚しながら、少し重い気持ちになる。教授からの賄賂のチョコレートバーを開け、齧り付く。
ふと、死刑執行は死刑囚が苦しまずに済む方法を各国がとっているというような話を思い出した。日本では死刑執行前に、死刑囚に饅頭がふるまわれるらしい。チョコレートバーの味が一瞬分からなくなった。
再度教授にカギを返し、理科棟を出たときには日が傾いていた。いつものように建物の前で煙草に火をつけ、鼻の奥に染み付いた死の臭いを追い出す。紫色の魂がゆらゆらと空気に溶けていく様を見ながら、今日の学食のメニューのことを考える。揚げ物しか出ない、辛いか甘いかだけしかないシンプルな味付けの食事に漸く慣れた。世界一不味い食事はイギリスにあるというけど、そのイギリスの食事より酷いのが此処の学食である。湿気たシリアルや、茹でただけの米、伸び切ったパスタ。主食は特にひどい。パンも酸っぱい匂いがしているので、少し長めにトーストしなければいけない。食品衛生法とか知ってるのだろうか。
理科棟から少し離れた学食に向かい、不味いパンをトーストし、コーヒー6杯をカップに注ぎ、フライドチキンを投げ合っている同級生を尻目に席に着く。1杯目のコーヒーを一気に飲み干し、不味いパンをチビチビ食べていると、僕の前の席に女の子が座ってきた。
「ご飯はそれだけなの?」
半ば呆れ、半ば諦めたような口調で話しかけたのは、同じ専攻のイクミだ。実験も同じグループに配されることが多く、時々学食でも一緒に食事を共にする。
「ちょっと食欲無くてね」
「食欲が湧くことってあるの?」
「ここ数年ないかなー。あ、でも教授の実験準備手伝ったら、チョコレートバー貰ったからカロリー的にも問題ないしね」
「君、本当に甘いものは好きだよね」
彼女はすでに僕がご飯をあまり食べないことを知っているから、この程度で済んでいるが、初めて一緒にテーブルを囲んだときは、本当に驚かれた。基本的に、エネルギーが得られれば良いので、糖分と水分が摂れていれば問題ないと思っている。タンパク質は朝に食べる卵で賄える。
「脚気とか鳥目になるよ?」
「ビタミンBとアラニンとればOKでしょ?」
「鳥目すれば色々アラニンってやつ?」
「なんだいそれは?」
「適切なアミノ酸を摂取しなかった場合の影響だったかな」
「今度教えてよ、それ」
「えー、なにしてくれるの?」
「んじゃ、コーヒーおごるよ」
「ティラミスも付けてくれたいいよ」
「おっけー」
彼女が美味しそうにご飯を食べるのを見ながらコーヒーを啜る。この学食の食事でこんなに美味しそうに食べられるのは才能だと思う。幸せそうだ、いいな。とほっこりした気分で見てしまう。
「そういえば、解剖学の授業、次からいよいよ解剖だよ」
「あー、そうだったね。大丈夫かな…」
「ちなみに、さっき検体が到着したらしく、高嶋教授に運ばされたよ。因みにやっぱりネコだった。」
「本当?どんな感じだった?」
「なんか、真空パックになってた。たぶん僕らのは黒いやつだね。トムって名前つけるから」
「また…前もジェリーとか名前つけてたよね、あの小さいネズミに」
「その方が大事に解剖しようって気にならない?」
「逆に解剖する気が失せるよ…」
6杯目のコーヒーを飲み切り、彼女も食事が終わったので喫茶店に向かおうと席を立つ。大学の敷地から少し外れたところにひげ面のマスターが経営している喫茶店がある。夜遅くまで店が開いているので、試験勉強の気分転換に重宝している。お勧めは、エスプレッソとビターコーヒーを1対1でミックスした「レッドアイ」だ。飲めば眠れなくなり、寝不足で目が赤くなるからだとか。カフェイン耐性ができている僕には全く効果が無いのだが。この店のティラミスが、なかなか安っぽくておいしいのだ。試験前ではないので、普通にブレンドとティラミスを2つずつ注文し、席に着く。
