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―異世界ブキウギ―

拙い文章ですがよろしくお願いします。

「救世主様、どうか私達に力をお貸しください」


 どうしてこうなった。






 いつもの時間に起き、いつもの電車に乗り、いつものコースで学校に行く。俺は、佐野誠人(サノマコト) ♂ 16歳。平凡と平和を愛する高校1年生だ。


「誠人君おはよう」


 いつも通り校門を抜けようとすると幼馴染の野村美羽(ノムラミウ)がこちらに手を振りながら挨拶してきた。 俺は軽く挨拶を返すと逃げる様にその場を離れた。


 野郎共の視線が痛い。


 美羽は、天然巨乳でお嬢様なふんわり系美女だ。そのために「美羽姫を見守る会」とか言うようファンクラブが存在する。そいつらからしたら、顔面偏差値が中の下なのに美羽と親しくする俺は気に食わない存在なのだろう。しかも、そのファンクラブの会長でもあるクラスメイトのヤンキー野郎、中村宏(ナカムラヒロシ)にはストーカー疑惑をかけられている。俺の行く先々へ美羽が現われているだけなのに、なんで俺がストーカー扱いされないといけないのだ。更に、美羽を追いかけてこの学校に入学したキモイストーカー野郎とレッテルまで貼られている始末だ。


 そもそもこの学校は、進学校でなければ底辺校でもない。ちょうど真ん中くらいの普通のレベルの高校だ。そこに全国模試でもトップクラスの美羽が入学するのがおかしいのだ。


「やっふーまこちゃん」

「おはようございます誠人君」

「おはよう誠人」


 黄色い悲鳴と共に現れたイケメン3人。1人女だが。

 こいつらもそうだ。美羽と並んで成績はトップクラスなのに、なんでこんな平凡校にやってくる。


 保住翔(ホズミカケル)は、運動神経抜群系イケメンで財閥の御曹司。周りに群がる女の子を押しのけて、何かと俺にかまってくる。だからなのか翔のファンの女の子から俺は目の敵にされている。


 水野優紀(ミズノユウキ)は、医者の息子。知的イケメン。眼鏡クイッてやるだけで、周りから黄色い歓声が上がる。俺が眼鏡クイッしたら悲鳴が上がるけどな。普段は、クール系で寡黙だが俺の前だとはしゃぐ。ファンの女子からしたらそれが気に食わないらしい。一部の女の子に「翔様×優紀様の邪魔をしないでください」と抗議文を貰ったことがある。ラブレターだと思ったのに・・・。


 久住真理(クスミマリ)は、男装系美女だ。本人は、可愛い物好きの乙女でそのつもりはないのだが、長身でデル体型、さっぱりした性格のためそうみられる。男女ともに人気がある。真理と話をしているだけで「お姉さまを汚すな」と不幸の手紙が送られてくる。お姉さまって君たち同級生だろうと。なおラブレター(ry


 美羽も加えて、このハイスペックな4人と平凡な俺は幼馴染だ。幼稚園児の頃に出会ってそれからずっと一緒にだった。仲の良い幼馴染5人。

 いつからだっだろうかみんなと俺が違うことに気が付いたのは。それについて不満はなかった。子供心にそういうものなんだろうと理解していたしみんなは良い奴らだった大人になってもずっと仲良く出来ると思っていた。しかし、折れたのは俺だった。優秀な4人+1と言う扱いに耐えきれなかったのだ。知らないやつに腰巾着だのおまけだの言われるのは平気だった。だが、親に「あの4人に迷惑かけるなよ」と言われた時にはさすがに萎えた。だから中学は、無理を言って隣町の私立の中学に通った。幼馴染達には非難されたが俺は平和な3年間を過ごせた。


 そして高校入学。まさかの入学式で幼馴染達と遭遇。


「なんでだよー」


 思わず情けない声がでた。しかし、それは悲劇の始まりだった。幼馴染4人と同じクラスになったのだ。マジ呪われている。


 そんなわけで俺の平和な日常は幼馴染4人にかき乱されている。あいつ等気付いていないんだよな、自分たちのファンがどれだけ面倒だか。本人には影響ないからわからないか。


 俺の日常は、休み時間に寝たふりをすることから始まる。幼馴染4人が集まってくることによる嫉妬の目を防ぐためである。特に、美羽が寄ってくると後ろの席の中村が椅子を蹴ってくるのである。マジ止めて。


