9話
夜が明けてカトレアがやってきた。
朝食にパンとスープを持ってきてくれたようだ。
「何やってるの?それ?」
確かに見たことないであろう瓢箪型に長い柄 弦が6本張ってある奇妙な物体。
アコースティックギターである
武器生成技能であっても自分の思うものが作れるなら楽器もできるかな?って感じでやってみた。
まあ妖怪に突き刺して倒す鬼もいることだし武器カテゴリーなんじゃないだろうか?
興味津々で覗いてきた。どうやら神殿では楽器があったらしい。といってもハープと銅鑼程度だったらしいがそれでも見習い程度では触ることもできない。楽器に触れられるのは高位の演奏神官のみらしく年に一度程度しか演奏を聴くことすらできないそうだ
ねだられたので一曲弾いてみる。まあ簡単なコードしかできないんだけどね。
弾こうとして一旦指が止まるが思い直し弾き始める。
歌詞もつけてみたがあとで聞くと一切意味が解らない言葉といわれた
スタンダードな英語歌詞なので言葉は自動翻訳されて意味が通じるかと思ったが
英語は英語のままらしい
あれだ、昔のミュージカル映画の日本語吹き替え版でも歌の部分は英語のままだったみたいなもんだね
高校時代には同級生たちと結構エレキとかはまってたけど、さすがにアンプとか出せないしまあこのていどだろう。
その後朝食をいただき武器屋に案内してもらう。
町に一軒しかない店らしい
武器と防具、装備品一式を賄っている店だった。
防具は盾と鎧が一式しかないが武器はそこそこの種類がある。
しかし客が冒険者というよりは町の狩人相手という感じで弓矢とナイフが一番品ぞろえが豊富だった。
ザック、一番安いナイフ二つと皮のグローブを買って店を出る。
異世界勇者の恩恵かいわゆるリュックサックタイプのザックであった。
まあ繊維は当然荒い麻っぽいのでそんなに耐久性はなさそうだけどね。
ナイフも戦闘用というよりは獣解体用という感じの刃渡りの短いタイプ
まあ武器というかどちらも生活用品レベルの品質だけど問題はない
その後カトレアを送っていく
「家を出るなよ、きょうは危ないんだからしっかり閉じこもってろ」
町長宅に送り届けてからしっかり言い含める。
何か言いたそうだったが、とりあえず頷いてくれた。
町長も危険なのが分かっているのか頷いている。
「これからどうなさるのかな?」
恩人を見る目半分、厄介者を見る目半分で聞いてくる
いや、申し訳ながっているのか?結局はかかわりにならないほうが町の為なんだから。
「一日だけ町の外で休憩させてもらうよ。あとは王都でも目指すかな」
少し大声で言う。もうこの町に来ることもないしかかわることもないから安心してくれ、としっかり告げてから町を出ていく。
王都側に町を出て少し離れた森の入り口で座って待つことにする。
時間的にはそろそろ死体を確認して帰ってくるころだろう。
夕べから索敵はずっと行ってきた。
どうやら最大10km半径くらいは確認できるようでなかなかに便利スキル。その上ただのレーダー画面だけだと思っていたらどうやらオートマッピングで通った場所は地図になってくれる模様。
便利スキルだねぇ
なので昨日からずっと尾行されていたことはわかっている。
8人パーティなら一人くらいは斥候職くらいいるだろう
そんなのがいるから家まで送ってついでに関係ない(から人質なんて考えるな)といってみたんだが伝わってるといいな。
そういえば縛って放置してきたヤツラって無事だったのかね?残る戦力はおそらく7人
伏兵がいる場合は定かではないけれどこれだけ人気のない場所だからその心配はしなくてもいいだろう。
まあこれくらいの乱戦で勝てないとしょうがないしな。
待つ間にもう一度ギターを出してみる。
弦に触れて指が止まる。
だめだヤメヤメ
今はこの曲しか思い出せない。別の曲思い出すまでギターはやめよう。
これから人を手にかけようとする人間が
「イマジン」を弾くなんて皮肉すぎる