「ほい」
「ありがと」
「情報料だからね。試験前は頼むよ」
「わかってるわよ。でも、君はコーヒー6杯飲んだのに、またコーヒー飲むんだね」
心底呆れた目で彼女が僕を見る。
「学食のコーヒーは出がらしだからね、コーヒーじゃないよ。色つきの水だよ、あれは」
「たしかに」
甘ったるく安っぽいティラミスを、コーヒーで流し、他愛のない会話に花を咲かせる。ふと、今日並べたネコと一緒に入っていた紙のことを思い出し、口にする。倫理的に問題の無い方法で云々というやつだ。
「そういえば、ネコが入っていた箱に、『この検体は倫理的に問題の無い方法で処理されたものです』って書かれていた紙も同封されていたんだよね」
「へぇ、どんな方法なんだろうね?随分曖昧な表現だし」
「わからないけど、倫理って、結局その時代やコミュニティによって変わってくものだから、具体的に記載すると、どうしてもそれに反発する団体とかがでてくるのだろうね」
「あー、でも、結局それでネコを殺してるんだから、その時点で色々なところから色々言われてそうだね」
「確かに・・・倫理的に問題があろうが無かろうが、ネコたちは死んだんだよね…」
彼女はそう言って、なんとも言えない顔をした。
自分が死ぬと分かった瞬間、ネコはどのような感情を持つのだろう。悲しみだろうか、恨みだろうか。人以外の動物は感情を持たない、なんて考える人もいるらしいが、それは違うと思う。人以外の動物は感情を表す言葉を持たないだけだと思う。
小一時間、喫茶店で彼女とだらだらした時間を過ごしたあと、図書館で勉強しようか、という事になり河岸を変える。紙コップに入ったコーヒーの残りと、限界まで教科書を詰め込んだ10キロはある鞄を持ち、図書館までの道を辿る。理科棟の斜め向かいに図書館がある。ちなみにここも真夜中まで開いている。教科書を広げながら、今度の試験の範囲を確認していく。人間の骨と筋肉の内、合計50個が出題されるという。「テンポラル」とかは、骨と筋肉の両方に使われているので、ひとつ覚えてしまえばよい。因みにラテン語で「時間」を意味する。側頭部の筋肉と、その下にある骨を指し、なんでも、この部分から白髪が生え始めるため、人の時間経過=加齢を感じることができる部分から名付けられたらしい。
暗記カードをこれでもかというほど作り、その厚さにうんざりした頃、図書館の閉館時間がきた。彼女とまた明日、と挨拶を交わし別れ帰路につく。寮への帰り道に、理科棟の前で一服する。コロコロと変わる彼女の表情を思い出し、胸に暖かいものが広がっていくのを感じる。このまま部屋に帰る気分もなれず、寮と理科棟の間にある小さな庭園に向かうことにする。其処には、小さな木製のテーブルと、椅子がおいてある。昔は、晴れた日にここで授業をしてたらしい。もう一本、と、タバコを取りだし、火をつける。小さく火が灯り、タバコの先を赤く彩る。深呼吸をするように煙を吐き出し、自らの寿命を浪費する。少し前にここにスカンクが出たことを思い出した。
今と同じようにタバコを吸っていたら、茂みから何か黒いものが動いていたのだ。栗鼠か何かかと思ったら、まさかのスカンクだ。刺激すると、肛門腺から液を射出されてしまう。目に入ると失明の危機すらある、密かに危険な生き物だ。一分くらい目と目を合わせていただろうか。そっと目を逸らした隙に、そいつは僕の視界から消えた。熊に遭遇するよりは安全かもしれないけど、野性動物であることには変わらない。あの時は、少なくとも僕にとっては思いがけない出会いだった。いるはずのない生き物が、僕の目の前に現れ、消える。自然の多い学校なので、狸や栗鼠、猫なんかは見かけるが、まさか野生のスカンクに遭うとは。