 そして、昼休みも寝たふりだ。昼休み前半は寝たふりで幼馴染達をしのぎ、後半は便所で弁当を食う。パーフェクトスタイル。便所飯なんて嫌だったのだが校内の何処で飯を食ってても美羽が見つけてくるのだ。さすがに便所までは見つけに来ないから、昼休みは唯一の憩いの場となった。



 さて今日も昼のチャイムが鳴る。幼馴染達が集まってきたが寝たふりだ。


「誠人君お昼ご飯一緒に食べようよー」


 美羽が甘ったるい声で誘ってくる。だが断る。お前らと飯を食うと視線で飯の味がわからなくなる。


キャッ――!


 突然、悲鳴が上がる。

びっくりして顔を上げて辺りを見回すと、教室全体が光の円柱に包まれている。

何人か教室から出ようとしているが光の壁に阻まれて逃げ出せないようだ。まったく状況がわからない。

次の瞬間、目の前にいた美羽が光の粒になって消え始めた。翔も優紀も真理だ。思わず叫ぼうとしたが声が出ない。俺も光の粒になって消えようとしていた。





「うわぁぁぁぁ・・・あ?」


 手がある。体がある。目の前に幼馴染達がいる。生きている?

周りを見渡すとそこはバスケットコート2面ほどの広さの空間で、天井と壁は石造り、部屋の中央に2mほど台座に乗った水晶玉、床には部屋いっぱいに魔法陣の様なものが書かれている。見知った顔はいないかと更に見回すとあの時に教室にいた生徒全員がここにいるようだ。


 突然、正面の扉が開き、王冠を被った王様?のコスプレ?みたいな人と西洋甲冑?のコスプレ?な人が10人ほど部屋に入ってきた。


「ようこそ異世界ファンタジアースへ。召喚に応じてくれて感謝いたします。救世主様方をお待ちしておりました」


 ファッ!?



 王冠を被った王様みたいな人は王様でした。西洋甲冑を着た人は護衛の騎士でした。王様の指示で、説明おじさんこと宰相さんが色々説明してくれました。


 ここは、ファンタジアースという世界のパルシャワ王国。

 ファンタジアースの上位世界のガイアから召喚されたのが僕ら。上位世界からの召喚者はファンタジアースの住民より能力が高い。

 現在、人間と魔族とで戦争中。

 戦況は不利で起死回生で異世界召喚をおこなったと。

 魔族はバトルジャンキーで侵略や殺戮ではなく戦うことを目的としている。なので魔族数名か魔王を倒せれば戦争は終わる。

 魔族は人間より強いが数は少ない。

 ガイアからの召喚者は最初から魔族と同等の力がある。戦況を覆すためになんとか協力してほしい。


 異世界、ファンタジーということで一部テンション上がっている奴がいるが、色々説明が足らないし、一方的すぎる。優紀が眼鏡クィパワーを駆使して宰相に質問を始めた。


 元の世界に帰れるのか。

 転移のオーブを使えば全員帰れる。ただ起動する魔力が貯まるのに約1000年かかる。しかし、後で配るステータスタグと転移のオーブをリンクさせることによって討伐した魔物の魔力をオーブに注がれ短期間で帰れるようになる。予測では1年とみている。


 報酬は出るのか。

 ガイアに帰還するときに、金や宝石類を渡す予定である。またこの世界で覚えたスキルは、効果は弱くなるがガイアに戻っても使えるので帰還を見越して戦闘以外のスキルも身に付けることをおすすめする。


 安全なのか。

 絶対に安全とは言い切れないが、国と貴族が全力でサポートする。余ほど無茶なことをしなければ大丈夫だ。


 優紀は納得したようで質問は止まった。優紀の影響なのか今まで黙っていた生徒たちが一斉に質問を始めた。


 魔法は使えるのか。

 使える。


 ネコ耳娘はいるのか。

 猫獣人ならいる。


 ネコ耳メイドは。

 城で雇っているメイドは人間のみだが貴族の中には猫獣人をメイドとして雇っている者もいる。しかし、猫獣人は、何事にもルーズな種族なので獣人をメイドとして雇うなら犬獣人をお勧めする。


 エルフは。

 います。


 奴隷はいるのか。

 この世界に奴隷制度はない。禁止もされている。戦闘奴隷が欲しいなら冒険者ギルドに頼めば戦闘サポートを冒険者に依頼できる。


 奴隷ハーレム・・・。

 はっ?


