2話
エタナフェイア
剣と魔法の世界。
この世界の人族は100年以上続く魔王率いる魔族、魔獣混成軍との戦争により疲弊し
希望というものを見出せないでいた。人族は最盛期には大陸の3/4を支配していたが戦争により支配地は後退
最少は領地の40%にまで勢力を落とされていた。
主神エタナを奉じる聖国エクスフレア。かの地の巫女でもある第一王女イクスフィアは自らの身を贄にし勇者召喚に成功。勇者の活躍により魔王は討伐。魔王軍は解体。人族はようやく平穏を得たのであった。
「勇者いらんやん」
関西弁でツッコミを入れてしまうくらい訳が分からない
てか王女の名前ややっこしいな、そこの女神さまと似たり寄ったりの名前じゃねぇか
女神さまにあやかってってやつなのかね?
「ううん、それあたし」
自らの顔に指差し何気なく言う。
「もともと人レベルに落とした分体を転生させていたのよ。勇者召喚の世論誘導と門を繋ぐカギとしてね。」
「なのにあの主神エタナ勝手に予定の100倍の勇者にするし、使えそうなのから役に立たないのまでここにある固有スキルほとんどつかっちゃうし、送り込みやがって分体のソウルだけでゲートが維持できるわけないじゃない。本体の力まで送り込んで無理やりの転生だったんだから!」
だんだん説明のうちにヒートアップしてきてる どうどう
「いいのよそれくらい!なにより無能なのは仮にも主神が狡猾な勇者にしてやられたってこと!」
「どういうことだ?それって。主神が人間に騙されたってこと?」
「500人も勇者がいるっていうことは当然戦闘向けの固有スキルだけじゃ足りないって思わない?」
「まあそうだよな、強大な力なんだから似たようなものはないだろうし、風と嵐なんて上位互換おんなじもんだもんなぁ」
「そう、だから当然探索、精査、解析、料理。その他後方支援型の色んな勇者がいたのよ」
「どう料理で勇者になるのかは想像もつかないがまあ言わんとすることはわかる」
「で、そのうちの解析の勇者が魔族の力の源を発見したの」
この世界にプラーナという魔力の源が存在する。人族魔法はそれに術式で指向性を持たせて発現させるというもの。対して魔族たちはそれを体内に取り込み意識的に発現させる。直接操作が可能という点において威力速さなどけた違いでありそれが魔族の優勢を担っていた。
そしてプラーナとは神界から流れ込む主神の神力であるということが分かった。
「じゃあなにか?結局魔族の力を削ぐには主神を殺すしかないってことかよ?」
「それはもちろんしたいけど現実的に勇者には無理でしょう?」
殺っちゃいたいんだ。結構上司に言いたいことありそうだな
「だから勇者たちはこう提案したの。神の力を完全に堰き止める結界を作ってほしいと」
「神の力ってなくてもいいのか?」
「一時的には問題はないわね。あなたたちだって全くプラーナのない世界で生きてきたでしょう?濃すぎるプラーナが確かに原因ではあったので主神も了承したわ」
美しい顔立ちに明らかに苛立ちを隠さず彼女は続ける。
勇者の立案では勇者がわに結界の解除権をもてば万が一にでも操られたときに困る。神の側だけ持てば助かるべき魔族を助けるタイミングを逃すかもしれない。だから結界の解除は勇者と神双方の同意という形にしてほしい。と言ってきたそうだ。そして結界の完成後は魔族の大虐殺、魔獣の乱獲。人族はわずか一年で生息域を9割にしてしまった。
「主神、あほですか?魔族嫌いなの?」
「アホは同意だけれど魔族嫌いなわけないでしょ。星に生きるものは等しく加護を受けるべきなのよ。ただちょっと通神担当の勇者が小悪魔系美少女だっただけで思考がまわってなかっただけじゃないの?」
嫌悪する口調で言い切った。よっぽど怒ってるな。まあ怒られて当然だけど
「でもそれよりまだ悪いことが起きてるのよ」
「いや、もう最悪だよ。これ以上なんてどうやって・・・」
「神の力を遮断した勇者たちが元からあった国達を支配し始めたの。」
言いきらないうちに女神は衝撃の事実をかぶせてくる
二の句が継げない、なるほど最悪だ
500人の勇者のうち、結界前に生き残っていた勇者483人
その中の66人が残りの穏健派勇者を殺害隷属。
現状生きている勇者は108人
「譲治、あなたにお願いしたいことは勇者だけど勇者じゃない。
エタナフェイアにいる勇者108人 すべての殺害です」
因みにまだ落下中。地上にたどり着きすらしていません