タバコが根元まで灰になったところで、部屋に戻ろうと、顔を上げる。ふと、消灯している理科棟の窓からぼんやりとした光が見えた、気がした。解剖実験室の窓だ。恐る恐る窓に近づき、覗く。仰向けになっている真空パックのネコが並んでいる。そのうちの一匹の上にその光があった。僕たちが解剖する予定の黒猫のトムの上だった。暗い部屋、解剖教室、幾つもの猫の死骸が並ぶ実験台。シチュエーションは完璧だ。少し足が震える。心臓も早鐘を打つのがわかる。怖い。
ぼんやりとした光の中心に、やたら幸せそうな顔をして寝ている黒猫がいた。周りが暗いのに黒猫だと分かる。
(幽霊、なのか?いや、まさか。)
科学の徒である理系大学生の僕は、所謂超常現象の類いに対して一歩距離を置いて生きている。幽霊だの未確認飛行物体だの、超能力だのについて、否定する気は無いが、少なくとも僕は説明できないものを信じる気もないし、この目で確認したもの以外は信じないことにしている。ということは、今、僕が見ているこの黒猫の死骸の上にいる黒猫は、何なのだろうか。外見は幸せそうに眠りについている猫そのものだ。幽霊は寝るのだろうか。そもそも、こいつは幽霊なのか?10分位見ていたが、ずっと丸くなって寝ているだけなのでそっと窓から離れようとした瞬間に足を踏み外し、額を窓にぶつけてしまう。がんっという音が響く。慌てて光る猫の方を見てみると、びっくりした顔をしてこっちを見ている。
目が合った。猫はこちらを興味深そうに見やると、にゃあと鳴くように口を動かす。ガラスの所為か、鳴き声は聞こえない。
「なんなんだ」
独り言のように思わずつぶやく。
「猫の死骸、僕が解剖する予定の猫の上に寝ている黒い猫。音には反応する。声を出せるかは分からない。とりあえず、怖くなさそうだ」
ん?という顔をして、僕の方を見る猫。興味があるようだ。指でガラスをとんとんと叩く。音に反応して、耳と目を動かしているのがわかる。こちらに来ようとしているが、動けないのか、猫の死骸から遠くへは行けないらしい。体の一部が引っ張られるというよりは、何故かわからないけど、進めない、そういう印象を受ける。猫は暫くこちらを見ていたがやがて興味を失ったのか、また丸まり、あくびを一つして寝始めた。今度こそ、そっと窓から離れる。明日、朝の授業後に少し時間があるので、解剖教室に行って、確かめてみよう。僕は寝床の寮に足を向けた。
カードキーで、寮の玄関を解錠し、荷物チェックを終える。寮長に軽く挨拶をし、階段を昇り、3階の端の部屋を開ける。ルームメイトのビルがベッドに横になり、ポテトチップスを食べながらテレビ—プロレス—を見ている。悪役レスラーが、火のついていない葉巻を加えながら善玉レスラーを挑発していた。
「ただいま」
「お帰り、図書館帰りかい?」
「ま、ね。少し中庭でリフレッシュしたけど」
「ああ、スカンクが出た、あそこ?」
「そう、あの時はちょっと怖かったよ。トリプルA、今日も勝ったのかい?」
トリプルA、ビルが贔屓にしている悪役レスラーだ。
「今日はまだ出てないよ。彼はいい演技するから出てくれると楽しいのだけどね」
「やっぱり悪役の方が個性でるよね」
「うん、そうだね。どうしたの?顔色悪いよ」
「ああ、いや、別に大したことはないのだけどね」
同じ寮の部屋に住んで3年になるルームメイトは、日常の下らないことを気軽に話せる良い奴だ。どんなつまらない話でも、ちゃんと話を聞いてくれるので、恋愛から授業のことまでなんでも言い合える仲になっている。この間も、好きな子に振られたらしく、3日間くらい愚痴を聞かされもしたが。
「僕自身もまだ信じられないんだけどね」
そう言いつつ、先ほど見た猫の話をしてみる。
「へぇ!本当かい?まだ、その猫はいるのかい?」
「分からないけど、たぶん居る、かなぁ」