 こいつら欲望垂れ流しだな。


 俺も質問してみた。


 会話は普通に成立しているけどファンタジアースも日本語なのか。

 転移のオーブで召喚されるときに翻訳の加護が付き問題なく会話できる。


 文字の読み書きは。

 対応してない。


 翻訳は直訳なのか意訳なのか。

 意訳になる。


 翻訳が成立するのは人間だけなのか。

 ファンタジアースに存在する全ての会話できる生き物を意訳で翻訳。


 うん、言葉で困らないことはわかった。





 大体の質問は終わり、歓迎パーティーの会場に移動。パーティーの会場は先ほどの部屋と同じくらいの大きさで、天井からはシャンデリア。シャンデリアは明るく光っているが電気のはずはないので魔法が光源かな。部屋全体は装飾された造りで、テーブルには料理が並び、侍女が飲み物を配っている。立食形式か。

 会場には、王様や貴族、その子弟の青年や令嬢達が着飾って談話している。その他には護衛の騎士や衛兵が会場の周囲に直立している。


 生徒達全員が会場に入ると、王様の話が始まり、乾杯。しばらくの歓談の後に、生徒全員にステータスタグが配られた。そして、タグの説明、ステータスの説明、パトロンの説明があった。

 ステータスタグに血液をたらすとタグ内に宿る精霊と契約できる。するとステータス情報を表示されるようになり、タグは契約者が死なない限りその身から離れることはないし契約者以外は触れられない。

 ステータスはタグを握りながら魔力を流すことで立体映像の様に表示される。魔力の流し方がよくわからなかったがタグを握りながら頭の中で「ステータスオープン」と考えるだけで良いらしい。

 タグと一緒に針も用意されていたので、その針で血を一滴採り、タグの登録、そしてステータスの表示をしてみた。


「ステータスオープン」


――――――――――――――――――


種族名 人間(ガイア)

名称 佐野誠人(サノマコト) ♂ 16歳


レベル:1/99

HP 100/100

MP 10/10

力  F

体力 F

知性 F

精神 F

速さ F

器用 F

SP 0/10


スキル

状態異常吸収:Lv-

全ての状態異常を無効化吸収する


ステータスタグ:佐野誠人


所持金:0ルピス

――――――――――――――――――


 良いのか悪いのかよくわからない。召喚者は、固有スキルを1つ宿すそうだが俺の固有スキルは<状態異常吸収>の様だ。吸収の意味はちょっとわからないが無効化って結構よくない?


 俺のステータスを確認した衛兵が、凄く渋い顔をしていた。


 他の奴はどうかなと近くにいた翔のステータスを覗いてみた。


――――――――――――――――――


種族名 人間(ガイア)

名称 保住翔(ホズミカケル) ♂ 16歳


レベル:1/20

HP 300/300

MP 50/50

力  C

体力 C

知性 D

精神 D

速さ C

器用 D

SP 0/10


スキル

勇者:Lv-

戦闘時、各能力が+1される


――――――――――――――――――


 うそん。能力値のランクが全然違ううえに固有スキルが<勇者>。異世界でもハイスペックかよ。

 他の幼馴染3人は、3人とも能力はC~Dで固有スキルは、優紀が<賢者>。美羽が<聖女>。真理が<軍師>。やっぱりハイスペックだった。


 近くにいた衛兵にランクについて尋ねるとCは上位魔族クラス、Dは魔族クラス。Eが一般人クラス。能力の平均がD~Eあれば人間としては優秀だそうだ。


「そうなるとオールFの俺は弱いということかな」

「はい、最弱です。一般人よりも劣ります」


 他のクラスメイトのステータスは、平均してD~Eだった。


 俺、最弱じゃねーか。


 もう少し平均的な能力が良かったのにがっくりしていると貴族や衛兵達の囁き声が聞こえてくる。


「なんだあの役立たずなスキルは」

「異世界人なのに私達より弱いとは」

「成長率も最低だな」

「良い所がない」

「ハズレだな」


 気付いたら俺の周りから人がいなくなった。幼馴染達には貴族たちが群がっている。他のクラスメイトにも少なからず人が集まっている。美羽はこちらを気にしているようだが貴族たちの囲いから動けないでいる。


