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epilogue ―お人好しのブルース―

 澄み切った青空の下、カリヨンの鐘が鳴り響きパルシャワ大聖堂の正面の扉から新郎新婦が現われる。

 新郎新婦は、野次馬で集まった民衆に手を振ると熱狂が返ってくる。

 新郎は、エルフィン=スペンサー男爵。新婦は、リーシャという名の平民。

 パルシャワ大聖堂は、王族や上位貴族の結婚式や国の祭典で使われる場所。間違っても貧乏貴族と平民の結婚式に使われる場所ではない。しかし、今回は状況が違った。

 約二か月前に貴族社会で起こったスキャンダル。

 貴族と平民の一途な恋愛。不当な手段でそれを邪魔する我儘貴族令嬢。ガイアから召喚された救世主が、我儘貴族令嬢の魔の手から二人を救い、恋愛を成就させる。そんな話が民衆の間でブームなのである。

 娯楽の少ないこの世界で、英雄譚や、勧善懲悪物、実話を基にした恋愛話は大人気であった。

 身分違いの恋、貴族社会の闇、英雄が強きを挫き弱きを助ける活躍する物語、そしてその物語の主役である身分違いの恋に苦しんだ男女が本日結婚式を挙げるのだ、話題にならない訳がない。

 国としては、何故か民衆に広まってしまった貴族の、公爵家の醜態を打ち消すため、国のイメージを上げるために、エルフィンとリーシャの結婚式に大聖堂を貸したのだった。

 体のいい人気取りだ。

 ともあれ、二人の結婚は国王の後ろ盾もあり、国にも民衆にも支持されて盛大に執り行われた。

 幸せそうな二人の様子に、祝福の祭りが始まり、ブーケ・トスでその祭りの熱は最高潮達したのであった。





「おめでとうございます、エルフィさんリーシャさん」

「ありがとうございます、マコト様」

「式に出られなくてすみませんでした。さすがに俺が出ていくと混乱すると止められちゃいまして」

「マコト様は、我らを助けた英雄ですからね」

「やめてくださいよ。街で広まってる二人の物語を聞いたら、俺が英雄扱いされててビックリしたのですから」


 エルフィン=スペンサーの邸宅で、マコトとスペンサー夫妻は杯を交わす。

 男二人の杯はワインであった。最初未成年だと断ったが、ファンタジアースでは15歳から酒が飲めるため、郷に入れば郷に従えと飲むことにしたのだ。正直、ちょっと酒にも興味があった。


「それで今日は何の話が?流石に新婚のお二人のお楽しみを邪魔するわけにもいかないので早く話を済ませましょう」


 9割は祝福だったが1割の『リア充爆発しろ』精神によりちょっと意地の悪い笑みを浮かべていたら、エルフティンさんが真剣な顔をしたので座りを正す。これは茶化してはいけない話だ。


「実は――――私達の子供が出来ました」



「おめでとうございます!」



 想定外の話に少し間が開いてしまったが自然と祝福の言葉が出た。


「ありがとうマコト君」


 お腹をさすりながら、頬を赤らめ微笑むリーシャさんがとても美しく神聖に思えた。


「いいな結婚!」

「エルフィンさん、なんかむかつくので一発殴らせてください。今更ですけど、俺殺されかけたのですよ?それなのに俺は、童貞で彼女いないとかずるい。俺も可愛い子見つけて結婚したい!」


どうやら悪い酒の様だ。


「それで相談なのですがマコト様」

「あっはい」

「あなたの名前を私達の子供にくれませんか?」

「え?それはどういう?」

「これから生まれる私達の子供の名を『マコト』にしたいのです」

「構わないですが、本当に?こっちの世界の名前ぽくないですけど大丈夫ですか?」

「マコト様、私には夢があるのです」

「夢ですか・・・」


「自分の子供には英雄の名前を付ける、という夢です」


「ちょっと待ってください。俺は別に英雄では」

「私にとっての英雄はあなたです。もちろん、このことはリーシャも賛成してくれています」

「私からもお願いするわ。マコト君の名前なら、勇敢で優しい子に育ちそうだし」


 なんだろうこの罰ゲーム感。

 嬉しいけど恥ずかしい様な、嫌な様な誇らしい様な。


「エルフィンさん、乾杯しましょう。今度はマコト=スペンサーが元気に生まれることを願って」


 エルフィン=スペンサーの邸宅で、マコトとスペンサー夫妻は杯を交わす。二人の門出と新しい命を祝って。

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