「行ってみようよ!俺も見たい!」
やっぱりそうなるよね。
「おっけ、行こうか。僕の気のせいかも知れないし、もう居ないかもしれないけど」
荷物は部屋に置いて、彼と一緒に寮を出る。理科棟と寮の間の中庭を通り、解剖教室の窓の下まで辿り着いた。窓枠によじ登り、部屋の中を見てみる。猫は気持ちよさそうに寝ていた。
「まだいるよ」
「え?本当かい?早く見せてよ!」
「寝てるから静かにね」
僕が窓から離れると、待ちきれないようにビルが窓に張り付く。暫くきょろきょろと部屋の中を見回しているが、やがて首をかしげながら窓から離れる。
「どこにいるの?」
「窓際すぐの実験台だよ」
「いや、気味の悪い猫の死骸が並んでいるのは分かったけど、それだけだったよ」
「いや、そんなはずは無いよ」
そういいながら、もう一回窓にしがみつく。やっぱりいる。すべての野生をどこかに置いていったかのような顔で寝ている。
「うん、寝ている猫がいるよ」
ビルが何回か窓によじ登り、中を見たが、何も見えないようだ。
「やっぱり何も見えないよ。俺には見えないのかな」
「どうだろう?平和そうな顔して寝ている猫が見えない?」
「嘘をついているようには見えないし…、一旦部屋に戻ろうか」
部屋に戻り、お互いのベッドに腰かけながら、コーヒーを飲んで一息つく。ルームメイトも何やら難しい顔で、コーヒーを啜る。
「君が見えて、僕が見えない。君も見えていないのに、僕を担ぐ為に嘘をつくことはあるかもしれないけど、嘘をつくような人間ではないし…。後は、君が見えている『つもり』になっている可能性もあるか。」
「どういうことだい?」
「何かを切っ掛けに、猫の幽霊?を見えていると思い込んでいる、いうことだよ。本当は、猫は死骸だけしかあの場には無くて、君が幻覚を見ているだけだってこと」
「確かに、現時点ではその可能性はあるね。他に見える人がいたら否定できる…か」
「そうだね、ただ、もし他に見える人がいなかったとしても、君以外の他の人には見えないという可能性も否定できないけどね」
「一人や二人が見えたとしても、同じように幻覚を見ている可能性も逆にあるってことか」
「集団ヒステリーの一種で、本来見えないものを多数の人が見たって主張する例もあるからね」
「確かにね。ただ…困ったな」
「どうしたんだい?」
「あの猫、ああ、死骸の方ね、今度から僕のグループが解剖するんだよ。猫がみえたらやりづらそうだ」
「幽霊の方が怒るかもしれないってことかい?」
「ああ、それもあったね。それ以上に、あんなに無害そうな顔をして幸せそうな猫の目の前で、猫の死骸を解剖するってのが、自分の中で抵抗があるというか…説明しづらいけど」
「良心の呵責ってわけではなさそうだね」
「うん、なんていうか、僕が見える猫は本当に幸せそうに寝ていたんだよ。眠りを邪魔することになりそうで、少し躊躇してしまいそうだ」
「ま、その辺は後々考えることにしようか。…もうこんな時間か。寝なきゃ」
気が付けば、2時を過ぎていた。明日の朝は早い授業があるので、寝坊しないようにしなきゃと、いそいそと寝る準備をして、目覚まし時計をセットし、眠りに就いた。
小説なんかだと、不思議な出来事が起こった日の夜は、それにまつわる夢を見るのがお約束だが、案の定というか、残念ながらというか、よっぽど疲れていたのだろう。夢一つ見ないで目が覚めた。もちろん目覚まし時計が起こしてくれたのだが。ひどい寝相で寝ているビルを足で蹴とばして起こし、シャワーを浴びて出かける準備をする。一緒に食堂に向かい、朝ご飯を食べる。今日はコーヒー7杯にした。後は甘くした麦粥だ。少しシナモンを入れると美味しい、と僕は信じている。
「相変わらずコーヒーばっかりのむんだね」
「ちょっと眠いからね、おまじないのつもりだよ」