「少しよろしいでしょうか、サノ様」


 一人の青年が俺に話しかけてきた。エルフィン=スペンサー男爵という顔は良いが何処かみすぼらしい貴族だった。


「是非、私にパトロンをやらせてください」

「パトロン?」


 エルフィンの説明によるとパトロンとは、異世界人をサポートする貴族のことを指すそうだ。王国から戦いに出るための支度金が配られるが、それの他に魔法の武具や高級な道具、スキルを宿した魔石の提供、戦闘訓練の手配、護衛の兵や冒険者の派遣などのサポートだ。

 貴族達にとってはパトロンになることが名誉で、自分がサポートした異世界人が活躍することによって自身の立場や影響力を強く出来る。王族なら王位継承権が上がる場合もあるそうだから驚きである。そういう理由により、この歓迎パーティーはスカウトの場でもあったのだ。


「なるほど、だから俺の周りは人がいないわけだ」

「残念ながらそうなります」

「それでスペンサーさんは何でこんな俺のパトロンを?」

「エルフィンと呼んでください。私は貧乏貴族で、召喚者様のサポートをする財力やコネがありません。しかし、貴族として野望があります。私がサポート出来る方で見込みのある方がサノ様なのです」

「俺より見込みありそうな奴は結構いそうだけとな。誰もツバを付けていないのが俺くらいだからだろ?」

「正直言います。その通りです。このチャンスに何もしないわけにはいかない。しかし、何かをする力がない。そんなときに不人気のあなたです。最低限の投資で名誉を得るチャンスだったのです」

「一応、期待はされているわけだ」

「腐っても異世界人ですからね。例え能力が低くてもスペックはファンタジアースの人間よりも上です」

「腐ってもって」


 思わず苦笑いが漏れる。これは渡りに船だな。何も知らないで異世界に放り出されるよりはマシだ。


「わかりました、エルフィンさん。最弱な俺ですがよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。明日、私の方でサポートをする冒険者を紹介しますので今日はゆっくりとお休みください」


 そう言って固い握手をするとエルフィンさんは会場を去っていった。

 ん?ゆっくり休めってどういうこと?エルフィンさんが泊めてくれるとかそういうことではないの?


 寝床問題はすぐに解決した。城の侍女が、客室に案内してくれた。ファンタジアースにいる間、この部屋は俺が自由にして良いそうだ。食事も城の食堂で摂れるらしい。

 侍女は「支度金になります。旅先で必要な物はこれでご購入ください」と拳大のパールの様な珠を取り出すと、俺のステータスタグに近づけた。侍女に促されてステータスを表示されると一番下に<所持 金:5,000,000ルピス>と表示された。


 500万!


 ルピスの価値は良く分からないが金には困らなそうだ。


「パルシャワ王国領では、ステータスタグでルピスのやり取りが可能です。また各地にある冒険者ギルド、もしくは商業ギルドでタグからルピスを引き出すことが出来ます。パルシャワ城下でこのタグで買い物をすれば支払いは全て国が持ちますので準備にお使いください。それでは何かあればお呼びください」


 そう一気に説明すると侍女は部屋を出て行った。衣食住は心配ないな。


 夕食の時間になり、食堂に向かった。

 幼馴染達やクラスメイトは貴族達に食事に誘われているらしく食堂でぼっち飯をすることになった。

というか、城の人達は遠巻きに見てくるが近づいてくれない・・・。

 夕食のメニューは、パン、白身魚のフライ、ローストビーフ、温野菜シチュー、サラダと味はかなり良かった。


 食堂から客室に戻るときに、クラスメイトの中村とすれ違った。


「最弱野郎のお通りですか。美羽さんに近づいたらワンパンで潰すからな」


 調子に乗ってやがる。そういえばこいつ奴隷ハーレムがとか質問してたな。

 一緒にいた川田と友達の女子2人はそんな様子を見てクスクス笑っていた。こいつらも調子に乗ってるな。


 色々あった一日だったが、その日はフカフカベッドでゆっくりと眠った。自宅のベッドより質が良いことに少し憤りを感じた。





 翌朝、日が昇ると同時に侍女に起こされた。すでにエルフィンさんが訪問しており、俺との面会を待っているそうだ。異世界の朝が早い。つらい。


 身支度を済ませ、エルフィンさんに会う。食事がてら紹介したい人がいるので外に行きましょうと誘われ外出することに。


 エルフィンさんに案内された店でお勧めの朝食を。うん、どう見てもホットドック。

 ホットドックがあればもしかしてと思ったが、コーラなどの清涼飲料水はなく、飲み物は何かの果汁を水で薄めた物だった。何か物足りない。


 意外と美味しいホットドックを堪能していると、俺達が食事しているテーブルにセクシーなお姉さんが座った。

 金髪セミロングに色白でたれ目。肉厚な唇が僅かに濡れていてヤバい。身長はそれほど高くないが中肉中背で太もも出し出し。更にヤバいのは胸元パッカーン。メロンがこぼれそうです。メロンが果汁ごとこぼれ出そうです。YESおっぱいNOタッチ。