「それにしても7杯は多すぎないかい?」
「お腹は膨れるし、ちょうどいいよ」
「そ、そっか…で、今日はどうするんだい?」
「一限が終わったら、解剖教室に行ってみようと思ってるよ」
「そっか…俺は授業だから、行けないなぁ。後で話を聞かせてね」
「勿論だよ」
食堂の前でビルと別れ、教室に向かう。睡魔と戦い、判定負けした授業を受け終え、いそいそと解剖学教室に向かおうとする僕に、イクミが声をかけてきた。
「そんなに急いでどうしたの?」
「あ、イクミ。いや、実はね、昨日図書館からの帰り道に、いつものところで煙草を吸ってたらさ…」
歩きながら、昨日あった出来事を説明する。僕には寝ている猫が見えて、ビルには見えなかったことも含めて。その真偽を確かめるために、今から解剖学教室に向かうことも。
「私も一緒に行っていいかな?」
「問題ないけど、授業は大丈夫?」
「うん、今日の授業は後4限だけだし、私も見てみたい!」
「そっか、んじゃ、一緒に行こうか」
高嶋教授から、解剖学教室の鍵を借りて、中に入る。薄暗い部屋から消毒薬や保存液の臭いに交じって、腐敗臭が漂う。猫の検体は、まだパックから取り出されていないから、この匂いとは無関係な筈だ。電気を点けずに、件の猫の死骸が置いてある実験台に向かう。うん、やっぱりいる。日向ぼっこをしているように、気持ちよさそうに寝ている。薄暗いのに。僕は部屋の入口にいるイクミの方を見て、猫が寝ている場所を指し示す。恐る恐る、イクミもこっちに近づき、少し入ったところで、はっとしたように猫がいる場所を見ている。
「猫、見える?」
猫を起こさないように、僕はイクミに声をかける。驚いて声が出ないのか、無言で彼女は首肯する。よかった、少なくとも妄想・幻覚を見ているのは僕だけではないってことだ。それにしても、本当によく寝ている。昨日は窓にぶつかった音で起こしてしまったが、今日はここまで近づいても寝ているままだ。野生はないのか。ちょっと声をかけてみようか。
「にゃっ」
なんだこいつ、という顔をしてイクミが僕を見る。いや、猫に声をかけるって、やっぱり「にゃ」じゃないのか。猫の耳がぴくっと動いた気がする。
「しゃーっ」
ちょっと威嚇するような声を出してみた。猫はびっくりしてこっちを見る。僕に害意が無いのが分かったのか、少し安心したように、それ以上に興味を持ったかのように僕を見上げる猫。声をかけたはいいけど、これ以上、どうしたらいいのか分からない僕。こいつ、触れるのかな。手を少し近づけてみると、匂いを嗅ぐように猫が鼻を近づけてくる。淡く光ってはいるが、透けていない。鼻に触れる位置まで手を近づけ、止める。猫がさらに興味を持ち、僕の手を鼻先でつつき、舐める。生き物の感触ではないが、確かに触った、気がした。少し手を伸ばし、頭を撫でてみる。触れた。生きている猫を触る、毛皮の感触とは異なり、少しふわふわした得体のしれない何かを触っている感触がある。柔らかい風船といえば良いのだろうか。猫もおとなしく僕に撫でられるがままになっている。
(もっとなでて)
「なんか言った?」
僕はイクミの方を見る。
「何も言ってないよ?それより、触っても大丈夫なの?」
「うん、なんか猫を撫でている感覚はないよ。触れるし、撫でられるけど…」
(のどのほうもなでて)
「やっぱり何かいったよね?」
「何も言ってないわ。どうしたの?」
「さっきから、もっとなでろ、だの、のどのほうもなでろ、だ…の…」
猫をみる。こいつか。試しにのどのほうもごろごろ撫でてみる。
(きもちいい)
気持ちよさそうに、猫がゴロゴロのどを鳴らし始める。
「言葉、なのか?こいつの欲求を頭で理解しているのか?」
ねこに向かって、念じてみる。
(おーい、他に撫でてほしいところあるー?)
(おなかとせなかをわしゃわしゃしてー!!)
意思が通じているのか?
「なんか、こいつと意思の疎通ができてるかも」
「どういうこと?」
「頭の中で、意識を猫に向けて話しかけたら、返事をしてくれた」
「なんて話しかけたの?」
「ほかに撫でてほしいところある?って聞いたら、お腹と背中を撫でてほしいそうだ」
要求通り、お腹と背中を撫でてやる。昇天しそうな蕩けた表情で、猫がにょーんと伸びる。可愛い。
「イクミ、撫でてみる?」
「え、良いの?」
「多分…なんともないし」
こわごわと、イクミが猫ののどの下に触れる。ゴロゴロと猫が歓喜の渦に包まれる。
(気持ちいいかい?)
(さいこー。もっとなでてー!)
(良いけど、君はどうしてここにいるの?)
(わかんなーい。へんなへやにいれられて、しゅーってなって、おきたらぷかぷかで、けむくじゃらのうえにいたー)
何のこっちゃ。毛むくじゃらってのは、こいつの下にいる猫のことなのか?
(そこから動けるの?)
(んー、あんまりうごけなーい)
寝ながらこっちに近づこうとしているが、何かに阻まれて動けないようだ。
(ちょっとだっこしてみていい?)
(いいよー)
寝たまんまの猫を抱き上げる。抱き上げられた。肩口に顎を乗せ、されるがままの猫。そのまま移動してみようか。猫を抱きかかえながら、教室を歩いてみる。動かせる。実験台から少し離れたところで、猫を下す。手が離れた瞬間、猫が目の前から消える。慌ててあたりを見回すと、さっきまでいた実験台の上にお座りしている。
「今、見た?」
「うん、君の手から離れた瞬間に、消えた。」
「そして、実験台の上に戻った。イクミ、ちょっと抱きかかえて移動してみて」
「う、うん、やってみる」
僕がやったのと同じように猫を抱きあげ、少し移動する。
「合図したら、猫から手を離して。」
「うん」
猫から目線を外し、実験台の上をみる。
「はい、離して」
猫が、実験台の上に戻った。お座りして。キョトンとした目でこっちをみている。
(ねぇ、僕らが抱っこしていると、君は動けるみたいだよ)
(ほんとだねー。うれしいな)
(でも、手を放すと、元の場所に戻っちゃうみたいだね)
(そっかー。ずっとさわっていればいいのー?)
(どうだろ。体の一部でも触っていれば動かせるのかな?)
ためしに猫を抱き上げ、少し移動し、足と足の間に猫を挟み、手を放す。そのままだ。
(どこか一部分がついていればいいみたいだね)
(ほんとだねー)
(ちょっと外に出てみる?)
(でるー!)