 その女性は、リーシャと名乗った。エルフィンさんの紹介の女冒険者だった。


「サノ君ね。よろしくね」

「マコトと呼んでください」


 即答した。


 リーシャさんを交えて食事をしながらエルフィンさんと今後の相談をした。

 まず、冒険者ギルドに登録する。ルピスの引き出しや魔物の素材が売れたりと便利だそうだ。登録後は、ステータスタグから500万ルピスを引き出し、リーシャさんに預ける。その500万ルピスを元に、リーシャさんが同行する冒険者を雇ったり、同行者に必要な道具類を購入してくれるそうだ。ステータスタグは本人しか使えないので現金が必要らしい。

 リーシャさんが同行者を探す間に、エルフィンさんの案内で武具や道具を揃える。これらはステータスタグを使えば王国払いになるそうだ。

 装備が揃ったら、軽く昼食を食べ王都から北の魔獣の森浅部でリーシャさんと夕方まで魔物狩りを。リーシャさんがギリギリまでHPを削った獲物を俺が止めを刺すそうだ。パワーレベリングか。パワーレベリングと聞いて顔をしかめていたら「まずは、ある程度LVを上げて鍛えることが大事よ」とリーシャさんにたしなめられた。

 数日かけてある程度LVが上がったら魔族領に向けて旅立つそうだ。


 うん、俺頑張るわ。


 方針が決まったのでまずは冒険者ギルドへ。ステータスタグを登録して500万ルピスを引き出した。登録した冒険者ランクは<E>だった。


「私が力があればもっと上のランクに登録出来たのですが、力及ばずですみません」

「かまわないっすよ。下からの方が上げる喜びもありますし」


 エルフィンさんは申し訳なさそうにしていたが、俺はちょっとワクワクしていた。

 一旦、リーシャさんと別れて武具屋へ。エルフィンさんが案内してくれた店は高級店だった。


「支払いは王国なのでここは奮発しちゃいましょう」


 エルフィンさんは興奮して武具を物色しはじめた。エルフィンさんの方がテンション上がっちゃってるんですけど。


 最終的に武具は、エルフィンさんチョイスの物にした。ごり押ししてくるんだもん。


右手 :ミスリルの片手剣<研磨><切れ味>

左手 :ミスリルの盾<硬質化><軽量化>

副武装:ミスリルのダガー<切れ味>

頭  :飛竜皮のヘッドギア<硬質化>

上半身:龍鱗具足-上-<軽量化>

下半身:龍鱗具足-下-<軽量化>

腕  :龍鱗具足-腕-<軽量化>

足  :龍鱗具足-靴-<軽量化>

装飾品:ステータスタグ<佐野誠人>

:銀の腕輪<力UP><速さUP>


 高級素材の武具で全て魔法付与されている。総額930万ルピスだった。支度金より高額なんですけど・・・。


「命を預ける道具なのですから、ケチらないほうが良いですよ」


 自分の財布が傷まないからエルフィンさん力説。細かい道具を購入したら総額1000万ルピス越えてた・・・。


 支払額にドン引きした買い物を終えてリーシャンさんと合流して軽く昼食。昼は、トマトとベーコンのパスタと野菜たっぷりのコンソメスープ。うん、なかなか美味しい。

 異世界の食事を心配していたが今のところ味は問題ない。寧ろ美味しい。見た目や味も地球と似たような料理や食材が多いので安心だ。ただ、主食が小麦で味付けは塩と香辛料なんだよなぁ。米食べたい、醤油が欲しい。