「ちょっと抱っこしたまま外にでてみようか」
「大丈夫かな?」
「多分ね」
猫を抱きかかえ、部屋の外に出る。間違えて手を放したら戻らなければいけないはずなので、鍵は少し借りたままにしておこう。とりあえず、中庭に連れていくことにする。歩きながら、イクミに声をかける。
「猫とお話できる?」
「ちょっと試してみるね。んー、あ、できたかも」
「なんて話したの?」
「お散歩好き?ってきいたら、お散歩ってなに?って」
猫に聞いてみる。
(お散歩、知らないの?)
(しらなーい)
(外に出て歩くことだよ)
(へー。ここにくるまでおそとにでたことないよー)
(そうなんだ。ずっと部屋にいたのかな?)
(うん、なんかね、しかくいの)
猫の死骸と一緒に運ばれてきたってことかな。それまでは外の世界を知らないってことだから、やっぱりこの猫は、解剖用の猫の魂なのかな。さっきの話だと記憶もあるみたいだし。きっとそうなんだろう。中庭のベンチに座り、膝の上に猫を乗せる。完全な黒猫だとおもったが、よく見ると後ろ足の先が白い。靴下を履いているように見える。
「長靴を履いた猫は有名だけど、靴下を履いた猫って聞かないよね」
「急にどうしたの?」
「ほら、こいつ靴下履いているみたいに見えない?」
「本当だ、見える!」
情が移ってきた。明後日から解剖実習が始まるけど大丈夫か。
(君は猫だってしってる?)
(ねこ?そうなの?)
(うん、猫って呼ばれる生き物だよ)
(どんなの?)
(さっきまで君の下にいた毛むくじゃらと同じだよ)
(へー、そうなんだー。でもあのけむくじゃらはちっともなでてくれないよ?)
(あの毛むくじゃらは、明後日から僕たちが勉強するのに使うんだよ)
(へー、どうやって?)
(それは…えーっと)
答えに詰まる。同族を切り刻むって言っていいのか。
(体の中身をみたりするんだよ)
(ふーん)
「明後日から解剖だよね」
「うわっ、私、この子の前でできる自信がないよ…」
「奇遇だな、僕もだよ。でも、今、こいつに、毛むくじゃらをつかって勉強するって、中身を見るって伝えたけど、反応が薄いんだよね」
「よく伝える気になるね…」
「もしかしたら、猫本人は、猫の死骸と自分がイコールではないのかもしれない」
「どういうこと?」
「犬が自分の姿を鏡で見て、吠え付いたりするのと同じように、自分の姿を見たことがないだろうから、解剖用の猫と自分が同じ姿をしているって認識していないのかもしれないよ」
「そっか、それだったら少しはマシ…なのかな」
「願わくば、自分が解剖する個体と、こいつが別であることを祈るだけだね。後で解剖用の猫の後ろ足を見てみよう」
「そうだね」
膝の上で日向ぼっこをしている猫を撫でながら、しばらくイクミと話をしていたが、そろそろ次の授業の準備をしなければいけない。猫を起こし、解剖学教室に連れ帰る。猫を実験台の上に置く。ついでに、解剖用の猫の後ろ足を見た。うん、白いね。この猫は、僕らが解剖する予定の猫(の魂)ってことだね。
(また、明日か明後日遊びに来るね)
(はーい、またなでてねー)
猫に別れを告げ、戸締りをして鍵を高嶋教授に返却し、次の授業に向かう。
「僕は正直、今自分が経験したことを信じられない」
「私もよ」
「夢とか幻覚の類ではないよね」
「多分違うと思うわ。少なくともそう信じたいわ」
「僕もだよ」
あんまり深く考えても無駄だ。次の授業に集中しよう。
とは言いつつも、気が付けばあの猫のことを考えている自分がいた。ほぼ間違いなく、解剖用の猫が、猫の肉体だろう。そして、僕らはあの猫を解剖する。猫は、僕らに解剖されるために処理されたことは揺るぎのない事実だ。だったら、筋繊維の一本まで細かく丁寧に解剖して、自分の知識・経験という栄養にしよう。それが手向けになるはずだ。そして、あの猫は、解剖が終わったら消えるのだろうか。そもそもなんで出てきたのだろう。もしかしたら自分が死んだ事に気が付いていないのか?
そんなことを考えながら、あっという間に解剖実習の日になる。ビルには猫とお話をした日に、状況を説明したら驚きながらも喜んでくれた。良い奴だ。今日解剖が始まることはしっているので、なんとも言えない顔をしていたが、検体を大切にすると伝えたら安心しているようだった。
4人が1グループとなりそれぞれの実験台の前に立つ。教授が、今日から猫の解剖を開始すること、発注の手違いで猫に毛皮が付いたまま出荷されたことから、今日は毛皮を剥ぐ作業でおわることが伝えられた。ほとんどの生物は、皮膚、皮下脂肪、筋膜、筋肉、という構造をとっている。筋肉を傷つけないで毛皮(皮膚)を除去するには、ピンセットなどで皮膚部分を摘み、鋏で切り込みを入れてから、そこを取っ掛かりに皮を切る。その後、皮膚と筋膜等をつないでいる結合組織をメスで削ぐようにするのだ。言うのは簡単だが、やるのは案外コツが必要だ。ネズミで慣れていたので、比較的スムーズにできたが、皮膚の厚さや硬さなどが異なるため、どの程度の力加減まで許されるのか、メスの角度など気を使うことは多々あった。それ以前に、自分の足元に寝ている猫が自分の体から離れないようにするのに一番苦心をした。
(猫よ。起きてるか?)
(なにー)
(今、毛むくじゃらの皮を取ってるぞ、終わったら見るか?)
(うん、見る—)
きっと、何もない空間でもぞもぞしている僕を、イクミ以外の2人の班員は訝しむ目で見ていたに違いない。僕も同じ立場なら、そうするだろう。その日の実習が終わった夜、ピザを持ち込んで食べながら解剖のおさらいを猫とともにしたり、猫を抱き上げて夜のキャンパスを散歩したりした。
こうして解剖は順調に進み、僕らは筋肉、神経系、血管、消化器、心臓、生殖器…と一つ一つ丁寧に学んだ。猫にも、解剖が終わった後説明をしたりした。少しずつ、解剖用の猫の中身がなくなっていく。最後は骨を解体して、終わりとなる。その後、実験で用いた検体から、実験の試験を経て、学科の試験と進む。他の学生と異なり、ある意味モチベーションが上がっていた、僕とイクミは無事「優」を貰った。
猫は、僕らが解剖していたのが、自分であったことにうすうす気が付いていたらしい。もしそのことを自覚してしまったら、消えてしまうのではないかという僕の考えは杞憂に終わった。解剖実習が全て終わっても、猫は消えたりしなかった。むしろ、肉体が無くなったことで、猫は自分で動けるようになってしまった。僕とイクミ以外は触れないし、見えない。ビルには何度か見せたのだが、やはり見えないようだ。それでも、彼の前で猫を撫でているときの仕草が本当に猫を撫でているようにみえる、とのことで、彼の中ではこの猫は僕やイクミの幻覚ではなくて、本当に存在しているものの、他の人間には見えないし触れないという扱いで落ち着いたようだ。
死んだ自覚がなく、恨みもなく、ただ意識だけを取り戻した猫が、どうして僕とイクミだけが知覚することができるのか、意思の疎通ができるのかはまだ分からない。もしかしたら「倫理的に問題の無い方法」について真剣に考え、議論したからなのではないかとも思っている。世の中には「倫理的に問題の無い実験動物の処理方法」やその是非について真剣に考えている人がいるのだろうから、その人たちにはこの猫を見ることができるのかもしれない。
日向ぼっこをしながら、幸せそうに眠る黒猫を見ながら、僕は猫に名前を付けることを忘れていたことを思い出した。なんて名前をつけようか。
てろ先生の次回作にご期待ください!