 食後はエルフィンさんに見送られて魔獣の森へ。いよいよ実践だ。





 王都から徒歩1時間ほどで魔獣の森に到着。俺は既にぐったり。あんなに歩いたのにリーシャさんは元気そうだ。


「さぁ行きましょう」


 休憩なしにリーシャさんは森に向かってグイグイ進んでいく。心構え無しで森に放り込まれた俺だが逆にそれがよかった。変な緊張もなくリーシャさんの後ろをついていく。

 しばらくすると先行していたリーシャさんが僕に顔を向け、人差し指を唇に当てて「シー」のジェスチャーをする。そのまま無言で唇に当てていた人差し指で前方を指さすとすっと剣を抜いた。


 リーシャさんが指をさした先には兎がいた。たぶん兎だ、何故ならでかい。体長1mといったところだろうか、大型犬くらいのサイズはある。その兎は、頭から先端が鋭利なツノが1本生えていた。俺の知っている兎と比べると、大きさもだが、その姿も異常だ。名付けるなら一角兎(ホーンラビット)といったところか。


 俺が驚いているとリーシャさんが兎に向かって駆け出し、兎が動く間もなくその胴体に剣を突き刺した。兎はピクピク痙攣をしていて瀕死の様だ。


「マコト君止めを」


 生き物を殺すことにビビりつつ剣を抜き、兎の体に軽く剣を当てると剣自体の重さで兎がスパッと切れた。剣の切れ味に驚く間もなく、沸騰した血液が体をめぐるような感覚に襲われ思わず片膝をつく。


「あら、1匹倒しただけでもうLVUPしたようね。さすが異世界人だわ。それはLVUPした時の感覚よ。早くそれに慣れなさい」


 LVUPの感覚はすぐに収まりほっと一息。ステータスタグでLVを確認しようとしたらすぐに止められた。


「LVの確認の前に、一角兎(ホーンラビット)の解体よ。毛皮、ツノが売れるわ。肉は安いし痛みも早いから夕食にでも焼いて食べましょう」


 解体と聞いて動きの止まった俺にリーシャさんは解体用のナイフを渡してきた。俺がやれってことか。


「解体が出来ないと話にならないわよ。まずはツノを切り落とし、それから毛皮を剥ぎなさい。皮をはいだら心臓のあたりを切り裂いてみて」


 リーシャさんが周りを警戒している中、まずはツノを切り落とす。これはうまく出来たと思う。続けて、ゆっくりとだが毛皮を剥いでいく。俺的にはうまく剥げたと思ったがリーシャさん的には落第点の様だ。

 最後に指示の通りに心臓のあたりを切り裂く。兎の心臓が何処にあるかわからなかったが、胸にあるだろうと当たりをつけて切ったが正解だったようだ。心臓の部分から血のように赤く金平糖の様なギザギザした拳大の鉱石が出てきた。


「あら、当たりね。それが魔石よ。稀に心臓が魔石化した魔物がいるのよ。その魔石を砕くとSPかスキルが手に入るから砕いてみなさい」


 俺は解体用ナイフの柄で魔石を叩き砕く。


「スキルが手に入ってくれ」


 思わず気合いと願望が声に出してしまった。魔石は綺麗に砕け砂の様に散った。


 ガッ


 魔石が砕けると同時に後頭部に強い衝撃を感じる。後ろに顔を向けると棒の様なものを握ったリーシャさんが仁王立ちをしていた。


「痛くしてごめんなさい。坊やには<状態異常無効化>があるから仕方ないの」


 リーシャさんは棒を振りかぶり俺の頭殴る。


 ガッ


 ガッ


 複数回殴られたのだろう、段々意識が遠退いていく。


 わけがわからない。俺死ぬのかな・・・・・・。


 俺は完全に意識を手放した。





――女冒険者リーシャ 魔獣の森にて


「本当にごめんなさいね」


 今私は、気を失い倒れている少年の身ぐるみをはがしている。酷いことをしているのはわかっているが、私とエルフィンも切羽詰まっているのだ。鎧の下に着ていた下着も異世界の物らしく上質な布を使っていたので頂いた。さすがにパンツも脱がすのは酷ね。


 念のためにここで殺してしまう方が確実だったが、それは気が引けてしまった。異世界人とはいえ、子供を騙して殺すことを躊躇してしまった。


 このまま魔物の森に放置するのだから殺すことと変わらないのだけどね。


「こんなことがお詫びになるとは思わないけど、いやこれは自己満足ね」


 私は少年に軽く口付けをするとそのまま少年を放置して魔獣の森を去った。


「さようなら」





読んでくれてありがとうございました。

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